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「同性愛は依存症」冊子配布を受けて「撤回して」「差別を止めて」と訴える抗議集会が行なわれました(2) 

2022年07月05日

 自民党の国会議員が参加した神道政治連盟国会議員懇談会の会合で「同性愛は精神障害で依存症」などと記された冊子が議員によって配布されていた事件を受けて7月4日(月)18時〜20時半、自民党本部前で抗議集会が行なわれました。全国から約450名の方々が集まり、レインボーフラッグやプラカードを掲げ、次々にマイクでスピーチを行ないました。

「同性愛は依存症」冊子配布を受けて「撤回して」「差別を止めて」と訴える抗議集会が行なわれました(1)
https://gladxx.jp/news/2022/07/7941.html

 (1)に続き、リレートークの内容をダイジェストでお伝えします。(スピーチの様子は、当日、公式インスタグラムでライブ配信され、保存されています。こちらからご覧いただけます)

 TransgenderJapanでスタッフをしているオープンリー・バイセクシュアルの村田しゅんいちさん(先日の東北4県でのパレードにもほぼ全て参加し、九州男での「Living Togetherのど自慢」にも来られていました)
「まずは、謝らなければいけないことがあります。私は社民党から参院選全国比例区に立候補していますが、先日、党の職員のミスで、トランスジェンダーに対する差別的な発信がありました。お詫び申しげます。
 党として、お詫びのコメントも出しています。組織というのは、こういうものです。あのひどい資料、自民党がこの内容がまずいと思うなら、撤回の声明や文書を出さなきゃいけないと思います。
 私はこの間、全国に行っていて、地方で「初めてLGBTQが自分以外にもいることがわかった」とのメッセージや、「死のうと思っていた」というメッセージをもらいました。誰も死なせてはいけません。
 「自分を治したい」と話した方もいらっしゃいます。
 自分のままで、この社会で、育った場所で、生きていけるよう、制度を整えるのが政治の仕事じゃないでしょうか。
 自民党は、何人自殺に追い込めば、気が済むんですか。いい加減にしてください。
 私は去年、LGBT差別解消法、妥協して、理解増進法…こんな法律だけど、「差別は許されるものではない」と法律に書かれる意義はあると、その一点で運動に参加し、それでも法律が通らなかった。その時から、このレインボーのマスクをずっとつけています。
 今日この場に来れなかった人にも、あなたは病気ではありません、性的指向や性自認はかけがえのないあなたの人生の一部ですと伝えたい。
 先ほど、次に生まれてくるならゲイに生まれたくないとKANEさんがおっしゃった。痛いほどわかります。次にゲイとして生まれた時に、また、これからも生きていこうとする時に、OKだよと法制度で保障しなければ。
 参院選でプライドを示していこうじゃないですか。
 私たちが生きられる社会にしようじゃないですか」


 実業家で昨年2月にゲイであることをカムアウトした斎木陽平さんが登壇しました。
「私はゲイです。子育て支援政策の拡充、多様性政策の拡充を訴え、参院選東京選挙区から立候補しています。
 この自民党の冊子、自民党に強い抗議の言葉を上げます。
 先ほど、ゲイで生まれたくなかったとおっしゃった。そんなことを言わせてしまっている根本に自民党の存在があるんだと思います。あんな当事者の心をえぐってしまう冊子を配る自民党に、自由と民主を語る資格はないと思います。ここにいる人のセクシュアリティを応援するメッセージを発することが、政権与党に課された役割じゃないでしょうか。撤回してください。
 私は山口県長門市で生まれ育ちました。安倍晋三さんの遠縁です。私が政治を志したきっかけは、この国のために働くのが政治家だと思っていたからです。幼い頃から政治家に憧れていました。
 しかし、私は、ゲイでした。17歳の時に初めて男性を好きになって、戸惑いました。
 安倍さんが近くにいるから、いつか一緒に政治をやると思っていました。その安倍さんが、LGBTQ理解増進法を阻んでいる。どうしていいかわからなかった。だからこそ、きちんと彼に対峙していきたいと思います。彼と闘い、彼を乗り越えなけばいけないと思います。もう私は、安倍晋三さんから卒業します。
 どんなセクシュアリティであっても、生きていける。それが政治の役割です。それを阻んでいる安倍さん、そろそろ世代交代したらいいんじゃないですか。
 日本の和の伝統。和は単数じゃない、複数です。和の精神はレインボーフラッグそのものです。それぞれの色があるから、和があるんじゃないですか。多様性のある社会を望みます。 
 ここにいる皆さんが、希望です。
 これから生まれる当事者の子どもたちが自分らしく生きていける日本を作っていきましょう」


