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フランスでゲイ・バイセクシュアル男性の献血に関する差別が全面的に撤廃されることになりました

2022年01月20日

 フランスで3月16日からゲイ・バイセクシュアル男性の献血が全面解禁されることが発表されました。これまではゲイ・バイセクシュアル男性に対して「過去4ヵ月間セックスしていないこと」という制限が設けられていたのが撤廃され、問診の際に最近の性行動と薬物使用、過去4ヵ月以内にHIV治療を行なっているかどうかを申告するという異性愛者と全く同じ扱いになります。
 
 
 フランスでは1983年からゲイの輸血を禁止しており、この禁止措置は2016年に解かれたものの、過去1年間に性交渉をもっていないことという条件が付きました。この期間は2019年に過去4ヵ月に短縮されました。そして今年3月16日からは、この4ヵ月の待機期間もなくなります。
 オリヴィエ・ヴェラン連帯・保健大臣は、Twitterで「3月16日から、全てのフランス人は、性的指向にかかわらず献血ができるようになります!」「私たちはもはや公正とは言えなかった不平等を終わらせようとしています」とアナウンスしました。
 
 『ル・モンド』紙によると、全面解禁とした理由は「(ゲイのHIV感染率が)格段に減少し、輸血のリスクもめっきり下がったため」だそうです。1990年のフランスでは献血31万件につき1件がHIV陽性でしたが、現在ではその40分の1に減っているそうです。

 『20minutes』紙によれば、スペイン、イタリア、イスラエル、英国もゲイ・バイセクシュアル男性の献血を解禁する方向に動いているそうです。
 
 フランスのLGBTQ団体「Inter-LGBT」のガティポン氏は、「この変更は実際のHIV感染リスクに沿うものであり、性的マイノリティへの差別是正につながる」と評価しています。
 
 世界の多くの国は、HIV感染予防を理由にゲイ・バイセクシャル男性に献血を禁じてきましたが、ここ数年解禁に向かう傾向がみられます。(PrEPの普及などによって)HIV感染リスクが大幅に減少したことが第一の理由ですが、差別を是正しようとする運動の成果でもあります。さらに、パンデミックが引き起こした血液不足もこの動きを後押ししています。
 米国では、過去1年間に性交渉をもっていないことという規定が設けられていましたが、ゲイコミュニティはこれを差別的だとして撤回を求めてきました。この禁止措置に最も怒りの声が上がったのは、2016年のフロリダ州オーランドでのゲイクラブ銃撃事件の時です。愛するパートナーや友人、ゲイの仲間たちが撃たれて緊急に輸血を必要としているのに、自分では献血できない人がほとんどだったからです。そして2020年春、パンデミックで大勢が亡くなり、治療薬もなく、血漿投与による治療法に望みをかけ、政府も回復した患者の献体の確保に乗り出していたなかで再び、ゲイ差別的な献血ガイドラインの撤回を求める声が大きくなり、待機期間が3ヵ月に短縮されました(詳細はこちら
 英国はさらに進んで、献血の禁止基準を見直し、性別や性的指向ではなく個人の性行動に基づいてリスクを評価する新たなガイドラインを策定しました。新たなガイドラインでは、本人の性別や相手の性別、それぞれの性的指向に関わらず、3ヵ月超にわたって1人の性的パートナーだけと関係を持っている場合は献血が認められるようになりました(詳細はこちら

 
 ちなみに日本では、過去6ヵ月間に「不特定の異性または新たな異性との性的接触があった」または「男性どうしの性的接触があった」方が「献血をご遠慮いただく場合」に該当するとされています(詳細はこちら)。たとえずっと特定のパートナーとしかセックスをしていないとしても、男性どうしであるというだけで、献血が認められないのです。 

  

参考記事:
男性同性愛者の献血、仏で全面解禁へ 性交歴の条件を見直し(Newsphere)
https://newsphere.jp/national/20220117-2/
France ends “absurd” ban on blood donations from gay and bisexual men(GAY TIMES)
https://www.gaytimes.co.uk/life/france-ends-absurd-ban-on-blood-donations-from-gay-and-bisexual-men/

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