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米国が「サル痘」で緊急事態宣言を発しました

2022年08月05日

 サル痘の感染が急拡大している事態を受け、米政府は8月4日、公衆衛生上の緊急事態を宣言すると発表しました。米国内の感染者は3日時点で6617名に上っており、ワクチン接種や検査の普及のスピードアップを図るそうです。保健福祉省のベセラ長官は、「サル痘の流行を終息させることはバイデン政権の最優先課題だ。われわれはこのウイルスに対処するため、対応を強化する用意がある。全ての米国人にサル痘を真剣に受け止めるように求める」と述べました。

 
 ホワイトハウスでサル痘対策を指揮するロバート・フェントン調整官は「公衆衛生上の緊急事態宣言によって、ワクチンや治療薬をより迅速に届けるための新たな戦略を検討できる。各自治体からより多くのデータを集めることもできる」と語りました。
 また食品医薬品局(FDA)のロバート・カリフ長官は、ワクチンの追加調達ができるまでの間、接種可能な回数を増やす新たな戦略を検討していることを明らかにしました。現在投与されている1回分の容量を5回に分けて打つもので、現在の皮下注射からより浅いところに打つ皮内注射に変更します。「皮内投与には、ワクチンへの免疫反応がよくなるなど、いくつかの利点がある。この方法で安全性と有効性を犠牲にすることはない。科学的に実現可能なすべての選択肢を探っている」
 そして、国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長(世界的な感染症の権威であり、米国でエイズ禍やコロナ禍の対策に当たってきた方)はロイターに対し、「地域社会の参加は常に成功が立証されてきた」とし、サル痘の発症を抑制するための努力の一環としてゲイコミュニティの代表に防疫に参加してもらうと述べました。ただし、彼らの生き方に汚名を着せることには警戒しなければならないと強調しました。 

 米国では現在、対応にあたる医療従事者や、複数の人と性的接触があったMSMがワクチン接種の対象となっています。
 今週初めには、ホワイトハウスが全国のサル痘対策についての連携・監視室を設置しました。国内でHIV感染予防イニシアチブを成功させたデミトリ・ダスカラキス氏などが参加しているそうです。
 政府は110万回分のワクチン配布を決め、すでに60万回分以上のワクチンを配布したとしていますが、感染が集中するニューヨークやカリフォルニア州などでは予約がいっぱいで供給が追いついていません。ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州はすでに緊急事態宣言を発しています。サンフランシスコなどLGBTQが多く住む都市では、LGBTQコミュニティを守る対策が十分に取られていないと、政治家らが声を上げているといいます。1日に緊急事態宣言を発したサンフランシスコのロンドン・ブリード市長は、「1980年代のエイズ危機を思い起こさせる。当時、市は危機を無視ししていた」「とても怖い状態だ」と語りました。
 
 
 
 日本では5日、東京都在住で米軍横田基地に所属する在日米軍関係者の20代男性がサル痘に感染したことが発表されました。国内の感染確認は3例目です。この方は2019年以降、海外渡航歴はありませんが、発症前に海外から日本を短期訪問中の人と接触していたそうです。
 日本では現在、厚労省がaktaなどのHIV団体の意見を聞きながら薬やワクチンなどを整備している最中です。すでに天然痘ワクチンとして製造・販売が承認されているKMバイオロジクスのワクチンをサル痘に対しても使えるよう承認し、8月1日には感染者との接触リスクが高い医療従事者に曝露前予防※として接種することを承認しました。国立国際医療研究センターにおいて、濃厚接触者に接種する臨床研究が行なわれる体制ができています(接触後4日以内に接種することで発症を予防する効果があります)。ただ、欧米のようにMSMに対して曝露前予防としてのワクチン接種を行なうということにはなっていません…日本でも今後、欧米のような感染爆発が懸念されるのであれば、MSMへのワクチン接種を進めたほうがよいのではないでしょうか。

※曝露(ばくろ)=ウイルスにさらされるという意味です。
 
 ちなみに、ベルギーでは7月29日、これまでの接種対象者(リスクの高い接触をした後に免疫力が低下した人や、非常にリスクの高い接触をした人)に加え、男性およびトランスジェンダーのセックスワーカー、HIV陽性またはPrEP服用中のMSMで過去1年間に少なくとも2回性感染症に罹患したことがある人、免疫異常があり感染する可能性が高い人、ウイルス培養を扱う実験室スタッフも接種対象としたそうです(詳細はこちら
 
 日々、新たな情報がどんどん入ってきているサル痘。最新情報についてまとめたこちらのページもぜひご覧ください。
 
 
参考記事:
米、サル痘で緊急事態宣言 国内で6600人以上感染(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022080500160
米国が「サル痘」で緊急事態宣言 今月に入って急速に感染増加(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ8522RHQ85UHBI007.html
米政府、サル痘で「公衆衛生の緊急事態宣言」を発令(BBC News)
https://www.bbc.com/japanese/62431505
米国、サル痘で緊急事態宣言「政府の最優先課題」(ハンギョレ)
http://japan.hani.co.kr/arti/international/44215.html

サル痘、在日米軍関係の20代が感染 国内3例目 横田基地所属(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220805/k00/00m/040/373000c

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