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【同性パートナーシップ証明制度】福島県で初めて富岡町が導入へ、そのほか岩手県一関市、千葉県木更津市、愛知県小牧市、愛媛県大洲市など

2022年12月15日

 福島県富岡町は14日、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を来年度にも導入する方針を明らかにしました。同日開会した12月定例町議会で山本育男町長が一般質問に答え、「来年度、取り入れるべく検討していく」と答弁したものです。福島県内の自治体では初めてとなります。
 富岡町は、町男女共同参画推進条例を制定し、性差なく誰もが輝ける社会の実現を目指していますが、その理念をさらに深め、互いの人権を尊重し多様な生き方を認める社会の実現を目指します。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を進める被災地として、交流人口や関係人口を増加させ、将来的に移住、定住につなげたいとの考えもあります。
 町は、年度内にも町民や有識者らで構成する「男女共同参画審議会」をつくり、他県の取り組みを参考にしながら内容を検討します。町民への理解の促進も進めていく方針です。 
 山本町長は答弁で「全ての町民が互いの人権を尊重し、多様な生き方やライフスタイルを認め合うのが基本。一人一人が幸せを実感できる町を実現していく」と強調しました。

 福島県ホームページの県民提案コーナーには今年1月、県中部にお住まいの30代の方が出した切実な要望が公開されています。自身とパートナーがトランスジェンダーで「7年間一緒に暮らしているが、家族として扱ってもらえない不自由さを感じる。社会的にもっと同等の権利を受けていいのでは」と訴え、婚姻が認められない、パートナーの入院に立ち会えない、生命保険の受け取りができないといった具体例を挙げ、「導入されないなら引っ越しも考えます」と記されています。しかし、県男女共生課は「他県の導入状況や市町村の意向を情報収集する」と回答するにとどまり、現在も方針は変わっていません。
 県男女共同参画審議会の元委員で、福島大の前川直哉准教授(ジェンダー論)は、「過去の審議会では、原発事故による差別や分断を経験した福島だからこそ、多様な背景の人を大切にしようという議論があった。富岡町が県内都市部に先駆け導入に動いたのは英断だ。最終的には国が動くべきだが、59市町村を抱える福島県はすぐに制度導入に着手してほしい」と求めました。

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 北海道北斗市が「市パートナーシップ宣誓制度」を来年4月に導入する方針を固めました。渡島、檜山管内(道南)では函館市に次いで2例目となります。
 制度を利用できるのは片方または双方が性的マイノリティのカップルで、成年に達し、市内在住か転入予定の方です。市長が「宣誓書受領証」と「受領証カード」を交付します。
 市は、来年1月中旬から1ヵ月間、パブリックコメント(意見公募)を実施する予定です。
 市の種田宏市民部長は、「市民一人一人が互いに認め合う社会になる一助になれば」と話しています。

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 岩手県一関市が12月23日に「いちのせきパートナーシップ宣誓制度」を導入する方向であることがわかりました。制度の導入は県内で初めてです。
 こちらの記事では運用開始は来年4月と報じられていましたが、年内の導入を目指して検討を重ねてきた市は、12月23日に導入し、申請の受付を始めることにしたものです。市が承認したカップルは、市営住宅に家族として同居できるようになるほか、税務証明の手続きも簡略化されます。
 岩手県では、盛岡市も来年5月までに制度を導入する方針です。こちらの記事でお伝えしたように、宮古市、二戸市、紫波町、大槌町の4市町も導入する方向で検討中です。

 なお、岩手県でも制度導入に向けた検討の動きがあります。
 達増知事は5日、県議会で制度導入について問われた、一般質問に対し、「市町村との連携を重視した『岩手モデル』のようなものを検討していきたい」と述べています。県環境生活部の福田部長は「県として指針のようなものを策定することで、二重行政に陥ることなく、市町村の制度導入や相互利用を後押しできないかと考えている」と回答、パートナー認定要件などに関する県内共通の指針策定に向け、検討を進めていることを明かしました。
 
