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【同性パートナーシップ証明制度】鳥取県境港市が山陰初の導入、その他、佐賀県、茨城県、茨木市などの動きをお伝えします

2022年07月07日

 鳥取県境港市は6月28日の市議会で「パートナーシップ宣誓制度」の導入を全会一致で可決、7月1日から導入することになりました。山陰地方での同制度の導入は初めてのことです。 
 伊達憲太郎市長は6月28日の定例会見で「LGBTの方々への理解を進め、当事者が自分らしく生き生きと暮らし、宣誓しやすいまちにしていきたい」と述べました。「(宣誓カップルは)なかなかすぐには多く出てこないかなという思いはありますが、宣誓しやすいように、市民・事業所の理解を求め、啓発をしていくことが、今は大事と思っています」
 境港市の「パートナーシップ宣誓制度」は、他の多くの自治体と同様、宣誓を行なうと、宣誓書受領証と受領カード(パートナーシップ証明書)が交付されるもので、宣誓したカップルは市営住宅に家族として入居できるほか、市内の病院でパートナーが入院や手術する場合、同意の手続きなどが可能になります。市は住民票や所得証明の交付申請など行政手続きで配偶者と同様に対応、また、市内の事業所などに対し、宣誓者が配偶者と同様の対応が受けられるよう働きかけを行なうそうです。
 市役所正面玄関にはメモリアルフォトスポットが開設されました。今後、啓発チラシを公共施設などに掲示したり、公民館などで研修会を行なったり、市内の高校などで出前講座も開き、制度を周知していくことにしているそうです。境港市地域振興課の小川博史課長は「行政の対応だけでなく、市民一人一人の意識が変わっていくように啓発活動に取り組み、すべての人が笑顔で暮らせるまちづくりを進めていきたい」と話しました。

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 大阪府富田林市は、パートナーシップ証明を受けた二人とその子どもや親との家族関係を公的に認める「ファミリーシップ制度」を7月1日から始めました。大阪府では初めてだそうです。
 富田林市ではこれまでに3組がパートナーシップ証明を受けました。市の担当者は「自分が性的マイノリティに当てはまるのか、制度を利用できるのか、迷いがあればまず相談してほしい」と話しています。
 同市ではこのほか、2ヵ月に1回のペースで、性的マイノリティやその家族、支援者らが交流できるスペース「にじいろブーケ」を開催しているそうです。次回、7月30日は同性婚や同性カップルの子育て事情がテーマだそう。詳しくはこちらをご覧ください。

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 大阪府茨木市が同性カップルの公正証書作成費用を助成へというニュースでお伝えしていたように、大阪府茨木市では7月1日、「パートナーシップ宣誓制度」を導入するとともに、宣誓したカップルが公正証書を作成する際の費用を補助する支援制度を始めました。東京都では渋谷区が公正証書作成の費用を補助していますが、大阪府では初めてです。
 市によると、金融機関で住宅ローンを申し込む際などにパートナーシップ証明書だけでなく、婚姻関係であることを証明する合意契約公正証書や、財産の管理などをパートナーに委ねる任意後見契約公正証書の提出を求められる場合があり、2つの証書の作成には6万円ほどの費用が必要になるとのことで、市が上限5万円まで補助することで、当事者の負担軽減につなげるそうです。
 大阪府とは別に独自に設けた「市パートナーシップ宣誓制度」で注目すべきは、市営住宅への入居だけでなく、災害見舞金等給付、介護保険料還付が家族と同等に受けられ、また、救急搬送証明、罹災証明書発行、税証明発行、窓口還付、要介護認定などで家族と同等に代理申請ができるなど、宣誓したカップルが受けられる行政サービスの充実度です(詳しくは市公式サイトをご覧ください)。世田谷区に次ぐレベルのきめ細かな支援ではないでしょうか。
 福岡洋一市長は7月2日、市内で開かれた男女共同参画週間記念講演会で、当事者への支援や性の多様性についての理解促進に取り組むとした「性の多様性を尊重するまちづくり宣言」を発しています。

