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フランスのスポーツ担当大臣「性別移行をしても、スポーツから排除されることは一切ない」

 7日、東京五輪の閉会式が行われ、五輪の旗がフランスに手渡されましたが、次回開催地・フランスのスポーツ担当大臣であるロクサナ・マラシネアヌ氏が来日中、「性別移行をしても、スポーツから一切排除されることはない」と明言していたことが報じられました。

 ハフィントンポストの記事によると、ロクサナ・マラシネアヌ氏は5日、「プライドハウス東京レガシー」を訪れ、同国のLGBTQアスリートらとのオンライントークイベントに登壇しました。トーク中、今大会でトランスジェンダーであることを公表している選手がオリンピック史上初めて出場したことについて見解を示し、「性別移行を望んだ場合、それをしたからといってスポーツの世界から一切排除されることはない。子どもや競技のファン、トレーナーなどの人たちに、それが可能であるということを知ってもらいたいです」と語りました。マラシネアヌ氏は、IOCがトランスジェンダーの選手の出場の条件として定めているルール(「血清中テストステロンレベルが一定値以下」「宣言した性自認は4年間変更不可」など)の公平性については様々な議論があり、今後も注視していかなければならないとしながらも、それが決して当事者の「スポーツをやることの足枷になってはいけない」と、「誰もがスポーツに親しむことができるような機会を守らなくてはいけない」と語りました。
 トークイベントでは、フランスの現役アスリートらがカミングアウトし、自身のセクシャリティや経験について語るドキュメンタリー映画『Faut qu’on parle(私たちは話さなけばいけない)』の出演者や制作者らも登壇しました。この作品は今年6月に公開され、登場する6人のうちアストリッド・ギヤール選手(フェンシング)、セリーヌ・ドゥメルク選手(バスケットボール)、アマンディーヌ・ブシャール選手(柔道)の3人は今大会に出場しています。
 トークに参加したラグビーのジェレミー・クラミー・エドル選手は、ゲイであることをカミングアウト。不安もありましたが、多くの人に前向きに受け止められたそうで、「次のシーズンはもっと頑張りたい気持ちになっています」と語りました。同様にゲイであることをカムアウトしたフィギュアスケートのケビン・エイモズ選手も「開いた傷口を塞ぐことができたのではないかと思う。今まであまり口を開けなかったことを話すことで、気持ちが楽になり、自由になった気がします」と語りました。
 2024年のパリ大会は、東京大会よりも格段にLGBTQ支援を明確にした大会になりそうです。
 
 
 東京2020大会も本当は、日本でLGBTQの社会的地位向上や権利擁護が進展する大きな機会となることが期待されていました。一部では、そうした動きも実現しました。ソチ五輪の反省から五輪憲章に「性的指向による差別の禁止」が盛り込まれ、東京大会も「多様性と調和(Unity in Diversity)」を掲げ、パナソニックなどのスポンサー企業もLGBTQ支援策に舵を切るようになりました。プライドハウス東京が社会に与えた影響も決して小さくなかったと思います。
 しかし、本来、開催国として当然あるべきはずのLGBTQ差別禁止法は実現を見ず(与党議員は差別発言を撒き散らし、「差別は許されるものではない」との一文を入れる修正すら認めず)、開会式直前には差別事案が次々に明るみに出て(あの杉田水脈氏と一緒にひどい発言をしていた人物の起用も問題視され)、史上初のトランス女性の五輪出場者となったローレル・ハバード選手への誹謗中傷なども野放し状態でした(もし有観客だったら、会場で何が起こっていたか…)
 杉山文野さん來田享子さんが切々と世間の方々に訴え、声を上げてくれてはいたものの、組織委や都や国からは(都などは人権条例を制定したにもかかわらず)トランスジェンダーの選手を守ろうとする姿勢は見えませんでした。NZ五輪委がトランスジェンダー選手へのネット中傷を「一切容認しない」と表明し、フランスのスポーツ担当大臣がこのように毅然と擁護しているのとは大違いです。
 580名を超えた日本選手団のなかにカミングアウトした選手が一人もいなかったということも(インドやフィリピンにもカミングアウトした選手がいたのに)、日本のLGBTQを取り巻く現実の一端を物語っているのではないでしょうか。
 
 そうした開催国としての問題は様々ありつつ(いろいろ不十分なまま)、東京五輪は開催されました。
 フタを開けてみれば、史上最多となる180名を超えるLGBTQアスリートが参加し、6人が開会式で旗手をつとめ、約30名がメダルを獲得し、トム・デイリーをはじめ、世界のLGBTQに向けてメッセージを発した選手もたくさんいました。そのこと自体は(それだけでも)「よかったこと」として受け止めてよいはずです。五輪史上初のトランスジェンダーの審判となったキンバリー・ダニエルズさんは「日本のボランティアの方たちなども温かく迎えてくれてうれしかった」と語っていますが、温かく迎えてくれた日本のボランティアの方たちに感謝するとともに、きっとそのようにLGBTQフレンドリーに振る舞うことができたのは、プライドハウス東京をはじめ多くの人々のこれまでの活動のおかげですから、私たちはそのことを誇りに思ってよいのではないでしょうか。
 
 おそらく閉会式でリナ・サワヤマの「Chosen Family」が流れたのは、たまたまだと思いますが(UKで活躍している日本人アーティストとしてリナ・サワヤマをチョイスし、そのレパートリーの中で最も「客出し」にふさわしい曲を選んだ結果では…。もし音響担当の方が「Chosen Family」の意味を知ってて、LGBTQへの思いを持ってこれをかけてくださったのだとしたら、それはそれで感謝です)、MISIAさんが開会式で美しいレインボーカラーのドレスで登場してメッセージを送ってくれたことには(長年のMISIAさんのサポートの歴史を思えば)感謝せざるをえません。
 例えばシドニー五輪のようにたくさんのドラァグクイーンが登場し、プライドパレードが再現され、といった演出は今の日本では望むべくもなかったのでしょうが、いつかきっと…と夢を持ち続け、未来につなぐことは大切です。もしかしたら、この開会式・閉会式を見ていた若い方の中から、未来のヒーローが誕生するかもしれません。
 
 
 「歴史のif」は禁物、と言いますが、もし、コロナ禍がなかったら…と考えてみたくなります。東京2020大会は昨年開催されていたでしょうし、新宿の丸井に「プライドハウス東京」が設立され、世界中から来られたLGBTQのアスリートが連日訪れ、イベントなどもたくさん行なわれたことでしょう。私たちもそこでトム・デイリーに会えるチャンスがあったかもしれないのに…などと夢見たりします(残念ながらそうはなりませんでしたが…)
 しかし現実は、コロナ禍のおかげで、また、その対策のマズさのおかげで、夢ではなく、悪夢の様相を呈しています。そもそも緊急事態宣言下、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるなか、国民の多くが開催に反対していたにもかかわらず、強行開催され、感染者数が激増、医療も逼迫し、治療もろくに受けられない、極めて深刻な状況になっています(そのことの問題点は、しっかり見極めていきましょう。秋には選挙もあります)。本当のところ、一体どれくらい市中感染が広がっているのか(ラムダ株流入も隠蔽されていたくらいですから)わかりません…不安しかありません…。
 皆様におかれましては、くれぐれも気をつけて、人との接触の機会をできるだけ減らし、命を守る行動をとっていただきたいと思います。
(基本的にLGBTQ関連のことしか書かないサイトではありますが、わざわざこのように申し上げるのは、それだけ深刻な、命に関わる状況だからです。誰も亡くなったりしないことを祈ります…)

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