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【同性パートナーシップ証明制度】福井県越前市で4組が宣誓&イベントも開催、そのほか戸田市、座間市、瀬戸内市、那覇市などの動きをお伝えします

2022年10月04日

 福井県越前市で10月1日、「パートナーシップ宣誓制度」が県内の自治体で初めてスタートしました。10月の開庁日初日となる3日、希望する5組のうち4組のカップルに宣誓受領証(パートナーシップ証明書)が交付されました。 

 この日、越前市の鍛冶職人・竹内パンダさんとパートナーの女性・ぁをんさんはレインボーカラーのマスクをつけて市役所を訪れ、受領証の交付を受けました。竹内さんは「二人の関係がやっと目に見える形になり、実感がわいてきた。うれしい。ここからがスタート」と、ぁをんさんは「この制度をきっかけに、性的少数者の人もそうでない人も、好きな人を普通に言えたり、同性愛を当たり前のように感じられたりする世の中になってほしい」と語りました。また、お二人は多くの人の尽力に感謝し、「それに恥じないよう二人で幸せな生活を築きたい」「人は皆同じ。差別や偏見などの壁が無くなって、互いの幸せを喜び合える社会になればいいな」とも語りました。
 いずれも介護士のカップル、英明さんと裕紀さんは、記念に用意したペアリングを左手薬指にはめて受領証を受け取り、「周囲が祝ってくれて婚姻に準ずる関係を実感した。晴れやかな気持ち」と満面の笑みを浮かべました。お二人は同居6年目で、越前市に家を購入し、住んでいるそうです。英明さんは「福井は閉鎖的で、カミングアウトしにくく、10代の時はすごく悩んだ。市役所が認めてくれるのは大きい」と語りました。「顔を出すことは制度導入に尽力してきた人たちへの恩返しと、次に続けばいいなという思いから」とのことでした。
 また、別のカップルのお一人であるまりさんは、「人はみんな同じなので、差別や偏見がなくなって、みんながお互いの幸せを喜べるような社会になってほしい」と語っていました。
 
 こちらのニュースでも詳しくお伝えしましたが、越前市は実は2015年、2016年のレインボーフェスタ!(関西レインボーパレード)にブース出展したり、2018年には同性パートナーを持つ職員に慶弔休暇を認める&職員の共済会が結婚祝い金等の支給対象とするという規則改正を行ない、2019年には広報誌でLGBTQを特集したり啓発パネル展示を実施し、また、昨年の人権週間には市役所の大階段をレインボーカラーにデコレーションするなど、北陸のなかでは最も早くから熱心にLGBTQ支援の取組みを進めてきた自治体です。
 そうして福井県内では最も早く「パートナーシップ宣誓制度」導入を実現しました。
 パートナーシップ宣誓を行なったお二人は、これまで親族間に限られていた、市営住宅の入居、税関係の証明書の委任状なしでの取得、罹災証明書申請、犯罪被害者遺族の見舞金給付といった4つの行政サービスを受けられます。

 制度導入を記念し、越前市は、2度目の「にじいろ階段」(庁舎内の大階段をレインボーカラーに彩色)を実施しました。今回は1段ずつ色を変え、30色のグラデーションにしたそうです。また、庁舎内の市生涯学習センター1階ロビーでは、制度に関する資料や県内の当事者の声を紹介する啓発展示が行なわれるとともに、越前和紙で作った花などで装飾したフォトスポットも設けられました。

 また、市役所庁舎前ひろばでは、LGBTQ支援団体「なろっさ!ALLYえちぜん」が主催し、制度スタートを祝う写真撮影イベント「にじいろ写真撮影会」が開催されました。同団体メンバーでもある仁愛大の織田暁子准教授によると「大勢で写真を撮ることを通じて賛同する意志を示す機会」とのことです。
 当日は、写真撮影に先立ち、制度導入に関わったさまざまな立場の方がメッセージを送りました。宣誓書受領証及び受領カードのデザインに取り組んだ仁愛大吉村ゼミの学生も一言メッセージを送りました。それからプロカメラマンが参加者全員の集合写真を撮影し、展示やSNSで公開されたほか、個別撮影希望者にも対応、トークセッションでは市の取組みを聞くなどしました。ユーチューバーのかずえちゃんのALLY百人動画撮影会も行なわれました。
 
 毎日新聞の調査では、越前市を除く福井県内の16市町のうち、あわら市が来年度中の制度導入を目指し準備を進めているほか、勝山、坂井、鯖江の3市も「導入を前向きに検討している」と回答しており、今後県内で制度導入が進みそうです。

