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アンチLGBT法が下院を通過し、いよいよ厳しい弾圧が始まると見られるロシアで、ドラァグクイーンたちが最後かもしれないショーを繰り広げました

2022年11月28日

 LGBTに関する“プロパガンダ(宣伝)”やデモなどを厳しく禁じる法が成立しようとしているロシアで、ドラァグクイーンのみなさんが合法に開催できるものとしては最後かもしれないショーを繰り広げたことが報じられました。
 
 
 ロシアでは2013年、子どもたちの間に“非伝統的な性的関係”に関する流布を行なうことを禁止する「同性愛プロパガンダ禁止法(反同性愛)」が承認され、(2014年のソチ五輪の開会式を欧米主要国の首脳がボイコットするなど)国際社会の非難を浴びました。
 これをさらに厳しくした法案が11月24日、国会(下院)で全会一致で可決されました。マスメディアや広告で同性間の関係を肯定的に描写することをポルノの配布や暴力の促進、人種・民族・宗教的緊張の扇動と同列視し、LGBTを肯定的に表現した広告や書籍、映画が禁止されます(LGBTの登場するゲームも規制されそうです)。先月10月のロイター通信の報道によると、すでにTikTokはLGBTをテーマにした動画を宣伝したとして現行法に基づき300万ルーブル(約700万円)の罰金を科されているそうです。またBBCの報道によると、ロシアのメディア規制当局は国内の出版社に“LGBTプロパガンダ”を含むすべての書籍の販売中止を検討するよう求めていて、出版社は検閲を懸念しているほか、ロシア文学の古典すら対象となるのではないかと怯えているそうです。また、LGBTに関するオンライン上の議論もブロックされる可能性があり、レインボーカラーなどのシンボルが描かれた商品の販売も禁止されます。違反者には最大40万ルーブル(約92万円)、企業の場合は最大500万ルーブル(約1150万円)の罰金を支払うよう命じられる可能性があり、外国人や無国籍者は同法に従わない場合、収監あるいはロシアから追放される恐れがあります。法案が成立するためには上院での可決とプーチン大統領の承認が必要となりますが、これらは形式的な手続きであり、成立するのは時間の問題です。
 人権活動家やLGBT団体は、規制の拡大はLGBTコミュニティのあらゆる行為や公の発言が犯罪行為とされることを意味すると指摘しています。LGBT支援団体「Vykhod」のクセニア・ミハイロワ氏は、LGBTへの攻撃の「津波」が起こるだろうと語っています(2019年にはエレーナ・グリゴリエワさんというLGBTQ活動家が殺害されています)
 議会は間もなく、罰則を2年の懲役刑に引き上げる修正案も可決する見通しだとも伝えられています。 
 

 ロシアでは、近く成立する見込みの新法によって、ドラァグクイーンのショーすらも禁止され、出演者は罰金を科されたり投獄されたりする可能性があるとみられています。そんななか、ドラァグクイーンたちが、合法に開催できるものとしては最後となるかもしれないショーを行なった様子がAFPで報じられました。
 モスクワにあるバーで開催されている「ドラァグレスク・ブランチ」に出演するクイーンたちは円陣を組み、司会者のマーゴ・メイ・ハントさんは「会場にはもう、ミモザが川のように流れている。だからみんな、今日の素晴らしいブランチを楽しみましょう!」と激励しました。 
 スキニー・ジェニーさんは「今のところ、この法律がどんな影響を及ぼすかはわからない。弁護士には相談したけれど、考えないようにしている」と語りました。「私たちのショーはプロパガンダとは何の関係もない。私たちは創造性を促し、海外だけでなくここロシアで何世紀にもわたって存在してきたドラァグというアートを称えている」「私たちはまだ生きていて、人々に幸せを届けている」
 メイ・ハントさんは、笑い声と音楽に包まれた部屋を指さしながら「これが本当に、(権力者たちが言うような)今ロシアが持つ最大の問題なの?」と問いかけました。「最善を望んでいるが、最悪の事態も覚悟している」といいます。もしドラァグが禁止されるようなことになった場合は「地下に潜って、さらに伝説的な存在になればいい!」と語ったそうです(その健気さに胸が打たれます…)

 ドラァグクイーンは、こちらでも紹介したように、歴史的に、最も社会から差別や迫害を受けやすい存在であるとともに、最も先鋭的に権力と闘ってきたPRIDEの象徴でした。
 ロシアのクイーンのみなさんも、PRIDEを胸に、迫害にもめげず、たくましく生き抜くのでしょう(本当に危険な状況になったら、欧州など安全な場所に逃げてください、とも思います。どうかご無事で…)
  
 
 下院のビャチェスラフ・ウォロジン議長は、メッセージアプリのテレグラムで「非伝統的な性的関係に関するいかなるプロパガンダも、何らかの結果を伴うだろう」と警告し、この法が「欧米諸国が広める邪悪から、われわれの子どもたちや国の将来を守ることになる」と述べています。また、国家院(日本の衆議院に当たる議会)の公式サイトでは「子どもたちや普通の生活をしたい人たちを守るために全力を尽くさなければならない。それ以外は罪であり、ソドミーであり、闇であり、我が国はそれと戦っている」と述べているそうです。
 プーチン大統領は反同性愛の論調を政治課題の要としています。最近の演説では、欧州でゲイやトランスジェンダーの権利が推進されていることを例に挙げ、西側が「公然たる悪魔主義に向かっている」と非難しています。チェチェンのゲイ迫害に手を貸しているだけでなく、プーチン自身も(『チェチェンへようこそ』のデヴィッド・フランス監督が述べているように)LGBTQ弾圧を自身の権力を強固なものとするために利用し、クィア・パニック(ウクライナのクィア化がロシアにとって脅威となるという宣伝)を軍事行動を正当化するプロパガンダとして利用してきました。
 ロシアのウクライナ侵略や戦争犯罪は擁護の余地もありませんが、プーチン政権の専制国家的な(ファシズム的な)非道が国内ではLGBTQの弾圧というイデオロギー操作によって正当化されてきた、LGBTQがスケープゴートにされてきたということには十分注意が必要です(ハンガリーやポーランド、トルコなども同様の道を辿っています)。権威主義的な政権がLGBTQを抑圧すればするほど人々の間に分断が生まれ、政権の維持に好都合となるという話、それって、今の日本でも起こっていることでは…という視点で昨今のトランスジェンダー・バッシングを捉え直すと、見えてくるものがあるのではないでしょうか(統一教会や神政連の問題だけでなく)
 
 

参考記事:
LGBTの宣伝禁止法可決 ロシア下院(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2508N0V21C22A1000000/
ロシア下院、「同性愛宣伝禁止法」改正案を可決 映画や書籍も規制対象(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/63751986
性的少数者の「プロパガンダ」禁止法案を可決 ロシア下院(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3440386

ロシア下院議員が「LGBTを宣伝するゲーム」をリストアップ。『Fallout』や『Apex Legends』など有名ゲーム多数を危険視(AUTOMATON)
https://automaton-media.com/articles/newsjp/20221115-226706/

迫る反LGBT法に「最悪を覚悟」 今を生きるロシアのドラァグクイーン(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3440178

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