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自民党の性的マイノリティ特命委が、旧統一教会系の媒体で「同性愛の多くは治癒可能」などと発言してきた八木秀次氏を“有識者”として招きヒアリングしていたことが明らかに

2022年07月28日

 自民党は7月28日、LGBTQに関する施策について議論する「性的マイノリティに関する特命委員会」を開きましたが、これまで旧統一教会系の媒体などで「同性愛の多くは治癒可能」などと述べて問題視されてきた麗澤大の八木秀次教授(憲法学)が“有識者”として招かれたことが明らかになりました。

 
 「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に(以下MFAJ)」によると、八木氏は「同性婚は憲法違反」と主張するおそらく唯一の憲法学者です。
 2018年、国際勝共連合(統一教会の文鮮明教祖が設立した政治団体)の公式サイトのインタビュー記事「東京都LGBT条例の危険性」で八木氏は、東京都の人権尊重条例(「性自認や性的指向等を理由とする差別の解消及び不当な差別的言動の解消への取組」を明記)に対し、「性的マジョリティの価値が相対化される懸念がある」「性的マジョリティの価値をどう守るか、とりわけ婚姻制度の意義をどう説いていくかが課題になる」「婚姻に基づく配偶者保護手当が同性カップルに及ばないと差別とされるかもしれない。」「婚姻制度の意義は端的に言うと子供の福祉である」「アメリカの同性カップルでは、女児を養子に迎え育てている例があるが、幼い頃から思春期にかけてゲイの集会に参加してきたため、自身のアイデンティティ形成に悩みを抱えている者もいる」「同性婚の合法化を目指す人たちは地方自治体を狙っている。多くの自治体で同性婚を認めるようになれば、国の政策もその方向に動かざるを得なくなる」などと述べています。
 2019年、宇都宮地裁が同性カップルを事実婚(内縁)に準ずる関係であり法的保護の対象になると認める画期的な判断を示した際は、産経新聞で「婚姻、すなわち夫婦になるとは、妻は自分が産んだ子を夫の子とし、夫は妻の産んだ子を自分の子として、生まれた子を共同して育てることを意味している」「同性カップルは自然には子供は生まれない。そのため同性カップルの共同生活は婚姻とは言えず、区別されなければならない」「憲法24条1項については、「両性」という文言もさることながら、「婚姻」についての規定である以上、男女間の関係を前提としていることは言うまでもない。憲法解釈においても判決は的外れと言わざるを得ない」などと述べています。
 昨年の同性婚を認めないのは違憲であるとする札幌地裁の画期的な判決に対しては、世日クラブ(家庭連合/旧統一協会が発行する世界日報の読者の組織)の講演で、「最新の研究によると、家庭内での虐待など環境的要因説が有力で、精神療法で治癒できるケースも多い」「日本ではほとんど紹介されないが、特に英語圏では研究が進んでいて、同性愛は先天的ではないという見解が有力とされてきている」「米国の精神科医ロバート・スピッツァー氏は2011年、同性愛の傾向を抱えていたとしても、「異性愛者としての機能を十分回復できる」という見解を出している」「本人が望めば治癒するという見解も同時に一般化していくべきだ。LGBTへの寛容な姿勢は必要だが、ファッション化してはいけない」「性同一性障害もまた、先天的なものではないという研究もある。ニュージーランドの遺伝学者であるN・E・ホワイトヘッド氏によると、70人の性同一性障害者の調査で、本人には何ら身体的異常は見つからなかった。しかし、母親の80%、父親の45%がさまざまな精神病を患っていた。生理的原因説は根拠が乏しく、心理的原因の可能性が高いというわけだ」などと述べています。
 
 そんな八木氏が今回、自民党の「性的マイノリティに関する特命委員会」の「有識者ヒアリング」に招かれました。出席者によると、会合で八木氏は「最近の学説では性的指向は後天的だというのが有力」「虐待や環境との関係があるのでは」などと述べ、性自認をめぐり「入浴施設での事例」などを紹介したということです。
 会合は非公開で行なわれましたが、終了後、八木氏は記者団に発言内容を問われ、ヒアリングでは「(性的指向について)先天的だという意見もあるし、最近の学説では後天的だという意見もだんだん有力になってきている」と主張し、そのうえで、「社会制度を設計するにあたっては、新しい学問的な科学的な見解に基づいてすべきで、かつての見解をそのまま使って制度設計したとしたら、多くの人にとって幸せな結果にならないのではないか」と述べました。記者団からこうした八木氏の見解について同意するか問われた稲田朋美議員は、「非常に難しい」と述べたそうです(※「性的マイノリティに関する特命委員会」は自民党内でもLGBTに関する政策を議論しようということで稲田朋美議員が音頭をとって立ち上げたものです)
 TBSラジオニュースが報じている通り、八木氏は記者から旧統一教会との関わりについても追及されています。
 
 MFAJは、こちらから続くスレッドで、「最近の学説が何を指しているか不明ですが、2021年の講演で「同性愛の傾向を抱えていたとしても、『異性愛者としての機能を十分回復できる』」として言及しているロバート・スピッツァー氏の説であれば、氏は研究の誤りを認め、謝罪しています」と反論、「古い学説に基づき不幸を作り出してるのは八木先生です」と批判しています。また、「八木秀次先生がもう一人取り上げているN・E・ホワイトヘッド氏のwikipediaは「信用を失った」「虚偽」「疑似」「極端な宗教的信念」といった言葉があふれています」とも。「世日クラブでのご講演の記事を見る限りでは、ご主張にはまったく科学的な裏付けはありません」
 
 乙武さんが「自民党は、なぜこの分野の専門家とは言えない八木氏を招いたのでしょうか。真に学ぼうという意思はなく、思想ありきの人選だったのでしょうか。その真意が知りたいです」「どのような経緯で、どなたの権限で講師として招聘することになったのかご説明お願い致します」とコメントしていますが、本当にそうですよね。ぜひ経緯を明らかにしていただきたいものです。
 



参考記事:
自民党の性的マイノリティ特命委 八木秀次氏からヒアリング(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ7X76WHQ7XUTFK00V.html

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