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 千葉県木更津市では、来年4月1日の導入に向けて、「木更津市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度(素案)」についての意見公募(パブリックコメント)を始めました。「この制度は、性別等にかかわらず、誰もが自分らしく安心して暮らせる共生社会を実現することを目指すことを目的としています。また、互いを人生のパートナーとする二者のパートナーシップの宣誓及び子や親等を家族として宣誓したことを市が証明するものです」とのことです。1月13日まで意見を募集しています。

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 東京都杉並区でも「(仮称)杉並区パートナーシップ制度(骨子案)」についての意見公募(パブリックコメント)が始まっています。1月4日まで意見を受け付けています。今月18日(日)と22日(木)には区民に向けた説明会もあるそうです。

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 長野県駒ケ根市は5日、今年4月に導入した「パートナーシップ宣誓制度」の第1号のカップルに宣誓書受領証などを交付しました。宣誓したのはいずれも40代の男性カップルで、同日、市役所を訪れて宣誓書を提出し、伊藤祐三市長から受領証を受け取りました。お二人は「将来の生活を考えて申請した」「(宣誓して)気持ちが引き締まった。婚姻届けを提出したらこんな感覚になるのだろうか」などと語ったそうです。
 伊藤市長は「勇気ある届け出だったと思う。後に続く方々に道を開いていただいた。多様性ある社会の実現に向けて共に取り組んでいきたい」とお二人の決断を歓迎しました。

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 愛知県小牧市では、来年2月1日から「小牧市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を開始します。
「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度は、互いを人生のパートナーとし、日常生活において協力し合うことを約束した性的マイノリティのお二人が、パートナーシップにあることを市に宣誓し、宣誓したことを市が証明する制度です。また、お二人に未成年のお子様がいらっしゃる場合は、併せてファミリーシップを宣誓することができます。
 この制度は、婚姻制度とは異なり、法律上の効力(相続、税金の控除等)が生じるものではありませんが、周囲の方の理解が得られないことによる悩みや生きづらさを少しでも軽減し、お二人の自分らしい生き方に寄り添うことを目的としています」
 
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 今年6月に制度導入の意向を示していた愛媛県大洲市は、来年4月からの導入を目指し、意見公募(パブリックコメント)を実施することにしたそうです。来週から市の公式サイトに掲載される模様です。
 市は13日、議会に対し、来年4月からの導入を目指す同性パートナーシップ証明制度について説明、宣誓書を市に提出して認められた同性カップルについて、市営住宅への入居などの公的サービスが受けられるようにするとのことです。
 導入されると愛媛県内では初となります。

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 札幌市は15日、市火葬場・墓地のあり方推進協議会の部会で、市営の合同納骨塚(通称・合葬墓)の利用条件を見直し、「パートナーシップ宣誓制度」の宣誓証の交付を受けている市民もパートナーの遺骨を納められるようにする方針を示しました。
 現在利用できるのは、親族(6親等以内の血族または3親等以内の姻族)の遺骨の納骨を希望する市民に限られていますが、市はこの条件を見直すことにしたものです。
 市は2026年度をめどに新しい利用条件を適用する予定です。
 市保健所生活環境課は「多様な家族形態に対応したい」としています。
 
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 北海道北見市では「ファミリーシップ制度」の検討がなされるようです。
 12月9日の市議会本会議で、小野卓也市議(市民・連合クラブ)が、今年4月から導入されている「パートナーシップ宣誓制度」について、カップルと一緒に暮らす子どもの家族関係を証明する「ファミリーシップ制度」への拡充を問う質問を行ない、岡田和広市民環境部長が「庁内の検討部会で検討していきたい」と答弁したものです。

