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【婚姻平等訴訟】大阪地裁の判決を不服として「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟の原告が控訴しました

2022年07月01日

 6月20日の「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟の大阪地裁判決。京都府や香川県などに住む男性どうしと女性どうしの3組のカップルが、民法や戸籍法の規定が同性どうしの結婚を認めていないのは憲法に違反するとして訴えを起こし、昨年の札幌地裁に続く判決となったものですが、大阪地裁は「婚姻の自由は異性間のみに及ぶと解され、同性カップルにどのような法的保護を与えるかは議論の途上」だとして訴えを退けました。この一審判決を不服として、3組の原告は大阪高等裁判所に控訴しました。

 6月30日、原告側は会見を行ない、判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したことを明らかにしました。
 問題としているのは、「差別が緩和されつつある」という判決内容です。大阪地裁は「同性愛者でも望む相手と親密な関係を築くことは制限されておらず、法的な不利益についても、遺言などである程度解消される」と述べました。さらに、「自治体が同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度が広がり、国民の理解も進んでいて、差別は緩和されつつある」として、法の下の平等には違反しないと判断しました。
 京都市の坂田テレサさんは、「判決文に(同性カップルへの)社会の理解が進んでいるからいいんじゃないと書かれていて。確かに理解は進んでいるとは思います。ただ、理解が進んでいるからと行って平等に扱わないのはオッケーではない。今まで傷つけられたことは消えないです」と語りました。

 原告団はさらに、大阪地裁が「差別の解消は民主的な過程で実現されるべき」と述べたことについて「司法の役割を放棄した」と批判しました。
 京都市の坂田麻智さんは、「国が動いてくれないから裁判所に助けを求めたのにショックでした。裁判所は人権の最後の砦だという力をちゃんと見せてほしい。控訴に期待したい」と語りました。
 香川県三豊市の川田有希さんは、「全くもって人権をないがしろにして、なおかつそれを立法府、国会に全て委ねて私たちは全部知りませんと突き放されたような気がして憤りを感じています。国際的にも遅れていると思うので、高裁でいい判決を出してもらうのが今の希望です」と語りました。
 原告団の大畑泰次郎弁護士は、「政治部門に預けるのはいいが、政治家が受け止めて、国会で議論しましょうとなってますか? この点は控訴審では大きなポイントになるかと思います」

 香川県三豊市の田中昭全(あきよし)さんは、「地裁判決に当事者以外の人も怒ってくれた。これまで以上にたくさんの応援をもらい、控訴審を進めていきたい」と語りました。

 なお、TRPなど数々のLGBTQイベントに協力してくださっているエッセイストの小島慶子さんは『AERA』の「婚姻制度は人口を増やすため? 大阪地裁判決を考える」という記事で、「同性間で婚姻ができないという差別があるからこそ、同性カップルの不利益に配慮した制度としてパートナーシップ制が広がっているのに、現状追認でそもそもの差別を放置するような見解です」「異性間の婚姻の目的についても、札幌地裁では男女が共同生活を送ることにあり、必ずしも子を残すことのみが目的ではないとしましたが、大阪地裁では男女が子を産み育てるための制度としています。子どもを持たない夫婦や、熟年で結婚する夫婦もいます。婚姻を個人が大切な人と安心して生きるための制度と見るのか、国家の人口を増やすための制度と見るのか、根本的な眼差しの違いが露見したと言えるでしょう」と述べ、大阪地裁判決を批判しています。

 ジャーナリストの北丸雄二さんは、論座の記事「同性婚を否定した大阪地裁判決の無限ループ論法」で、「制度や手当てがないから裁判になっているのではなかったか。この無限ループ論法には何の意図があるのだろう?」と批判しています。
「多くの地方公共団体において登録パートナーシップ制度を創設する動きが広がっており、国民の理解も進んでいるなど上記の差異は一定の範囲では緩和されつつある」し、同性カップルの不利益も「相当程度解消ないし軽減されている」という、「国会の合理的な立法裁量の範囲を超えたものであるとは直ちにはいい難い」としたものの根拠は、司法や立法を構成する多数派が同性カップルなどの性的少数者たちに進んで恵み下したものではない。
 そうした現行制度上での差別や不利益の「解消・軽減」は、まさに「同性婚が不在である」がゆえに性的少数者たちが自ら名乗りを上げて社会と行政に訴え、かろうじて努力し勝ち取った功績である。それをあたかも多数者側=日本社会が斟酌考慮して自ら改善してきたかのように言いなすだけでなく、裁判における判決文の形で現状の同性婚不要論の論拠にするのは、烏滸(おこ)がましい詭弁であるばかりか、略奪ですらある。この論理ならば、性的少数者たちがこれまで社会に対してむしろ何の訴えも努力もせず、差別や不利益を甘受していた方が、司法が進んで介入すべき「法の下での不平等」を認定しやすいことになるだろう。
 端から同性婚の存在を否定し、それでも何度も優しげな眼差しを示しつつも、結局はそれを論拠乏しく捩じ伏せて予め在りきの当初の結論に引き戻す。その牽強付会で、日本の多数派社会は一体何を守ろうとしているのだろう」
「「法の下での平等」を説く日本国憲法14条は、「同性婚否定はそれに違反してはいない」とした判事たちの不作為によって結果的に不平等がさらに助長され、条文自体が蹂躙されることになる」


