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『チェチェンへようこそ』の監督が語る、ウクライナのLGBTQの未来

2022年03月21日

 世界がロシアの侵略を恐怖をもって注視しつづけているときに、一つの問いが西洋のLGBTQ活動家の脳裏に浮かび続けています。それは「(ウクライナの)LGBTQはどうなるのか?」ということです。プーチンは長年、ロシアのLGBTQコミュニティを抑圧し続けてきました。公然の侮辱や投獄から暴徒の扇動まで…。ゲイのドキュメンタリー作家、デヴィッド・フランスは『チェチェンへようこそ』において、共和国とは名ばかりのロシアのチェチェンにおけるLGBTQ弾圧をつまびらかにしました。ウクライナもチェチェンと同じ運命をたどるのでしょうか…? このような観点から、米国のLGBTQメディア『QUEERTY』は3月21日、デヴィッド・フランス監督へのインタビューを公開しました。監督はプーチンのLGBTQへの全面的な宣戦布告のことだけでなく、同じ抑圧の力が米国にもはたらいていること、民主主義を守ることがLGBTQの未来の唯一の希望であるということについても語りました。
 偶然というか奇跡的に、ロシアの軍事侵攻が始まったのとほぼ同時に公開が始まった『チェチェンへようこそ』。映画をご覧になり、ロシア国内で起こっているナチスばりの迫害に衝撃を受けた方も少なくないと思います。その監督が、ウクライナのLGBTQについて何を語るのかは、注目に値すると思いました。そこで、『QUEERTY』のデヴィッド・フランス監督へのインタビュー記事(ほぼ全文)を日本語に訳してご紹介します(訳が間違っている部分もあるかもしれません…ご指摘いただければ幸いです)
 
――あなたはウクライナのレインボーレイルロード(LGBTQを安全な国に密かに脱出させる地下レジスタンス)と連絡をとっていますか?
 
 『チェチェンへようこそ』にも登場したデヴィッドと話したばかりだ。彼はコーカサス地方での救出に携わっている。彼はロシアのウクライナへの軍事侵攻(侵略)によってロシアのLGBTQに何が起きているか、話したがっていた。

――現地の状況はどんな感じですか?
 
 絶望的だ。私の知る人々からこのような類の恐怖を聞いたことがない。ロシアのLGBTQ運動は完全に、国外からのリーダーシップとなっている。

――全員、国外に脱出したということですか?

 その通り。この軍事侵攻だけが理由ではない。ここ数ヵ月に起きた取締まりのせいだ。プーチン政権はLGBTQのリーダーが活動することを不可能にした、彼らの財政源を握りつぶしたんだ。今や国境は閉ざされ、国に活動資金を流入させることは不可能だ。国外の人々はなんとか国境で現金を手渡そうとしているのだが…
 
――それは別の意味で危険ですね

 そうだ。もし米国のドルを持ち込めば、ルーブルに換金できるか? そしてもしそれがルーブルなら、ほとんど価値を持たない。

――解決法はありますか?

 別の問題がある。多くの国は、ワクチン証明がなければ入国できない、しかし、ロシアのスプートニクVを接種した人は証明できない。評価データが作られていないからだ。したがって欧州には入国できない。

――プーチンのLGBTQ弾圧は今に始まったことではありません。それは個人的な思惑でしょうか?

 LGBTQへの弾圧はプーチンにとって都合よくはたらく戦略なんだ。10年か15年前、彼はLGBTQに反対する発言をすればするほど人々の間に分断が生まれ、政権に矛先を向けなくなるとわかり、味をしめたのだ。
 
――プーチンはウクライナに新しい政権を樹立させたいと言っています。もし彼がチェチェンのラムザン・カディロフのようなリーダーを据えるということになったら…
 
 プーチンは何十年も、もしウクライナがNATOに加盟したら結婚の平等を承認しなくてはならないだろうと主張し、ウクライナのアンチ・クィア政策を利用してきた。それはいくつかの面で功を奏した。ロシア正教会がウクライナの「ゲイ化計画」に対抗するためにウクライナ侵攻を支持することを表明したのもそうだ。

――実際的なところ、どう見ますか。プーチンはLGBTQに対する世界戦争をしていると?