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 埼玉県戸田市では、性的マイノリティの困難や生きづらさの軽減を図り、性の多様性に対する社会的理解を促進していくため、「戸田市パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度」を10月11日から導入します。ファミリーシップ制度はお子さんなどパートナーの近親者を家族として登録できるものです。
 届出受理証明書を受け取ると、市営住宅への入居申込みのほか、記念樹の配布も受けられるそうです(素敵ですね)
 
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 神奈川県座間市も、「一人一人が互いに人権を尊重し、差別や偏見のない、多様な生き方を選択できる社会づくりを目指して」10月1日から「市パートナーシップ宣誓制度」を開始しました。「この制度は、法律上の婚姻とは異なり、法的な効力が生じるものではありませんが、宣誓される2人が自分らしく生き生きと生活できるように、2人の思いを尊重し、応援するものです」とのことです。

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 岡山県瀬戸内市でも「パートナーシップ宣誓制度」がスタートしました。制度に法的な効力はありませんが、カードが交付されることで二人の間柄が確認でき、市立の病院での病状説明や入院・手術の同意について家族同様に扱われるほか、市営住宅への同居など行政サービスの手続きがスムーズに進むメリットがあります。
 岡山県内では、岡山市、倉敷市、総社市、笠岡市、備前市、真庭市がすでに制度を導入していて、瀬戸内市が7例目となります。ファミリーシップ制度も総社市、笠岡市、瀬戸内市で導入されました。岡山放送の番組に出演した「ももにじ岡山」共同代表の市川明美さんによると、「パートナーシップ宣誓制度」を実際に利用しているカップルは「2022年3月31日時点で、岡山市14組、倉敷市8組、総社市3組、真庭市2組。今はもっと増えているかもしれません」とのことです。「パートナーシップ制度は、法的に効力があるものではありません。例えば相続や、自分が亡くなった時の遺族年金は相手に残すことができません。出来れば同性間の婚姻制度、または事実婚でも婚姻制度みたいなものを認めていただきたいと思っています。2022年3月時点で、全国211の自治体にパートナーシップ制度が出来ていますが、もう一歩踏み込んで、婚姻制度を同性間にも認めてもらいたいと思っています」
 ももにじ岡山は10月16日(日)、昨年に続き2回目となるプライドパレード「岡山レインボーフェスタ」を開催します。また、前日の15日(土)には倉敷市で、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告である田中昭全さん&川田有希さん、山縣真矢さんらが登壇し、『「結婚の自由をすべての人に」訴訟~同性婚のゆくえ~』と題するトークイベントも開催されます。

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 沖縄県那覇市では、2016年から「パートナーシップ宣誓制度」を導入していますが、この10月から、同制度を拡充し、それぞれの3親等以内の子や親などの高齢者も家族と見なす「ファミリーシップ制度」も導入しました。県内初で、未成年者だけでなく高齢者も家族と見なす仕組みは全国的にも珍しいです(パートナーの親御さんやおじいさん・おばあさんなどの介護や通院などで、関係性を追及される場面もあると思いますので、家族として承認してくれるのはとてもありがたいですよね)
 制度を利用し、登録を行なうと、市営住宅の入居資格を得られ、国民健康保険疾病手当の給付といった行政サービスを受けられるようになり、認定こども園・保育園に通う子どもの送迎が認められ、子どもが病気になった際に病院から説明を受けることができるようにもなると期待されています。また、市が発行する市民税納付証明書などを委任状なしで受け取ることもできる。
 城間市長は「多様な家族のあり方に理解が進んでほしい」と述べ、市として多様性を尊重する社会づくりに更に取り組む考えを示しました。
 那覇市の担当者は「制度はあっても、人々への周知と理解がなければ使用できる場面は限られてしまう。周知に引き続き取り組みたい」と語りました。
 なお、同制度についてピンクドット沖縄(高倉直久代表理事)は9月30日、「全国的に見ても先進的だ。市が多様な生き方を選択する市民に前向きに関わっていくという意思を感じる」との声明を発しました。そのうえで「当事者が抱える問題を本当の意味で解決するゴールはまだ先にある。活動を重ねていこう」とも述べました。

