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「同性愛は依存症」冊子配布を受けて「撤回して」「差別を止めて」と訴える抗議集会が行なわれました(1)

2022年07月05日

 自民党の国会議員が参加した神道政治連盟国会議員懇談会の会合で「同性愛は精神障害で依存症」などと記された冊子が議員によって配布されていた事件を受けて7月4日(月)18時〜20時半、自民党本部前で抗議集会が行なわれました。全国から約450名の方々が集まり、レインボーフラッグやプラカードを掲げ、次々にマイクでスピーチを行ないました。

 杉田議員の「“生産性”がない」発言への抗議集会や、昨年の「種の保存に反する」「道徳的に認められない」などの差別発言への抗議集会の時と同様、(広場ではないため)参加者のみなさんは歩道に長く列を作り、それぞれにレインボーフラッグや「差別冊子に抗議します」「同じ尊厳を」などのメッセージを掲げました。そして、参加者のみなさんは次々にマイクスピーチを行ない、「LGBTQ差別をやめろ」「冊子の内容を撤回しろ」と声を上げる場面もありました。
 以下に、リレートーク(スピーチや、送られたメッセージの代読)の内容を、ダイジェストでお伝えします。時に胸を詰まらせながら語る方もいて、「がんばれ!」と声が寄せられたり、思いのこもったスピーチに対して「そうだそうだ」と賛同の声が上がったり、拍手が送られたりと、涙なしには聞けない、熱く、感動的なリレートークでした。
(スピーチの様子は、当日、公式インスタグラムでライブ配信され、保存されています。こちらからご覧いただけます)
 
 最初に、共同発起人のアンドロメダさんが語りました。
「ありがとうございます。こんなに集まってくれて、うれしい。泣きそうです。
 私は特別な人ではありません。 
 あの記事を読んで、眠れなくなりました。頑張ったら治療できる、同性愛が増えたら社会が崩れてしまうというのを読んで、怒りを感じました。50年前にタイムスリップしたような。ディストピア。私の愛するコミュニティが嘘で攻撃されたように感じました。何かしようと思わなければ。デモも、こんな人の前で話す経験もしたことがないけど。
 私たちのコミュニティには苦しみ、自殺を考える人もいます。
 私は高校生のときカミングアウトして、両親は、私の中に悪魔がいるから取り出さなくてはいけないと言いました。人生の中でいちばんつらかった。希望を感じられませんでした。そのあと、友達にカミングアウトしたら、ハグしてくれて、あなたはあなたのままで大丈夫と言ってくれて、救われました。
 子どもたちのことを考えると、許せなかった。あの言葉は、武器です。嘘を広めるための武器。LGBTQコミュニティは、その言葉に向き合わなければ、立ち上がらなければ。声をあげましょう。
 私は私のままで素敵です。
 「Stand for LGBTQ Life」という名前には、私たちは社会の居場所のために闘っているという思いを込めています。セクシュアリティを隠さずにいられるよう。自殺率が上がらないよう。闘っています。
 私たちが生きる権利のために」

 今回の問題を最初に書いた松岡宗嗣さんは、こう語りました。
「私は去年、同じこの場所でスピーチしました。『種の保存に背く』などという差別発言に対して声を上げるために。あれから1年、社会は、世の中の認識は変わったと思います。でも、政治の領域は変わってない、むしろ悪くなっているじゃないですか。
 今回、冊子を読んで驚愕しました。いつまでこんなに非論理的でめちゃくちゃな考えによって私たちは差別され続けなければならないのでしょうか。同性愛だけじゃなく精神障害や依存症も利用した、卑劣で悪質な差別です。端的に誤った考えです。“治療”しようとする考えは暴力であり人権侵害です。
 自殺率が高いのは本人のせい? 去年も話しましたが、数年前、友人を自死で亡くしました。何人も友人を自死で亡くしと語っています。憤りを感じます。絶対に許せません。
 社会に性的マイノリティに対する偏見差別があるから、死にたいと追い込まれるんです。差別は人を殺すんです。
 これを書いたのは、宗教学者だそうです。宗教は何のためにあるのでしょうか。弱い立場の人こそ、守らなければならないのではないでしょうか。
 どうかもう差別はやめてください。
 私たちは特権など求めていません。ただ、人権を、平等を求めているのです。
 当事者を死に追いやってるのは、社会の側です。そういう人に投票してる人たちにも責任があると思います。
 差別をなくすためには、差別をやめろと声を上げる市民活動、そして、差別しない政治家に投票することです」