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 さいたま市は先月、「パートナーシップ宣誓制度」を拡充し、一緒に暮らす子どもも家族と認める「ファミリーシップ制度」を導入しましたが、毎年子どもの意思確認を求めていることに当事者などから「差別的だ」という声が上がり、13日、当事者などと市の担当者が意見を交わしました。
 意見交換会に臨んだ同性カップルは、「子どもに『自分の家族は普通ではない』と、嫌な気持ちを与えるものだ。このままでは利用されないのではないか」などと述べ、制度の改善を求めました。
 これに対し市の担当者は、「子どもの人権に配慮するため里親制度も参考に設けた。年に1回、家族について話し合って関係を深めてほしい」などと説明しました。
 同性カップルの一人は、「私たちの願いは1年に1回の意思確認という制度を変えることだったが、その検討がされないのは残念だ」と語りました。
 さいたま市人権政策・男女共同参画課の新藤達也課長は、「一定期間、制度を運営し、当事者の話を聞くことを積み重ねたうえで、利用者に寄り添える制度にしていきたい」と話しました。
 性的マイノリティの問題に詳しい早稲田大学法学学術院の棚村政行教授は、当事者から不満の声が上がっていることのほか、さいたま市が子どもの人権に配慮したとしているのも理解できるとしたうえで、「制度は全国的に広がりつつあるが内容はさまざまで、自治体ごとに対応するのには限界がある。子どもにとっても当事者にとっても利益になる仕組みを国や都道府県が検討していく必要がある」と述べ、新しい家族のあり方をどう位置づけるのか、議論を深めていくことが重要だとしています。
 
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 石川県は、金沢市と白山市、野々市市の「パートナーシップ宣誓制度」を利用して宣誓受領書(パートナーシップ証明書)を交付されたカップルが県営住宅に入居できるよう、関連の規定を変更する方針です。
 すでにそれぞれの市は、市営住宅への入居を認めていて、今後は、市内にある県営住宅にも入ることができるようになります。
また県は、宣誓したカップルの一方が県立病院で手術などを受けた際、そのパートナーが家族として病状の説明を受けたり面会ができたりできるよう対応することも検討しています。
 県は「パートナーシップ制度を導入する自治体と足並みをそろえ、すみやかにサービスを進めていきたい」としています。

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 沖縄県那覇市は、10月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」に拡充しましたが、これを受けて、琉球銀行は、市の「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の登録証明書を教育ローンや住宅ローンの融資の際の親子関係確認資料として追加する対応を行ないました。今後、他の市町村で同様の制度が開始された際には、随時追加する予定だそうです。

 

参考記事:
パートナーシップ制度やファミリーシップ制度を検討 福島県富岡町 性的少数者カップルの関係証明(福島民報)
https://www.minpo.jp/news/moredetail/20221215103259
「パートナーシップ制度」23年度導入へ 富岡町、福島県内で初(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20221215-746673.php
富岡町・パートナーシップ制度 南東北で初、導入検討(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221216/ddl/k07/040/071000c

北斗市がパートナー制度 道南2例目、23年4月施行へ(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/775670

パートナーシップ制度 県内初 一関市が23日開始へ【岩手】(岩手朝日テレビ)
https://www.iat.co.jp/movie/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%80%80%E7%9C%8C%E5%86%85%E5%88%9D%E3%80%80%E4%B8%80%E9%96%A2%E5%B8%82%E3%81%8C%EF%BC%92%EF%BC%93%E6%97%A5/

パートナー制「岩手モデル」 県指針策定へ 認定要件など検討(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20221205-OYTNT50203/

駒ケ根市のパートナーシップ制度 受領証初交付(長野日報)
http://www.nagano-np.co.jp/articles/102403
パートナーシップ宣誓制度導入の駒ケ根市で第1号(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022120600119
男性カップルが第1号に 駒ケ根市パートナーシップ宣誓制度(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/596440

愛媛県内初「パートナーシップ制度」導入へ 大洲市が市民の意見募集(あいテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/231552?display=1
大洲市、パートナーシップ制度23年4月導入へ意見公募(愛媛新聞)
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202212130157

合葬墓、パートナーも利用可 札幌市見直し案 事実婚、元市民にも対応(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/775748

ファミリーシップ制検討へ 北見市議会一般質問(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/772779

さいたま市「ファミリーシップ制度」子どもの意思確認で議論(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saitama/20221213/1100015700.html

「パートナーシップ」制度で宣誓のカップル県営住宅入居可能へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20221214/3020013580.html

琉球銀行、LGBTQカップルなどのファミリーシップ登録証明書などもローン契約資料に追加(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1628373.html

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