 「結婚の自由をすべての人に」訴訟は北海道、東京、名古屋、関西、九州の5ヵ所で一斉に行なわれています。次は、11月30日に東京地裁で判決が言い渡されることが決まっています。
 

 なお、6月30日には東京第二次訴訟の口頭弁論が行なわれ、元TRP共同代表の山縣真矢さんが55年の人生を振り返りながら、なぜ結婚の平等が重要なのかを訴えました。
 90年代後半、今よりも同性愛者への理解がない時代にパートナーの方と出会い、二人で暮らすアパートの近くに安い部屋を借りて、そこに住民票を置く「カモフラージュ」生活をしていたそうです。この生活は、住んでいる自治体でパートナーシップ制度が導入され、住民票をパートナーの住居に移した2018年まで続いたそうです。「もし同性間でも婚姻が認められていれば、お金もかかるカモフラージュをする必要もなかったでしょうし、二人で共同ローンを組んで、マンションを購入する選択肢もあったかもしれません」
 2008年、お父様から電話がかかってきて、インターネットで名前を検索したら同性愛の団体やイベントが出てきた、「これはどういうことなのか?」と尋ねられました。そこで初めて自身の性的指向やLGBTQの活動についてお父様に説明しました。3週間後、「今日までの15年、両親にも言えず、言わず、孤独で、せつない思いをしながら生きて来たことを思うと、言葉がありません。よくぞ苦悩を乗り越えて生きていてくれた」という手紙が送られてきたそうです。
 山縣さんは現在55歳で、パートナーの方は1歳年上です。老いや病が迫っているなか、「婚姻できない同性カップルは、よりシビアで不安定な状況に置かれています」と法廷で訴えました。「パートナーが法律上同性であるということだけで結婚制度から排除され、差別を受けたまま、二級市民として生涯を終えたくはありません」「差別が温存された状態のまま、次の世代にバトンを渡すようなこともしたくありません。 残り何年、私の寿命が残っているのかは知る由もないですが、一日も早く、この不平等な状態から、私たちを解放してください」

 この日の口頭弁論では、原告側の弁護士が、「結婚の目的は、子を産み育てながら共同生活を送る一人の男性と一人の女性の関係に対して、特に法的保護を与えることだから」という国側の主張に対して「国は生殖だけが結婚の目的だと考えているのか、それともそれ以外の目的も含まれているのか」と確認する場面があったそうです。国側は「書面通りです」とのみ回答、弁護団が再度確認すると、裁判長が「書面上、そう主張している」と答えました。
 寺原真希子弁護士は、このやりとりで、「国が結婚は子どもを産み育てる人だけを保護する制度だと主張していることが明確になった」と、口頭弁論後の記者団の取材で述べました。これは裏を返せば「異性カップルであっても、子どもを産み育てないのであれば法的保護に値しない」と言っていることになり、「訴訟が、単に法律上の同性カップルだけに止まらないものになる」と指摘しています。「(結婚の平等訴訟は)法律上同性どうしの婚姻を、異性カップルと平等にしてくれという訴訟です。しかし、ここまではっきりと被告がこのような主張をしているとなると、同性カップルだけにとどまらず、日本における婚姻制度はどういうものなのかが問われる訴訟になります」。寺原弁護士は「結婚は子どもを産み育てる人だけを保護する制度」という国の主張は、結婚について定めた法律の要件や社会的認識とも合致しておらず、改めてこの主張に反論していくと述べました。
大阪地裁の判決が、「結婚は子どもを産み育てる人だけを保護する制度だ」という国側の主張を容認するものだったことは、すでにお伝えした通りです)
 寺原弁護士は「裁判所には、婚姻の平等の問題は、結婚だけではなく、生死に関わる話だということを認識してほしい」「結婚という選択肢がないということで、日々生き悩んでいる人がいます。(裁判所には)扱っている問題の大きさ、そして影響があるということを認識して、判決を書いてほしいです」と語りました。
 
  
参考記事:
同性婚訴訟 “憲法に違反しない”1審判決は不服 原告が控訴(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20220630/8030013308.html
同性婚訴訟 原告が控訴(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/nnn/111y5shpfw65df2vmc9
同性婚訴訟で原告が控訴 「人権のとりでの力を見せてほしい」 同性婚を認めないのは合憲とした地裁判決で(関西テレビ)
https://www.ktv.jp/news/articles/2aaeed74_9f5b_4390_8021_41ddfbe49693.html
同性婚訴訟で原告カップル控訴 大阪地裁判決は「人権をないがしろにしている」 高裁の憲法判断に注目(ABC)
https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_15519.html
「突き放された気がして憤り」“同性婚を認めないのは合憲”判決にカップルらが控訴(MBS)
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20220630/GE00044542.shtml
同性婚訴訟 原告側が控訴 大阪(ytv)
https://www.ytv.co.jp/press/kansai/154613.html
同性婚大阪訴訟で原告控訴 認めぬ規定「合憲」に不服(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF3080P0Q2A630C2000000/
同性婚訴訟、原告側が控訴 大阪(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022063000732
同性どうしの結婚認めて… 原告側が控訴 「合憲」判決に不服(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ6Z6GQPQ6ZPTIL00V.html
小島慶子「婚姻制度は人口を増やすため? 大阪地裁判決を考える」(AERA)
https://dot.asahi.com/aera/2022062800053.html

「二級市民として生涯を終えたくはない」結婚の平等裁判、原告が不平等からの解放を訴える【東京2次5回】(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-tokyo-2-5_jp_62bbe081e4b0d26a9b15fa2d

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