 よだかれんさんは関西にいるということで、メッセージが代読されました。
「本日は抗議の場を設けてくださったことに感謝し、敬意を表します
 トランス女性で初めての国会議員になるべく、可視化をはかり、トランスヘイト、バッシングにさようならをするために活動しています。
 この度自民党議連で配られた差別的な冊子、これに賛同する人には退場していただきたい」

 メッセージを代読したのは、伊東市の市議会議員をやっていた犬飼さんという方で、LGBT自治体議連にも籍を置いているそうです。代読の後、ご自身でもスピーチしました。
「私自身は、セクシュアリはわからない、私は私、それでいいと思っています。
 市議をしていたとき、LGBTへの差別をなくしてと働きかけましたが、市長が自民党の人で「市民の理解が進まないと何もできない」と言いました。「市民に理解させるのが、あなたたちの仕事じゃないですか。それが政治の役目」だと申し上げましたが、そういうことが理解できなかった。だから、わからない人を当選させてはいけないと思います。
 今度の選挙は重要です。改憲さたら、自由がなくなってしまいます。
 ぜひ周りに広めてください」


 #ありえないデモを主催している、たのみさんがスピーチしました。
「トランスジェンダーの人権のデモをやっています。
 今日、私は、インターセクショナリティの話をします。障害や病気、LGBTQのインターセクショナリティです。
 同性愛者であること、クィアであること、トランスであること、決して治すべきものではありません。セクシュアリティは、人としての人格、アイデンティティの根幹です。たとえ変えることができるとしても、絶対に変えさせられるべきではありません。私たちが知る限り、誰かのセクシュアリティを外部の介入で変えることは不可能です。転向療法は、苦痛、人権蹂躙でしかなく、死に追いやるものです。そんなものを勧める冊子が自民党の会合で配られたことに強く抗議します。ものすごく恐ろしいことです。今すぐ撤回してください。
 同時に私は、障害者差別に反対する立場からも、怒りを覚えました。
 私たちは、障害や病気じゃないから尊重されなければいけないわけではありません。障害があっても、病気があっても、依存症であっても、個人として尊重されなければならないのです。
 社会が障害のある人を想定していないがゆえに、生きづらさを感じるのは、本人のせいではありません。社会が変わるべきです。
 性的マイノリティも、精神障害者も、ともに、治療が必要だと見なされ、主体性を奪われてきた暗い歴史があります。その歴史を踏まえ、私たちは、障害者差別にも抗議します。
 そして、LGBTQで障害者でもある人は、複合的な差別を受けています。
 LGBTQとして受けた差別が引き金となって、うつとなってしまう人は多いです。命を落とす人もいます。
 LGBTQへの差別さえなければ、働けて、活躍できていた人も少なくありません。 
 一方で、そうではない人もいます。LGBTQに起因しない精神障害を抱えている人もいて、そういう人に追い討ちをかけないようにしなくてはいけません。
 私自身は、割り当てられた性別が嫌でした。ADHDと診断され、うつになったり寛解したりを繰り返し、双極性障害の疑いもあります。トランスジェンダーとして性別移行も始めています。私の中で、複雑に絡み合って、こっちの生きづらさはトランスだから、と切り分けることは難しいです。
 もし性同一性障害特例法が変わって、無条件に性別変更できるようになり、世の中のトランス差別がなくなれば、それだけで、生きやすくなります。特例法の緩和と、LGBTQ差別禁止法の制定を求めます。
 でも、それらが実現しても、そもそも、週40時間働くことが難しい状況があります。それでも、可能な限り、誇りを持って生きていきたいです。
 私たちはLGBTQへの差別に反対する時に、障害者差別に加担していないか、注意しましょう。定型発達の健常者で、社会貢献できる、その限りにおいてのみ性的マイノリティとして生きてよいなどということはあってはならないのです。使いやすい労働力であることや“生産性”が権利の条件ではないのです。
 様々な差別の軸を超えて、みんながお互いのアライとして、すべての人の人権が無条件に尊重される社会を。そういう政治家を選んでいきましょう」