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 京都府内で「パートナーシップ宣誓制度」を導入している京都市、福知山市、亀岡市、向日市、長岡京市の5市が6月27日、協定を結びました。「パートナーシップ宣誓制度の利用者が5市間で転居をしても、簡易な手続によって転出先の市から宣誓書受領証等を発行できるようにし、宣誓が有効に継続するようになります。また、この協定に基づき、5市間での連携・協力を進め、性的マイノリティが安心して暮らし、働き、学べる環境づくりに、より一層取り組んでまいります」とのことです(向日市公式サイトより)

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 協定といえば、佐賀県が6月30日、県の「パートナーシップ宣誓制度」の利用に関する協定を新たに武雄市、東松浦郡玄海町と結び、県内の全20市町と協定締結を終えました。行政エリア内の全自治体と協定締結した都道府県は全国で初めてです。
 昨年8月に(九州で初めて)県として「パートナーシップ宣誓制度」を導入した佐賀県は、今年2月、県とは別に「パートナーシップ宣誓制度」を導入した唐津市(昨年10月に導入)、上峰町(今年1月に導入)と相互利用に関する連携協定を結びました。唐津市または上峰町でパートナーシップ宣誓を行なった方が県内の他の市町に転居したとき、新たな宣誓をすることなくサービスを受けることができます(両市町のパートナーシップ宣誓を県のそれと同等であると見なし、効力をもたせる協定を結ぶことで、利用者の転居に伴う手続きの負担を軽減する措置と言えます)
 また、佐賀県は同制度を導入していない他の市町とも「パートナーシップ宣誓制度の利用に関する協定」を締結してきました。県のパートナーシップ宣誓を行なった二人が市町のサービスを受けることができるというものです(県でパートナーシップ宣誓をした方は、県営住宅の入居の申込みや、県医療センターにおけるICUでの面会等が認められますが、自動的に市町村でも同様の行政サービスが受けられるわけではなく、県が各市町村に働きかけて、このような協定によって、市町村での待遇を保証するという意味だと思われます)。協定を締結した市では市営住宅への入居の申込みや、市立病院での面会等の「ご家族同様の対応」が保障されます。 
 都道府県で制度ができて、その中の市区町村でも別に制度が設けられているときに、このような制度上の複雑な問題が必然的に出てきてしまうのでしょうが、佐賀県は市や町と話し合って連携しながら、利用者が困ったり役所で混乱が起きたりしないよう、丁寧に進めてきたと言えます。

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 茨城県は、同性パートナーシップ証明制度を導入している全国すべての自治体と連携協定を結ぶことを検討しているそうです。
大井川和彦知事が7月6日の定例記者会見で明らかにしました。自治体間で転出入する際に制度の効果が維持されることが目標で、具体的な協定内容や協議時期などは今後検討するとしています。
 県福祉部福祉政策課によると、転出入に伴ってパートナーシップが解消されたり、利用の再申請が必要になったりしていた問題の解決を図り、手続きの簡素化を目指すものです。導入済みの府県に対する提案はすでにしてきたそうで、市や町との協議は今後取りかかるそうです(こちらの記事によると、制度を導入した自治体は211に上っています。府県を除いても200以上あり、市区町村との協議はとても大変そうです…)
 2015年に渋谷区・世田谷区で同性パートナーシップ証明制度がスタートしたときは、おそらくこのように制度が複雑に進化を遂げることは誰も予想していなかったことでしょう。各自治体の熱意には頭が下がります。

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 長野県の千曲市と須坂市が制度導入を予定していることが中日新聞の調査で明らかになりました。一方、飯田市、塩尻市など9市は「導入は検討していない」としており、19市の中でも温度差があることもわかりました。

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 東京都町田市の東友美市議(アセクシュアルかつXジェンダーであることをカムアウトしている方です)によると、先月の市議会で町田市が都とは別に制度を導入、今年度のできるだけ早い時期の制定を目指すとの答弁があったそうです。「取り組み5年目の内容です。ご助言いただいた方ありがとうございました」とのことです。
 