 今回のデモを手伝ってくれた小林美香さんはこう語りました。
「私は、人間を男女の二元論に当てはめることに違和感を持つ人です。そういう意味ではノンバイナリーと言ってもいいかもしれません。異性愛を強制することにも違和感を覚えます。
 自民党議連で配られた冊子は、なんら根拠のない、差別的な、因習に基づいた知見であり、学問に目を向けず、学ぼうとしない態度です。偏狭な態度を手放さない、差別を容認する政権によってLGBTQ差別が解消されることはありません。
 あの言葉に傷つき、憤りを覚えた誰もが当事者です。
 これからの社会を担う若い世代のためにも、声を上げます」

 「ふたりぱぱ」のみっつんさんがマイクを握りました。
「スウェーデンで夫と子育てをしています。たまたま帰国してすぐに、今回のニュースを見ました。真っ先に心配したのが、日本に暮らす若者のことです。大丈夫、心配ないよと言いたいです。
 何度も言わないといけない。“治療”は世界的に禁止されています。病気じゃないので治す必要はありません。むしろ、治すべきなのは同性愛嫌悪です。同性愛嫌悪は正しい知識で治すことができます。
 自殺は本人のせい。むしろこの発言が当事者を自殺に追い込見ます。
 その嘘に対して、NOを突きつけていかないと。また自殺する方も現れるかもしれません。
 ゲイとして夫と子どもを育てています。スウェーデンでは20年前に子を持つことが認められましたが、社会は崩壊してないし、少子化も起きていません。毎日の生活では、ゲイということを考える必要がないくらいです。
 このような差別的な言説が是とされる社会にしてはいけません。
 そのためには、当事者だけでは足りません、アライとしての応援も必要です。大切なことです。マイノリティがマジョリティになる場面もあるかもしれません、その時は助けるでしょう。みんなで一緒にやりましょう。そうすれば、必ず、すべての人が安心して暮らせる社会になります。
 日本と海外は違う、無理というコメントも見かけますが、スウエーデンではかつて同性愛は犯罪で、非犯罪化された後も障害と扱われていて、日本よりひどかったんです。しかし、自然に、勝手に今のような平等な社会になったわけではありません。先人たちが声を上げて闘ってくれたからです。そこにあぐらをかいてはいけません。
 私も、仲間である日本のコミュニティの未来のために声を上げます。
 選挙では、ぜひ皆さんの一票を、差別しない候補者に入れてください」

 性教育などについても発信しているドラァグクイーンのラビアナさんが、マイクを握りました。
「今日は、すごく悲しいことがあって、この場に立っています。多くの方も、傷ついていると思います。ここに来れなかった方もいらっしゃいます。
 まずは、あなたが独りじゃないということをわかってほしい。周りを見てください。これだけ仲間がいます。傷ついた心をケアしてください。
 “生産性”がないとか、“種の保存”に背くとか、精神障害、依存症、みんな嘘です。メンタルケアが必要な方や、依存症の方に対しても暴力的な言葉です。
 この嘘を撤回させるために今日は集まって団結して声を上げています。心強いことです。団結して、差別や偏見に反対していくみなさんを誇りに思います。一緒に社会を変えていきましょう」

 TransGenderJapan共同代表で、映画『I Am Here -私たちはともに生きている-』の監督で、精神疾患、発達障害、依存症を抱えるLGBTQのサポートグループ「カラフル@はーと」を立ち上げた方でもあるトランス男性の浅沼智也さんが登壇しました。
「複合的な困難をもつ当事者の居場所づくりをしてきました。私自身は看護師をしています。
 ひどい内容だったけど、これだけ仲間がいるということを知ってください。つらい思いをした人も多い、傷ついた、消えたいという人もいました。
 僕はトランスジェンダーですが、社会を崩壊させてはいません。全国の仲間も同様です。
 同性愛は心の中の問題でも、後天的な障害でも依存症でもありません。かつて病気だとするレッテルがどれだけ苦しめたことか。性同一性障害は今年、WHO(世界保健機関)のICD-11(国際疾病分類の最新版)で脱病理化されました。障害モデルから人権モデルに移行したのです。
 いい加減にしてください。どれだけ当事者を追い詰めば気がすむのか。自殺率が高いのは社会の差別が原因です。
 僕は3社面談で落ちました。ようやく入れた会社でも、アウティングされ、下半身のことを執拗に聞かれ、女性トイレを使えと言われたこともありました。
 トランスジェンダーの友人は、地域の自治会に入れてもらえず、ゴミを持って行ってもらえなかったこともあり、出て行けと言われました。
 ゲイの友人は、パートナーが亡くなっても遺留品ももらえず、住んでた家を追い出されました。
 これでも自殺するのは当事者のせいですか?
 結婚の選択肢がないアンフェアな社会で、私たちはなんとか折り合いをつけながら生活しています。
 生殖腺を取り除けば薔薇色ではありません。僕も健康被害を受けながら生きています。
 人権が守られる社会にしてください。
 私たちは昔からずっといました。常にヘイトをしている人とともに生きています。
 消えたいと思わない社会にしてください。
 理解を深めたいなら、当事者の声を聞いてください。対話をきちんとしてください」
 