 全くもって正解だ。彼は現代性とリベラリズムはクィアネスと同じだと主張している。彼はクィア運動に再び抵抗するために「鉄のカーテン」を引いたのだ。これが核心だ。

――西側のメディアはウクライナ侵攻はロシアでは不人気だと報じていますが…
 
 ロシアの友人に聞いたところだと、それは反対だ。例えば彼らの周囲の友人や家族は、侵攻が起こっていると思っていない。

――戦争は現実じゃないと思ってる?

 そうだ。彼らは西側やソーシャルメディアにアクセスできない。クレムリンはウクライナについての報道を犯罪化した。人々は、彼らの子どもたちが遺体袋に入って帰還するまでは戦争状態にあると信じる理由がないんだ。
 
――まるでスターリンのプレイブックから抜け出てきたような話ですね

 それが「鉄のカーテン」と述べた意味だ。コミュニケーションが不能なのだ。たくさんのロシアの若者が欧州を旅して回って素晴らしい体験をして、世界のカルチャーになじんできた。彼らはあちこちで小さな抵抗を試みている。しかし、何万人もが逮捕された。人々は戦争が起こっていると言うことすらあきらめかけているんだ。
  
――こういう質問をさせてください。専制的なリーダーとホモフォビアの間には関連があるように思われますが、なぜでしょう?

 プーチンがその権力をLGBTQコミュニティへの抑圧に使い、うまくいったから、他のリーダーもそれを真似るようになった。ハンガリーのビクトル・オルバーンも同じことをやった。ポーランドでもそうだ。ベラルーシでもこのキャンペーンが成功している。トランプもそれができることを発見した。

――おっしゃる通りです

 これは本当にショックなことだ。50年かけてLGBTQの公民権の達成を見てきた、これが永久不滅の勝利だと思ってきた我々も、揺り戻しがありうることを認めなければならない。バージニア州知事選で何が起きたのか見なくてはならない。
 
――フロリダで。テキサスでも

 そしてウクライナで。ロシアの多くのLGBTQが国外脱出を余儀なくされた。LGBTQコミュニティは拠点を持っていたのに、今やそれがリスクになっている。プーチン権は侵略後に政敵を一掃するための「kill list」を作っているが、そこにはLGBTQのリーダーも含まれている。彼らは、殺害リストをチェチェンのエリート軍人に与えた。そして男性はウクライナから外に出られない。彼らは恐怖に苛まれている。
 今起こっていることは、人々を震え上がらせている。プーチンならとことんやるだろうか? キーウを倒すだろうか? オデッサは? 核爆弾を落とすだろうか?

――もしプーチンが核を使ったら、本当に憂慮すべき事態です
 
 そうだ。だからみんながウクライナの抵抗を賛美している。しかし、プーチンの「出口」について言うならば、彼は全てを投げ出す以外に選択肢がないと感じているだろう。しかし、もしウクライナへの侵攻を許してしまえば、残りの東欧諸国はどうなる?
 
――私たちにできることがあるでしょうか?

 プーチンの軍事行動を正当化する主要なプロパガンダの一つとして、クィア・パニック(ウクライナのクィア化がロシアにとって脅威となるという主張)がいかに武器になるかということを話し広げる必要がある。そしてレインボーレイルロードをサポートし続けよう。彼らは問題を解決しているだけでなく、フライトのパイプラインも開拓し、命を救っている。本当に重要な仕事をしている。
 
――最後に。LGBTQの平等の未来はどれくらい民主主義と結び付けられているでしょうか?
 
 民主主義がしっかり機能している国で我々のムーブメントが成功していることは明らかだ。100%真実だ。ウクライナでの民主主義の破壊は、クィアにとって有害以外の何ものでもない。

出典:
How Russia’s war on Ukraine is a war on LGBTQ people(QUEERTY)
https://www.queerty.com/russias-war-ukraine-war-lgbtq-people-20220321
 


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