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ロンドンで50周年を祝うプライドパレードが開催され、100万人超が参加。AVA MAXがヘッドライナーをつとめました

2022年07月03日

 7月2日(土)、英ロンドンで50周年を祝うプライドパレードが盛大に開催され、各地から集まった100万人を超える人々がレインボーフラッグやプラカードを掲げてロンドン市内を行進しました。(ロンドンでは毎年、ストーンウォール記念日の翌週、7月の第1土曜にパレードが開催されます)


 「プライド・イン・ロンドン」は1972年に同性愛者の権利を求める人たちによるプロテスト(抗議)として始まりました。映画『パレードへようこそ』でも描かれていたように、1984年にはLGSM(Lesbian & Gay Support the Miners)という団体がサッチャー政権下で苦境にあえいでいた炭鉱労働者たちと連帯し、一緒にパレードを歩きました(ほどなくエイズ禍が英国のゲイコミュニティに暗い影を落としたのは、ドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』に描かれた通りです)
 2012年、40周年のロンドン・プライドでは、ボリス・ジョンソン市長が「我々の街のお祝いを支援できてうれしい。ロンドンは『私が私でいられる街』だと評判になっていることを誇りに思う」と語り、オープンリーゲイのニック・ハーバート警察庁長官もパレードに参加しました。ロンドン五輪公式のプライド・ピンバッジも会場で販売されました。
 2020年、2021年はコロナ禍で思うように開催できませんでしたが(2020年は有名なピーター・タッチェルやストーンウォールの時代からのベテラン活動家たちが、中止となったプライドパレードのコースに沿ってソーシャルディスタンスを保ちながらパレードを行なったそうです)、今年、3年ぶりに開催されました。しかも、50周年記念ということで、各地から100万人を超える人々が集まり、盛り上がりを見せました。
 
 沿道の観客の一人は、「私にとってプライドとは、本当の自分を隠さず、『これが自分だ』と言えることだ」と語りました。
 46年前から参加していたというジェイミソンさんは、「当時の状況から見て今の私たちがどうなったか、その進歩の姿が見られたのが最高です」と語りました。
 また、パレードを歩いたサディク・カーン市長は、「過去50年の進歩を祝うとともに、権利運動も続けています」と述べました。
 BBCのニュースキャスターは、1972年の最初の行進にゆかりのある場所も通りました、この国で最もカラフルなお祭りの一つですが、プライドの行進の根幹が、今も抗議行動であることに変わりはありません」と紹介していました。
英国王立造幣局がロンドンプライド50周年を記念して「レインボー50ペンス硬貨」を発行とのニュースでもお伝えしたように、ロンドン・プライドの精神は「Protest(抗議)」「Visibility(可視性)」「Unity(団結)」「Equality(平等)」という4つの言葉で表されます)

 日本で同性婚できないため、英国に移住したインフルエンサーのKanさんは、「ハートストッパーのキャストたちがロンドンプライドに駆けつけて、パレードを歩くだけじゃなくて、LGBTQ+嫌悪を煽る団体に中指を立てて踊って対抗してるのほんといけてる。LGBTQ+をエンタメとして消費するだけして、権利のことにはだんまりみたいなのとは大違い」とTwitterに投稿しています(『HEARTSTOPPER ハートストッパー』のキャストのみなさん、素晴らしいですね!)


 トラファルガー広場のステージでは、みんな大好きAVA MAXをはじめ、エミリー・サンデー、ネッタ、サマンサ・マンバ、カテリーナ・グレアムらたくさんのアーティストが出演しました。鮮やかな赤い髪のAVA MAXは、オレンジ、黄色、緑、青、紫のTシャツを着たダンサーと一緒にレインボーカラーを表現、プライドの参加者を大盛り上がりさせていました。

 
 なお、ロンドンに英国初のLGBTQ+歴史博物館がオープンとの記事でお伝えしていたナショナル・ミュージアム「Queer Britain」のレポートがTOKYO ART BEATに掲載されていました。オープニングを飾った展示「Welcome to Queer Britain」では、英国のLGBTQコミュニティの歴史を振り返ることができるような写真や、「Chosen Family」という多様な家族の姿を撮影した写真、トランス女性とトランス男性をペアにした写真などが展示されていたそうです。(『ガーディアン』紙のオーウェン・ジョーンズによる「展覧会全体を通じてクィアのセクシュアリティを表現したコンテンツが少なすぎる」との批判の声などもきちんと紹介されていて、良質で信頼できる記事だと思いました)
 「Queer Britain」だけでなく、ロンドンにはもう1つ、クィアのアートスペースがオープンしたそうです。安全な祝祭空間を目指すコミュニティスペース「Queercircle」は、アーティスト、キュレーター、ライター、コミュニティオーガナイザーたちと様々なワークショップやイベントを開催し、LGBTQ+コミュニティのニーズに応えるプログラムを開発してきたグループが、50周年のパレードの日にオープンさせたギャラリースペースだそう。初のプライドパレードに参加したドラァグクイーンたちを称える「The Queen's Jubilee」というアーカイブ写真展なども行なわれているそうです。素敵ですね。
 記事は「LGBTQ+を専門とするアートスペースが2つもオープンしたことは、世界でも例を見ない先進的な事例である。コロナ禍にありながらも国立美術館や地域密着型コミュニティスペースを新規開設することは、クィアへのサポートを一時的なものに終わらせず、長期的に継続していかなければならないという矜持でもあるだろう」としています。
 
 なお、ロンドンのプライド50周年を祝う企画としてはほかにも、JWアンダーソンが(以前ディヴァイントム・オブ・フィンランドもフィーチャーしていましたが)英国の誇るクィア・シンガー、サム・スミスとコラボした限定コレクション「JW Anderson x Sam Smith x Pride」を発売しました。このコレクションの売上は、親に勘当されてホームレスになったり、家、雇用、教育、職業訓練を与えられない環境下に置かれている16-25歳のLGBTQユースを支援する団体「akt」に寄付されるそうです(これは本当に大切な取組みですね。素晴らしいです)



参考記事:
多様性の社会へ ロンドンで「プライド・パレード」(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000260031.html
性的少数者の社会的地位向上を 英・ロンドンで100万人以上がパレード(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/383920
ロンドンで「プライド」行進 性的少数者の誇り掲げ初回から50周年(JBpress/ BBC)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70804

この初夏ロンドンにオープンした2つのクィア・アートスペースとは? Queer BritainとQueercircleをレビュー【プライド月間】(TOKYO ART BEAT)
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/queerbritain-queercircle

Sam Smith x JW Anderson x Pride(NEOL)
https://www.neol.jp/fashion/115124/

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