 共同発起人のワインさんも語りました。
「自民党のみなさん、はじめまして。
 私が伝えたいことは一つだけです。冊子の内容を明確に否定してください。
 あなたが今いる席は、特手の人々に権利を与えず、そのライフスタイルを否定するためですか? 誰かが呼吸することをやめさせるためですか? 自問自答してください。
 もう一度言います。冊子の内容を明確に否定してください!」

 ここで、寄せられたメッセージの代読が行なわれました。
「(20代女性の方からです)
 死にたくなりました。私が悪いのでしょうか。自民党の広告を見るたびに、誹謗中傷のような差別をしながら平気で選挙活動をしている大人が恐ろしいと感じます。自分の弱い立場をいじめる人が国を作っている、国家規模でいじめが起こっています。私たちは、ストレートをいじめましたか? 同じ人間として幸せに暮らしたいだけです。いなくなった方が都合がいいのですか? 私たちは殺されようとしています」

「私が以前、自民党本部前に行ったのは、杉田議員の発言に抗議する時でした。彼女は謝らず、やり過ごしました。また今回のことが起きました。これは差別だと思ってないのでしょう。自分が差別だと思わなければ差別じゃないのです。人権が何かわからない方が、自由と民主を掲げている。義務教育からやり直した方がいい。人権がない人間のことを奴隷と言います。性的マイノリティは、税金を回収するための奴隷ですか? 絶望です。ただ、希望があるのは、2018年よりも差別に対して声を上げる方が増えているということです。このまま謝らないとしても、私たちは必ず、あの冊子を撤回させてやります」

「先日の大阪地裁の判決を傍聴しました。一緒にいた当事者の友人が、泣き崩れたのを見ていました。私は非当事者ですが、一つだけ言いたいのは、非当事者こそ、声を上げていくべきだということです」
 
 代読していたみさきさんも、自身の言葉で語りました。
「今日はたくさんありがとう。みなさん怒ってますか? うんざりしていると思います。
 差別は、これを煽動する国の側の問題です。ヘイトクライムにつながります。オスロのゲイバーの銃乱射事件です。
 私たちは、ここで差別をやめなければいけない。私たちは、必ず差別をやめさせることができるはずです。負けません。
 叫んで、署名して、投票しましょう。
 こんなことは私たちの世代で終わりにしましょう」

 石川大我参議院議員が登壇しました。
「私たちは何度、この自民党前で抗議をしなくてはいけないのでしょうか? 何回抗議すれば、LGBTQ差別をやめるんでしょうか?
 昨年は、法案をつぶされました。4年前は“生産性”がない発言。ほかにも「足立区が滅ぶ」「異常動物だ」と言った自民党議員もいました。
 冊子は本当にひどいです。こうした冊子が配られても平然としています。自民党はこの件で何も発言していません。
 私たちが、こうした差別をやめろという言葉を上げていかなくてはいけません。
 立憲民主党は、「あらゆる差別とたたかい、一人ひとりが尊重される多様性ある社会の実現をめざします。誰もが一人ひとり生きる価値があります。一緒に歩んでいきましょう。どうか自分を否定しないで、ありのままで生きてください。必ず明るい未来をつくります」との声明を出しました。
 神道政治連盟は、多様な意見だと言っている、全く反省していません。これは尊厳の問題です。人の命を傷つける発言は、ヘイトです。これを放置している自民党を許してはいけません。
 いつになったら、差別をやめるのか。いつになったら、差別を解消するのか。いつになったら反省するのでしょうか。
 人権を尊重しない、人の尊厳を傷つける、そんな人に政治をやらせてはいけません。ご退場願いましょう。
 私は当事者として国会で闘っていきます」

