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「ただ差別発言が撒き散らされて」LGBT新法が成立しなかったことを受けて、法制定を求めて活動してきた方たちが合同記者会見を行ないました

2021年06月18日

 6月18日、与党議員による差別発言が放置されたままLGBT新法も提出されることなく今国会が閉会したことを受けて、新法成立に向けて尽力した個人・団体の方々が合同で記者会見を行ない、あらためて「命を守るための」法律の一刻も早い成立を求め続けるという決意表明がなされました。
 

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗日本代表は、「多様性と調和を掲げながら、実際は多様性を認めない頑強な基盤があるということが世界に示された」と述べました。
「世界では、LGBTQの法律といえば、差別禁止の法律です。80ヵ国ですでに導入されています。先日のG7共同声明でもLGBTQ差別をなくすことが謳われていました。今回の新法は、差別禁止法でさえない、極めて薄い、世界的に見ても稀な法律ですが、それですら通せなかったということを、国際社会は厳しく見ることでしょう。一刻も早く、差別を禁止する法を制定することが望まれています」
 
 プライドハウス東京代表の松中権さんは、「危機感を持っています」と語りました。
「約1ヶ月後に大会が開催されますが、ニュージーランドのトランス女性の選手が参加することや、アメリカでもトランスジェンダーの選手が補欠で参加することが決まっているなかで、すでに(トランスジェンダーの競技参加はばかげている、などの)暴力的な発言がなされていて差別を禁じる法律の後ろ盾がないことで、当事者の選手が安心して競技できるのか、危機感を覚えます。プライドハウス東京としても、事実に基づいた情報発信をしていく所存です」

 東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんは、「残念でなりません。気持ちが削がれます」と語りました。
「少数の権利を多数が決めることの懸念というのは以前からありましたが、これだけ多数が支持しているにもかかわらず、一部の人たちの反対で法案が提出すらされなかったことには、根深い差別を感じます」
「当事者は、この国のどこに希望を持って生きていけばいいのか。言葉も出ません」
「実は反対している議員に会って話をする機会がありました。当事者に関する事実をまるで把握していなかったどころか、当事者と話すのが初めてでした。危機感を覚えました。自分が学ぼうとしないことを、まだ理解が浸透していないと言って、国民のせいにしないでいただきたい」
「今回、これだけ差別があることが浮き彫りになりました」
「これからも声を上げていきます」
 
 LGBT差別発言の撤回と謝罪を求める9万4千超の署名の呼びかけ人だった松岡宗嗣さんは、「法案の提出もされず、ヘイトスピーチを撒き散らして閉会したことに憤りを覚えます」と語りました。
「『多様性と調和』が聞いて呆れます。見せかけでしかない。『差別は許されない』という言葉すら認めないのは、差別には見て見ぬ振りをするということでしょう」
「この国で今も悩んでいる、苦しんでいる当事者が、どうやって希望を持っていけばいいのか…絶望的な状況です。しかし、打ちひしがれている暇はありません」
「今回、どういう人たちが平等にしたくないのか、差別を温存したいのかということがわかりました。今後行なわれる選挙では、必ず、投票に行こうと呼びかけます。沈黙する間に尊い命が失われていきます。一人一人の行動が問われています」

 トランスジェンダー活動家の畑野とまとさんは、「この法律は通らなくてよかった」と語ります。
「トランスジェンダーが置かれている状況はとても厳しいです。Twitterにあふれている数々のヘイトの言葉に、若い人たちは傷ついています。自死につながっています。LGBTQへのアンケート調査でも、自殺を考える率が最も高いのはトランスジェンダーです。人の命に関わるのです。きちんと差別禁止法を通してください」
「この法をめぐっては、野党が差別解消法案を提出した一方、自民党は最初から差別禁止という文言を嫌がっていました。先日のギリギリの折衝で、『差別は許されない』という文言を渋々入れたものの、それすら拒絶。このような政党が作った法律がまともに動くわけがありません。私はこの法律が通らなくて安心しています」
「G7共同声明ではジェンダー平等という言葉がたくさん出てきます。G7の日本以外の6ヵ国は同性婚(※イタリアは準同性婚)もでき、性別変更における手術要件も撤廃されています。きちんとLGBTQの人権を考えることが世界の潮流です。
翻って、差別は許されないというたった一言を入れることを否定する政権。どうして許されるのでしょうか。私は全てのマイノリティへの差別を禁止してくれる政党を推すことしかないと考えます」