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 「パートナーシップ宣誓制度」をはじめとする同性パートナーシップ証明制度は今や全国の211自治体で導入されており、3月末時点で2832組のカップルが関係を公的に認められました(渋谷区とNPO法人虹色ダイバーシティの共同調査による)。人口あたりのカバー率は4月1日時点で52.1%に上っています。そのことは本当に喜ばしく、素晴らしいことです。各自治体で制度導入に尽力されたみなさんには、感謝しかありません。パートナーシップ証明を受けて、「やっと公的に二人の関係性が認められた」といった喜びや感慨を抱いたすべてのお二人に祝福を贈ります。

 しかし、同性パートナーシップ証明制度はあくまでも届け出た(宣誓した/登録した)カップルに対してパートナーシップ証明書を発行するもので、残念ながら婚姻制度のような相続や税金の控除などの法的な効力は生じません。先月の大阪地裁の判決で「同性カップルと異性カップルの享受し得る利益の差異は相当程度解消ないし緩和されつつある」と述べられましたが、とんでもない…誤解だと言わざるをえませんし、法律の専門家である裁判官の方がこのような誤解をしているのはちょっと深刻なのでは…と危惧します。
 同性パートナーシップ証明制度の法的効力はゼロであり(「Marriage for All Japan -結婚の自由をすべての人に-」の寺原代表もそのようにおっしゃっています)、婚姻で認められる1000もの権利のパッケージのうちの何一つ与えられていないということ、欧米の(シビルユニオンなどの)同性パートナー法とは全く別物であるということ(そのためにも「証明」制度という言い方を定着させたほうがよいのではないでしょうか)、婚姻平等が実現しなければ僕らが被っている不利益や不平等、これから起こるかもしれない悲劇(病院でパートナーの死に目に会えなかったり、親戚に共有財産を持って行かれたり、住んでる家を追い出されたり、たとえパートナーを殺されても遺族給付金も支給してもらえない)は解消されないということが、きちんと世間に認知されてほしいです。
 婚姻は当然誰にでも認められるべき基本的な権利ですが、僕らゲイ(やレズビアンや、戸籍性が未変更のトランスジェンダーでパートナーと戸籍上同性である方など)は婚姻の権利を奪われているがゆえに、著しく不利益を被っています。これは特権などではなく、平等の問題です。一日も早く不平等が解消されるべきですし、そのために、訴訟や、議員への働きかけなど、様々な運動が展開されています。10日の投票日も、僕らの権利を回復するための大切な日になります。
 
 

参考記事:
“パートナーシップ宣誓制度”境港市議会 全会一致で可決 自分らしく生きる社会の実現へ 鳥取県境港市(日本海テレビ)
https://www.nkt-tv.co.jp/pc-news/news1070tr6qct7g25aeug1.html
パートナーシップ宣誓制度7月導入 境港市、山陰両県初(日本海新聞)
https://www.nnn.co.jp/news/220629/20220629056.html
境港市 “パートナーシップ宣誓制度”導入 山陰地方で初(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20220701/4040012106.html
境港市が「パートナーシップ宣誓制度」導入 山陰両県の自治体で初(山陰中央新聞)
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/232009

パートナー、子も親も関係を証明 富田林市がファミリーシップ制度(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASQ6S6X8TQ6PPTIL006.html

性的少数者カップル宣誓 大阪・茨木市が制度化、補助制度も(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220707/k00/00m/040/084000c

京都府内の5自治体、性的少数者カップルの「パートナーシップ制度」で協定(京都新聞)
https://www.city.muko.kyoto.jp/kurashi/soshiki/hurusatosouseisuisinnbu/koutyoukyoudouka/1/news/1655201020342.html

性的少数者のパートナーシップ制度 佐賀県、全20市町と協定締結(佐賀新聞)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/878287

茨城、パートナー制度の連携検討(共同通信)
https://nordot.app/917339847650295808

「パートナーシップ」導入予定3市、検討せず9市 本紙アンケート(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/499722

「パートナーシップ制度」が各地に広がる 導入する自治体は211に(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASQ744CVBQ6XOXIE008.html

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