 TransGenderJapan共同代表でトランスジェンダー活動家の畑野とまとさんがスピーチしました。
「尊敬する活動家のシルヴィア・リヴェラが、1973年のNYプライドのスピーチの冒頭、「こんなクソみたいなところに来たくなかったけど、仕方なく来たわよ」と言いました。本当に自民党の前なんか来たくなかった。
 大阪で、女子トイレを使ったトランス女性が通報されて、捕まったということが半年後に「女子トイレを使った」って全国ニュースになりました。これ、全国ニュースにする話?
 千葉の大学生が「女装してパパ活して殺された」と報道されました。言い方おかしくない?
 いろんな所ですごく間違ってる。それが当たり前のようになってる。差別されてもいいと思ってる。
 LGBTQだけじゃありません、入管の差別もひどい。めちゃくちゃです。こんなに人権を無視してる。
 去年の理解増進法、あんなクソな法律すら通せない。通すなと言ったのは自民党内の反LGBTQグループ、神社本庁ですよ。あたしらナメられてるんですよ。あの人たちは差別をしたいって言ってるんです。そんな政権がのさばってていいの?
 でも、今日はこんなにたくさん集まってくれた。未来があると感じます。
 いいですか、本当に今回、LGBTQのための政策を立ててる人を選んで、投票しましょう。私たちは怒ってるんだぞということを示すために、団結しましょう
 クィア・パワー!」

 続いて、和歌山や京都のパレードでライブを披露していたシンガーソングライターのKOTFE(勝山こうへい)さんと、KANEさんのカップルが登場しました。KOTFEさんは元警察官、KANEさんは元消防士です。
KOTFEさん
「子ども時代、ゲイだとバレたらいじめられる、仲間外れにされると感じ、恐れていました。憧れた職業も、心身ともに健康でいられず、昨年、退職しました。これも、僕たち自身のせいなのでしょうか? 自民党はどんな理解を深めようとしたのでしょうか? そこにLGBTQ当事者はいないのでしょうか?
 オランダの若い世代は、「かつて異性同士でしか結婚できないという非人道的な時代があった」と言うそうです。
 同性婚を法制化した国では、少子化も加速していないし、街が滅びることもないし、ただ幸せな人が増えただけです。
 自認する性や性的指向は、年齢や血液型と同様、変えることができません。
 自民党に対して、LGBTQの認識のアップデートを求めます。差別をなくすための真摯な対応を求めます」
KANEさん
「あまりにもひどすぎて、胸をナイフで刺されるような感覚でした。自殺率が高いのは差別が原因ではなく、自身のせいだと書いてありました。
 当事者本人の問題ではありません。自殺を考えた当事者の友人は、周りにも多いです。僕自身も考えたことがあります。
 異常な存在としている社会の問題です。
 SNSで、ある当事者の方が、ゲイである自分を認められなくて、楽な方に逃げたくて、過去に薬を飲んで救急車で運ばれたと書いていました。「楽な方に逃げる」という言葉が刺さります。当事者に死んだ方が楽と思わせる社会とは? 悲しみと怒りを覚えます。実際に亡くなった方もたくさんいます。
 僕たちは今、YouTubeなどで発信することができています。これは、闘ってくれた先人の方たちのおかげです。感謝しています。
 ただ僕は、この場で、こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが――生まれ変わっても、ゲイには生まれたくありません。もう二度と、こんなつらい経験はしたくありません。アイデンティティを否定され続ける人生です。
 そんな思いをする社会にしないでください。苦しんでる当事者を追い詰める社会にしないでください。お願いします」


 正直、KANEさんのスピーチの後、涙が止まりませんでした。
 生まれ変わっても、ゲイには生まれたくない。こんな悲しい言葉があるでしょうか…。こんな悲しい言葉を言わせる世の中であってはいけないはずです。これから生まれてくる子たちがこのような思いをしないように、本当に、私たちの世代で差別は終わらせなくてはいけないと、強く感じます。

 リレートークの続きは、この後のニュースでお伝えします。

 
 
参考記事:
自民党前でLGBT当事者ら抗議 「同性愛は依存症」冊子に「差別やめて」(TBSテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/86904
冊子は「人権じゅうりん」と抗議 LGBT団体、自民会合で配布(共同通信)
https://nordot.app/916635334166036480?c=39546741839462401
「非論理的」「許せない」自民会合配布のLGBT差別冊子に抗議デモ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220704/k00/00m/040/266000c
LGBTQ当事者らが自民党本部前で抗議「差別やめろ」「平等な権利を」 党議員参加会合での差別文書配布で(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/187568

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