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トム・デイリー選手がコモンウェルスゲームズに合わせて声明「LGBTQのアスリートが迫害や死を恐れることなく、安全な状況で自分らしさを発揮できるようにならなくてはなりません」

2022年08月01日

 2013年にカムアウトし、東京五輪で金メダルに輝いた高飛び込みのトム・デイリー選手が、7月28日(現地時間)にイングランドのバーミンガムで始まったコモンウェルスゲームズに合わせて声明を発表し、コモンウェルス56ヵ国のうち35ヵ国で同性愛が違法とされ、鞭打ちや終身刑、死刑になる国もあるとして、LGBTQアスリートの人権を訴えました。

※コモンウェルスゲームズ:大英帝国時代のほぼ全ての旧領土である56の加盟国(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、第二次大戦後に独立したアジア、アフリカ、オセアニアおよびカリブ海の諸国)から構成される経済同盟「コモンウェルス(英連邦)」が4年に1回、開催する総合競技大会。クリケットやネットボール、スカッシュなども行なわれるのが特徴的です。 

 デイリー選手は今回の大会には出場しませんが、最近、BBCのドキュメンタリー番組「Tom Daley: Illegal To Be Me(トム・デイリー:私になることが違法になる)」のために同性愛を処罰の対象にしているコモンウェルスの国々を取材していました。デイリー選手は声明で、コモンウェルス56ヵ国のうち35ヵ国で同性愛が違法とされ、鞭打ちや終身刑、死刑になる国もあるという現状について「私はこれまで、私が私であることが違法である国や、競技会場から安心して出られないような国で競技をし、同性愛嫌悪を経験してきました」「特権を持つ私ですらそう感じるのなら、コモンウェルスのLGBT+の人たちの日常がどんなものなのか想像もつきません。LGBT+のアスリートたちが迫害や死を恐れることなく、安全な状況で安心して本当の自分らしさを発揮できるようにならなくてはなりません」と語りました。
 デイリー選手はコモンウェルスゲームズ連盟が「スポーツはすべての人たちのものである」と示すことで他の連盟のお手本になれると訴えます。「私たちは世界中に多く存在している人権に関する恐ろしい法律を変えるよう、影響を与えられると期待しています。連盟は私たちの意見を聞こうとしてくれています。より包括的な姿勢を取り始めたのはいいことです。コモンウェルスにいる素晴らしいLGBT+の人たちと共に私たちは変化をもたらすでしょう」
 
 デイリー選手は昨年秋、英国を代表するゲイ雑誌『ATTITUDE』が主催する「バージン・アトランティック・アティテュード・アワード」のスポーツ賞を受賞した際のスピーチで「同性愛者を死刑で罰する国はオリンピックに出場させるべきではない」と語り、LGBTQコミュニティをはじめ多くの人から称賛されました(詳細はこちら
 今年6月には、国際水泳連盟(FINA)がトランス女性選手が男性の思春期をわずかでも経験した場合、女子競技への出場を認めないとする決定を下したことに対し、「他の人と異なるという理由で大会への出場を禁止されること、好きなことができなくなるのは間違っている」「トランスジェンダーの人々にも考えを表現するチャンスが与えられるべきだと強く思う」と訴えました。
 また同じ6月にはフランスのブランド「アミ パリス」とコラボし、プライド月間を記念した2種類の限定ニットを製作、売上げを英国のLGBTQ支援団体「Kaleidoscope Trust」に寄付しています。
 
 トム・デイリーは2008年、14歳のときに英国最年少で北京五輪に出場し(7位入賞)、「飛び込み王子」と騒がれましたが、アイドル的な人気へのやっかみから学校でのいじめに悩まされ、転校を余儀なくされたといいます。また、性的指向に関してネット上でひどい中傷にさらされた時期もあったそうです。しかし、2012年の地元ロンドン五輪では様々な重圧に耐えて見事、高飛び込みで銅メダルを獲得しました。翌2013年には、「噂や憶測」に歯止めをかけたいという思いから、男性と交際していることをYouTube上のファン向けビデオ・メッセージでカムアウトしました(カイリー・ミノーグが「感動しました」とコメントするなど、各界のセレブが称賛)
 2016年にはリオ五輪に出場し、シンクロ高飛び込みで銅メダルを獲得、そして昨年、東京五輪で悲願の金メダルを獲得し、「私はゲイで、金メダリストでもあります、と言えることを信じられないくらい誇りに思います」「若い時は自分が何者かになれるなんて思いませんでした。性的マイノリティが受け入れられると思ってなかったから。金メダリストになった今、『あなたは何にだってなれる』と示すことができました」「私は今この時も孤独を感じているあらゆる若いLGBTQの人たちに、孤独じゃないと伝えたいです」と語りました。
 見事に金メダルに輝いたあとも、こうして積極的にLGBTQの平等や生きづらさの解消のために発言し、得意の編み物も活かして支援団体に寄付したりもしていること、本当に素敵です。五輪金メダリストとしての影響力もある彼のような人物が、こうして同性愛が違法である国々のLGBTQや若い当事者への支援のメッセージを発することの意義は決して小さくありません。世界はそう簡単には変わらないかもしれませんが、少なくとも「変わるかもしれない」という希望が感じられます。今回のコモンウェルスに向けた声明も、そういう意味で重要な機会だったのです。
 
 ちなみにトム・デイリーは3年前、日本政府観光局(JNTO)の英国向けキャンペーンで来日して東北4県を回った際は、日本のLGBTQを支援したいという気持ちで(ラグジュアリーなホテルでの宿泊を断り)福島・裏磐梯でゲイカップルが営む『BANDAI LAKESIDE GUESTHOUSE』に1泊してくださっています(詳細はこちら)。なんと素晴らしい方なのでしょう。夫のダスティン・ランス・ブラック(映画『ミルク』の脚本でアカデミー賞に輝いた脚本家)は日本酒がお好きだそうですので、いつかぜひ、ご家族で日本に来ていただきたいですね(その際は熱烈歓迎しましょう)
 
 
 
参考記事:
飛び込みのトーマス・デイリー選手、LGBTsのアスリートの人権を訴える コモンウェルスゲームズ開幕に向けて声明(ELLE DIGITAL)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a40745105/tom-daley-hits-homophobia-nations-common-wealth-220729/
水泳=五輪王者デイリー、トランスジェンダー方針に「怒り心頭」(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/swim-transgender-idJPKBN2O904B
アミ パリス、東京2020金メダリストのトーマス・デイリー選手とコラボ 限定ニットを発売(FASHIONSNAP)
https://www.fashionsnap.com/article/2022-06-03/amiparis-tomdaley/

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