 続いて、お名前はわからないのですが、岐阜県出身だという女性が語りました。
「去年の2月、両親にカミングアウトしました。少しでもわかってもらおうと、世田谷区でパートナーシップ宣誓しました。もし同性婚があったらどんなに心強かったことだろうと思います。
 子どもがいない二人の結婚は非常時のためのものでしかない、と友人に言われました。日常生活のなかでメンタルを削られています。周りの人たちにパートナーのことをどう説明するのか、悩まなくてはいけません。同性をパートナーとする人が存在を否定されているのは問題だと感じます。若者や子どもたちが生きる力をなくしてしまいます。
 今回、神道政治連盟の冊子で、この人たちは、自分と違うものが怖いんだと思いました。自分の中にある恐れを、LGBTQのせいにしないでほしいです。生物は多様性がないと進化しません。オードリー・タンさんは、台湾でコロナ対策に成功しました。日本が多様性を認めないのは衰退を意味するのではないでしょうか。
 宗教団体が信仰を変えられないのは仕方がないかもしれないけど、政権与党がそれを容認するのは問題です。差別主義ではないのなら、今すぐ明確に否定してください。はっきり弁明してください。私は自民党の方々の良識を信じます」

 昨年の「0606LGBT新法制定を求めるハチ公前連帯集会」でも素敵なスピーチをしていたフォトグラファー/エディターのKotetsu Nakazatoさんがステージに上がりました。
「ねえ、なんで私はここにいるの? 今日、夕陽めっちゃきれいだったじゃん。お酒飲みたくない? あたしら、当たり前の暮らしができないの。恐怖を抱えながら生きてるの。そんなのおかしいでしょ? いまお腹空いてるし、おしっこにも行きたい。でも、ここで声を上げてるのは、自由を求めてるから。
 ニーナ・シモンが「自由とは、恐怖を感じずに生きられることだ」って言ってる。恐怖を感じずに生きられるのが自由なのであれば、彼らがやってるのは、それと正反対のことです!
 私たちは自由を求めています。だからここにいるんです。
 今日ここに来られた方も、企画してくれた方も、みんな、すごく怖くて、気持ちが収まらなかったから。たくさんの連帯を見せつけてやりましょう。
 私たちはここにいるし、私たちは大丈夫だし、自由を求めています。
 これだけ声を上げても、変わらないかもしれない。未来はまだ先かもしれない。何度も、何のためにやってきたんだろう…って打ちひしがれると思う。それでも、ここにいるみんなは、連帯して、私たちが求める未来を実現させていきましょう!」


 YouTuberのかずえちゃんが、レインボーフラッグを背負って、福井から駆けつけました。
「今日ここに来たくても来れない人がいっぱいいた。そんなみんなの声を、旗に手書きして、フラッグを2枚、持ってきました。
 小学校5年生の頃に、周りと違って、男の子に目がいってるっって気づいて、子ども心に「バレてはダメだ」と否定してましたた。あれから30年経って、YouTubeをやるようになって、前と変わってないと思います。同じ思いをしている子たちからいっぱいメッセージが来ます。悲しくなります。
 行動することって大切だし、おかしいことはおかしいって言わないとダメだとすごく感じます。差別って、当事者だけじゃなく、家族や、先生や、みんなが傷つくんです。今回、小学校の先生や、子どもがゲイという親の方から、私も差別されてるんですか?とメッセージが来て、ショックだったし、本当に涙が出た。200くらいのメッセージが届きました。
 自分が子どもだったときのその子に、よく頑張ったねってハグしてあげたい。
 みんな、ここに来たこと、本当に素晴らしいです。自分にハグしましょう」


