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キューバで同性婚が実現、カリブ海諸国で初

2022年09月27日

 キューバで9月25日、同性婚やゲイカップルのための代理母出産の承認などを含む家族法改正案の賛否を問う国民投票が行なわれ、過半数が賛成票を投じました。これにより、ようやくキューバで同性婚が実現することになりました。世界で33ヵ国め、カリブ海諸国で初です。(同性婚承認国の一覧はこちら
 
 
 映画『苺とチョコレート』や『夜になるまえに』で描かれていたように、キューバは革命直後から1990年代までゲイが強制労働施設に送られたり投獄されたりという迫害を受けていて、アメリカなどに亡命する人たちが大勢いました。
 2000年に性的マイノリティの権利擁護に熱心なマリエラ・カストロが国立性教育センター長に就任したことをきっかけに、ようやく政府も態度を変え、2010年には、フィデル・カストロ元議長が同性愛者迫害について「重大な不正義だ。当時の責任は自分にある」と認め、世界的なニュースになりました。  
 2018年には、性的指向・性自認に基づく差別の禁止と、同性婚の承認を含む憲法草案が公表され、2019年に国民投票で憲法改正が承認され、同性婚も認められることになったと報じられました。しかし、実際は、結婚を男女間に限定していた旧憲法の条文は撤廃されたものの、同性婚を禁止もしていないし認めてもいないという文言になっていたようで、同性婚が実現したわけではありませんでした(福音派や保守派の反対にあって、ということのようです)。その代わり、マリエラ・カストロは家族法の修正によって同性婚を実現しようと考え、2019年から専門家と協議していました。
 
 BBCによると、婚姻の平等だけでなくゲイカップルが代理母出産で子を授かることも含む家族法改正案を政府が推進し、ディアスカネル大統領は「人々や家族の多様性を反映した新しい家族法に国民の多くが賛成してくれることを期待する」と述べていました。一方、福音派など宗教右派や保守層の人たちは猛烈に反対のキャンペーンを展開していたそうです。フタを開けてみると、約2/3の人々が賛成票を投じ、無事に同性婚が承認されることになりました。
 これにより、キューバは、憲法でLGBTQ差別を禁止し、同性婚(婚姻の平等)や同性カップルの養子縁組を認め、レズビアンカップルの体外受精の権利やゲイカップルのための代理母出産の権利も認め、法的性別変更も認め、MSMの献血も認めるという、日本よりはるかにLGBTQの権利回復(法整備)が進んだ国ということになります。
 
 中南米で同性婚(婚姻の平等)を認めているのはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、コロンビア、エクアドル、コスタリカ、チリ、メキシコ(首都や多くの州で認められていて、そうした地域で結婚すれば、認められていない州でも有効になるため、事実上、同性婚が可能)の8ヵ国で、キューバが9ヵ国め、カリブ海地域13ヵ国のなかでは初となります(プエルトリコのような米自治領や、英仏蘭の領土であったりする地域は除く)
 キューバを除くカリブ海諸国では、いまだに同性間の性行為を違法としている国も多く(バルバドスでは終身刑です)、非常に厳しい状況があります。キューバでの同性婚実現が、こうした近隣の国へも好影響を与えることを期待します。
 
 なお、キューバではマリエラ・カストロが所長を務める国立性教育センターが5月のIDAHOBITと合わせてLGBTQのパレードを主催しており※、年々パレードの参加者も増えているそうです。また、5月を「LGBTQ歴史月間」と定め、たくさんの啓発イベントを開催しています(「LGBTQ歴史月間」は90年代に米国で提唱されましたが、ラテンアメリカでこれを取り入れたのはキューバが初めてだそうです)
 
※2019年には、マリエラ・カストロ所長が諸々の状況に鑑み、開催を中止にしたのですが、コミュニティが独自にパレードを開催しました。が、政府主導ではない非公式のデモであったため、主催者ら3人が逮捕されるという悲劇に見舞われました。
 
 
 
参考記事:
同性婚合法化で国民投票 キューバ(共同通信)
https://nordot.app/946870935233069056?c=302675738515047521
キューバで同性婚合法化へ(共同通信)
https://nordot.app/947124981827616768
Cuba Family Code: Country votes to legalise same-sex marriage(BBC)
https://www.bbc.com/news/world-latin-america-63035426

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