 性的マイノリティのろう者として声を上げてきた野村恒平さんは、「私はろう者の声を、命を預かって、ここにまいりました」と手話で語りました。 
「私たちは自民党本部前で抗議を行ないました。果たしてその声は届いたんでしょうか。とても遺憾です」
「当事者の方が安心、安全にいられることが大事です。私たちは命を守る法律の制定を願っています」
 
 レインボーさいたまの会の鈴木翔子共同代表は、少し涙ぐみながら「悲しいです」語りました。
「自民党埼玉県連に対して、要望書を提出しましたが、幹事長などからもしっかり伝えると言っていただき、内部からも声が上がったはずなのですが、それでも国会に提出すらされませんでした」
「すでに共に暮らしている全ての人にかかわる法律です。LGBTQが早く、本当はあるはずの、平等の権利を得られることを願います」

 「結婚の自由をすべての人に」の寺原真紀子共同代表は、以下のように語りました。
「1285名の弁護士・法学者が新法制定を求める緊急声明に賛同しました。
 20年以上弁護士をやってきて、SOGIでの差別、会社を解雇されたり、学校でいじめに遭って不登校になるなどの直接的な被害を目の当たりにしてきて、偏見の根深さを痛感しています。今この瞬間も、必死で闘っている当事者がいます。彼らは、特別扱いではなく、ただ安心して学校に行き、仕事できる環境を求めているだけです。必要なのは、差別が許されないという法律です」
「憲法43条では、国会議員は国民の代表であると謳われています。一部の人のためではなく、全ての人にとっての法制度を考える立場にあります。速やかに行動していただくことを求めます」

 LGBT法連合会の神谷悠一さんは、「今日から歴史が変わるのです」と語りました。
「差別解消法を求めてLGBT法連合会が発足した6年前、小さな公民館で会見を行ないましたが、6年後に、まさかこんなに多くの方たちと行動を共にできるとは想像していませんでした。多くの団体、企業や経済団体、弁護士、IOC、大使館の方たちも賛同してくれました。壁は低くはないのかもしれませんが、たとえ今は難しくても、きっと実現する、法律ができると確信します。私たちは取組みを進めるし、そうする責任があります」

 
 なお、LGBT法連合会は本日、今回の件を総括した「第204回 通常国会閉会により「LGBT新法」が成立しなかったことを受けて」という声明を発表しました。そちらも併せて、ご一読ください。 


 それから、時事通信がこの件に関する上川あや世田谷区議へのインタビューを掲載していました。
「絶望はしていません。自分たちも等しく価値のある存在だと確信を持っていますから。無理解や偏見が明らかになったからこそ、弁護士や法学者による法案提出を求める署名に1300筆近くが集まり、当事者の多くも自分たちがまだまだ誤解を受け、法的にも軽視された存在であることが実感できた。これまでも、国政では取り残されてきたけれど、これ以上、理不尽な扱いに、ただ黙っていてはいけないという政治的意識が広がった」
「地方自治体の動きも、社会の認識も先行して変わっているのに、国政がそれに追い付いていないというのが、性的マイノリティを取り巻く現況です。ただ、これだけ社会的に理解が広がり、コンセンサスが高まると、自民党として与野党合意案の改変を試みるにしても反発は必至で、もう何もしないとは言えない。今後、立法という形を何らかの方法で模索することを迫られ続けるのではないでしょうか」

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