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 それから、北海道帯広市は、「性的指向や性自認に伴う差別や偏見の解消、日常生活の困難や生きづらさの軽減をはかり、性のあり方に関わらず、誰もが個人として尊重され、住んでいて良かったと思える地域社会の実現を目指す」ため、12月1日から「帯広市パートナーシップ制度」を導入する予定ですが、このたび、市の公式サイトに制度についての詳細、手引き、要綱などを掲載し、周知を始めました。帯広市の制度は、証明制度(パートナー間に公正証書等の契約書がある場合、パートナーシップ公正証書等確認証明書を交付)と登録制度(公正証書等の契約書がない場合、パートナーシップ登録証を交付)の2種類あるのが特徴です。同市で制度の利用を検討されているみなさんはぜひ、ご覧ください。

 同じ北海道の苫小牧市では、「多様な性の在り方が尊重され、誰もが安心して自分らしく暮らすことができる苫小牧市を実現するため」、来年1月から「パートナーシップ制度」を導入する予定ですが、このたび、制度の素案が示され、パブリックコメントの募集が始まりました(詳細はこちら)。同市にお住まいのみなさんはぜひ、ご覧ください。

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 盛岡市がついに制度導入へとのニュースでお伝えしたように、岩手県では、盛岡市と一関市が制度導入の準備を進めていますが、このたび、新たに宮古、二戸、紫波、大槌の4市町が導入する方向で検討していることがわかりました。
 これは岩手日報社が県内の33市町村に取材して明らかになったもので、「導入する方向で検討」は4市町、残る27市町村が「未定」などとしました。制度自体は24市町村が「必要」との認識だそうで、多様な性を尊重する動きが県内でも広がり始めている様子がうかがえます。
 
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 そして、11月1日から始まる東京都の「パートナーシップ宣誓制度」について、発行される証明書がパートナーの救急搬送先の確認に活用できるようになると報じられました。東京消防庁と連携し、救急搬送された際に証明書を提示すれば、家族として搬送先に関する情報提供を受けられるようになるそうです。
 ほかにも、都営住宅の入居、都立霊園への納骨などで家族関係を証明できる、足の不自由な人が移動する際に使う自動車税の減免などを近隣に住むパートナーが受ける際にも利用できるなど、都は制度の導入によって新たに18の行政サービスについて証明書を活用すると発表しました。
 小池百合子知事は9月28日の都議会代表質問で、「1社でも多くの民間事業者に証明書を活用してもらうために経済団体などと連携して広く呼びかけていく」と答弁しました。

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 最後に、「パートナーシップ宣誓制度」のことにも触れられているHTB(北海道テレビ放送)の「さっぽろレインボープライド」レポートをご紹介します。
 イベントの様子が生き生きと映し出されている素敵なレポートで、こちらのニュースでもご紹介した「レインボーはこだてプロジェクト」の及川さんが「函館でもパートナーシップ制度ができたばかりで、まだまだ発展途上だがすこしずつ前進してるのかな」と語り、さっぽろレインボープライドの柳谷由美委員は「もっとたくさんの地域に当事者はいるので、北海道全体でもパートナーシップ制度が導入されるようになればいい」と語る様子なども映っています。
 ぜひご覧ください。


参考記事:
越前市でパートナーシップ制度受け付け開始 4組が届け出(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/lnews/k/fukui/20221003/3050012641.html
パートナーシップ制度 形に残るもの「うれしい」 福井県初、越前市で4組に受領証(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221004/ddl/k18/010/230000c
パートナー制 4組宣誓(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/fukui/news/20221003-OYTNT50090/
初日3組宣誓書に喜び 「同じ悩み抱える人、暮らしやすい世の中に」 越前市パートナー制度(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/amp/article/556979
越前市パートナーシップ宣誓制度導入記念イベントに参加しました!(仁愛大学)
https://www.jindai.ac.jp/department/human/communication/sdgs/004564.html

戸田市パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度を令和4年10月11日から導入します(財経新聞)
https://www.zaikei.co.jp/releases/1812611/

座間市がパートナーシップ制度 近隣参考に開始(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-941254.html

LGBTQカップルの支援制度進む…瀬戸内市の導入で県内7自治体に 残された課題も【岡山】(岡山放送)
https://www.ohk.co.jp/data/20842/pages/

パートナーシップ制度を拡充「ファミリーシップ制度」(沖縄テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/423775
性的少数者の子も家族 那覇市が「ファミリーシップ制度」 行政サービス利用拡充へ(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1032521
那覇市がパートナーシップを拡充 同性カップルの子、高齢者も「家族」に(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1591821.html
那覇のパートナーシップ制度「先進的」 ピンクドット沖縄(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221005/rky/00m/040/020000c

「発展途上だが少しずつ前進」 差別や偏見のない社会実現を目指して 札幌でイベント(HTB)
https://www.htb.co.jp/news/archives_17525.html

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