 野村恒平さんが、全国のろうLGBTの各団体からメッセージを預かっていますと言って、手話で語りました(このリレートークの間じゅうずっと、高島由美子さんが手話通訳してくれていました。おつかれさまでした)
「伝統的な家族とは何でしょうか。世界各国の法制度がどんどん変わっているのに、G7の中で、日本だけはまだ同性カップルの権利が認められていないですね。日本社会も多様性が認められているのに、まだまだ変わらない自民党。ある議員への怒りもあります。去年も同じ場所で、抗議をしました。
 私たちはろうLGBTQとして生きています。これからやってくる世代のためにも、また、今を生きる私たちにも、進むべき未来があります。
 命を守る法律を。声を大にして言いましょう。一緒に国を変えていきましょう」


 最後の一人のメッセージが代読されました。
「私は3人の息子の母親です。あまりのことに、いてもたってもいられずにメッセージを送ります。
 今まで私たちはよく知らず、愚かだったことを知っています。しかし今は2022年。自分がどれだけ法に守られてきたか、同性婚がないことで当事者にどんな不利益があるか、知っています。同性婚や別姓婚によって、異性愛者や同姓の婚姻をしている人たちは一つも不利益がありません。
 同性愛は精神病ではありません。彼らは何を恐れているのでしょうか。
 同性愛できる世の中の方が、私や子供達にとっても住みよい世の中です。
 一緒に声をあげましょう」


 最後にもう一度、共同発起人のワインさんが語りました。
「今日デモをすることにした理由を参加者のみなさんにお伝えします。
 私はハーフとして差別されてきましたが、差別をしないでと行動を起こす人たちに助けられました。
 冊子に書かれた差別のこと、無関係だと感じている方も、言動に変えてほしいです。
 政権を担当している方たちが、何のためにその椅子に座ってるのか。私たちは分断されたり虐げられたりするために生まれたわけじゃない。冊子の内容を明確に否定してください」


 共同発起人のアンドロメダさんも挨拶しました。
「今日は450人以上もの方たちが集まってくださいました。本当にありがとうございます。
 私たちは特別な人ではありません。ただ、記事を見て、寝れなかった。差別を許せなかった。誰でも、こうしたデモを起こすべきです。
 これで終わりではありません。また、こんな風に集まって、連帯して、差別を許さないことにしましょう」

 TBSのニュースによると、関西地方から駆けつけた方もいて、「7時間ほど車で運転してきたのでかかったんですけど、自分も声をあげないと何も変わらないと思って。その(冊子の)内容を見て、もし本当に真に受けている議員さんたちが政治を握ってるんだとしたら、そんな世の中で子どもたちが未来なんか見えるはずないと思って、すごくショックを受けました」と語っていたそうです。
 

 東京だけでなく、全国各地から、450名を超える方々が、集まりました。
 あのような非科学的で誤謬に満ちた、悪意すら感じられる差別的言説が政権与党の議員の間で流布されていることにショックを受け、憤りを覚えていたときに、お二人が立ち上がり、こうして抗議の場を設けてくださったことに感謝した方はとても多いはず。また、たくさんの方が集まり、声を上げる姿に、「独りじゃない」と救われる気持ちになった方もいらしたことでしょう。
 どなたかもおっしゃっていたように、以前に比べて声を上げる方がとても多くなっていること、こうして若い方が抗議集会を主催するようにもなっていることは、希望です。PRIDEとはこういうことです。
 
 本当はもう、抗議デモなんてしなくていい世の中になってほしいですよね…みなさん口を揃えておっしゃっていましたが、投票で私たちの意思を示しましょう。


【追記】→中止となりました
札幌でも7月9日(土)14:30-15:30、自民党北海道支部連合会前で「STAND FOR LGBTQ+ LIFE」の抗議集会が開催されるそうです。
https://twitter.com/stand_lgbtq/status/1544537316651180033

那覇でも7月8日(金)19時〜20時、県民広場で有志によるスタンディングが行なわれるそうです
https://twitter.com/korinz123/status/1544608225244225537


 
参考記事:
自民党前でLGBT当事者ら抗議 「同性愛は依存症」冊子に「差別やめて」(TBSテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/86904
冊子は「人権じゅうりん」と抗議 LGBT団体、自民会合で配布(共同通信)
https://nordot.app/916635334166036480?c=39546741839462401
「非論理的」「許せない」自民会合配布のLGBT差別冊子に抗議デモ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220704/k00/00m/040/266000c
LGBTQ当事者らが自民党本部前で抗議「差別やめろ」「平等な権利を」 党議員参加会合での差別文書配布で(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/187568

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