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『マトリックス』新章の予告編が公開され、新たに何人ものLGBTQの俳優が加わることが明らかに

2021年09月10日

 全世界で空前の社会現象を巻き起こした伝説のアクション超大作『マトリックス』シリーズの新章『マトリックス レザレクションズ』の予告編が9月9日22:00に公開され、話題を呼んでいますが、主人公ネオ役のキアヌ・リーブスをはじめ前作から引き続き出演する俳優陣に加え、新たに、ジョナサン・グロフ、ニール・パトリック・ハリスといったLGBTQの俳優が出演することがわかりました。

 1999年に公開された『マトリックス』は、キアヌ・リーブス演じるネオが後ろにのけぞりながら銃弾をよけるシーン(バレットタイムと呼ばれる技法)や、カンフーとVFXを融合させることで実現した華やかでスピード感あふれる格闘シーン、緑色の文字が画面の上から下へ流れる「マトリックス・コード」など、数々の映像革命によって世界を熱狂させた作品でした。実は私たちが現実だと思っているこの世界は社会システム(権力)が現実だと思わせている「仮想世界」なのかもしれないと思わせるような圧倒的なリアリティによって「認知革命」をもたらした哲学的な作品でもあります。
 『マトリックス』は1999年の1作目、2003年の『マトリックス リローデッド』、同年の『マトリックス レボリューションズ』によって、完結したかに思われましたが、2019年に新作『マトリックス4』の製作が発表され、世界を驚かせました。
 そしてこの9月9日、全世界が注目するなか、約3分に及ぶ新作『マトリックス レザレクションズ』の予告編が公開されました。

 冒頭、セラピストの男(ニール・パトリック・ハリス)に向かって「夢とは思えない夢を見た」と話すネオ(キアヌ・リーブス)。マトリックス・コードで形作られた街の中を歩いていたり、見知らぬ敵と戦っていたり、得体の知れない機械に体を繋がれていたりするカットがフラッシュバックし、「僕は狂ってるのか?」とネオが問うと、セラピストは「ここではよくある」と答えます。その後、ネオがアヒルちゃんを頭に乗せてバスタブに浸かりながら考え事をしているシーン、トリニティ(キャリー・アン・モス)に会ったのに、まるで二人が初対面であるかのように振る舞うシーン、青いカプセル、開く瞳孔、「不思議の国のアリス」の本、鏡に映る老人など、謎が散りばめられていきます。後半には、モーフィアスから赤と青のカプセルの選択を迫られるシーンや、白ウサギのタトゥの女性に付いていくシーンなど、1作目を彷彿とさせるシーンも。そして「道場」でのカンフーから銃撃戦、『マトリックス』ならではの銃弾をよけるシーン、ヘリの爆破といった怒涛のアクション・シーンが興奮を誘い、最後に宿敵エージェント・スミス(ジョナサン・グロフ)がネオに向かって「長い年月の果てに、始まりに戻ったのさ。マトリックスにね」と告げて終わります。謎が謎を呼び、いったいどんなストーリーなんだろう?と期待させる予告編でした。

 この予告編の冒頭と最後に登場する重要なキャラクターがニール・パトリック・ハリスジョナサン・グロフというオープンリー・ゲイの俳優だったことは、注目に値します。『Out』誌は、「ニール・パトリック・ハリスとジョナサン・グロフが『マトリックス』ユニバースに新たに加わった!」「この刺激的な予告編は、僕らのお気に入りのゲイの俳優を2人も自慢げに登場させた」とコメントしています。なお、同誌によると、今回の新作には、『センス8』に出演していた多くの俳優たちも出演するそうで、そのなかにはブライアン・J・スミスや、オープンリー・バイセクシュアルのエレンディラ・イバラも含まれているそうです(『センス8』の俳優たちがどんなふうに登場するのか、楽しみですね)
 
 
 昨年8月、『マトリックス』シリーズの共同監督であるリリー・ウォシャウスキーは、もともと『マトリックス』にはトランスジェンダーのアレゴリー(寓意)が込められていたことを明らかにしています。
「『マトリックス』シリーズが、トランスの人たちにとって重要な意味を持ち、そしてトランスの人たちが『この映画シリーズは私を救ってくれた』と私に言ってくれるのをとてもうれしく思います」
「変化、特にSFの世界での変化は、想像力であり、世界を作り、一見不可能なことを可能にします。だからこそ、この映画シリーズは、トランスジェンダーの人たちにとって大きな意味があるんだと思います」
「『マトリックス』は、変わりたいという願いを描いた映画です。しかしそれは、秘められた視点から語られています。だから私たちはスウィッチという、現実世界では男性でマトリックスでは女性のキャラクターを作ったのです」

 そのリリー・ウォシャウスキーは、『マトリックス』シリーズだけでなく、映画『クラウド アトラス』なども含め、これまでずっと姉のラナと共同で脚本や演出に携わってきましたが(ウォシャウスキー姉妹名義の作品でしたが)、『センス8』シーズン2で降板し、今回の『マトリックス レザレクションズ』も不参加で、姉のラナ・ウォシャウスキーが単独で製作しています。リリーはその理由について、米テレビ批評家協会のイベントで「トランジション(性別移行)や両親の死といった人生の激動を乗り越えた後に、また昔の作品に戻って前の道を歩み直すというのは感情的に満たされないことで、(自分とは)真逆の考えだったんです。昔の靴を履いて生きるようなことはしたくなかったんです」と語っています。
 なお、リリーウォシャウスキーは2019年からTVドラマ『Work in Progress』を手がけていて、現在シーズン2が放送中です。


 ともあれ、『マトリックス レザレクションズ』には、新たにLGBTQの俳優がたくさん出演し、活躍が期待されるということ、内容はまだ謎に包まれているものの、きっとトランスジェンダーのアレゴリーは今作でも貫かれているだろうということ(なにしろ監督がトランス女性ですから)、そうした意味で、私たちにとってこの作品は、伝説のシリーズの18年ぶりの新作ということにとどまらない、多様な喜びをもたらしてくれるものになるだろうと期待されます。公開は12月です。楽しみに待ちましょう。

 

参考記事:
LGBTQ+ Stars Shine In Thrilling 'Matrix 4' Trailer(Out)
https://www.out.com/film/2021/9/09/lgbtq-stars-shine-thrilling-matrix-4-trailer
『マトリックス4』リリー・ウォシャウスキーが監督復帰しなかった理由 ─ 「アーティストとしての自分」とは何か(THE RIVER)
https://theriver.jp/matrix4-lili-not-return-why/

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