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東京都の今年のHIV新規感染者数が今世紀に入って初めて300人を下回る見込みです

2022年12月30日

 12月28日に配信された東京都エイズ通信第185号によると、今年1月1日から12月25日までの東京都の感染者報告数は281名(新規HIV感染者が229名、発症してわかったエイズ患者が52名)でした。昨年の357名(294名、63名)よりも減少し、年間300人を下回りそうです。
 同通信内で「TOP-HAT News」を連載している特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議の宮田一雄さんによると、年間の新規報告数が300件以下になるとすると(ほぼ間違いなく下回ると思われますが)、1998年以来のことだそうです。
 なお、日本全体の1年間のHIV新規感染者数(速報値)は毎年3月に発表されていますので、2022年分の発表も3月になると思われます。
 
 コロナ禍以降、都内の保健所の多くは新型コロナウイルスの対応に追われ、HIV検査を中止したり減らしたりという状況で(そんななかでも東京都東口検査・相談所は頑張って開け続けてくれました)、HIV検査数がガクンと下がり、2020年は保健所等でのHIV検査件数が前年の半数以下になったということもあり、2020年の新規HIV感染者数が前年から2割近く減少し、1076名(新規HIV感染者は740名、新規エイズ患者は336名)となりました。
 2021年はさらに検査・相談件数が減少し、過去最少となりました。新規HIV感染者報告数も2020年よりさらに減少し、1023名(新規HIV感染報告は717名、新規エイズ患者報告は306名)となりました。過去20年間で3番目に少ない数字です。厚労省エイズ動向委員は「無症状感染者が十分に把握できていない可能性に留意する必要がある」とコメントしています。
 
 2022年の検査件数は、厚労省エイズ動向委員会の報告が今年の第2四半期まで(1月〜6月の半年間)の分しか発表されていないのですが、コロナの影響で第1四半期がとても少なく、第2四半期でグッと盛り返していて、そこまでの合計だと昨年より少ないのですが、おそらく第3四半期、第4四半期は第2と同じくらいの数字になり、そうすると年間の合計は昨年よりも多くなるのではないかと予想されます。東京都も同様の傾向です。
 もし東京都で今年1年間にHIV検査を受けた人の数が昨年と同じか多いくらいだとすると、検査数が減ったから新規感染者数も減ったのだと言うことはできなくなります。東京でのHIV感染自体が減少しているのだと見てよいでしょう。
 では、(全国的に毎年の新規HIV感染はずっと横ばい状態で、顕著に減ることはなかったにもかかわらず)なぜここにきて東京でHIV感染が減少しているのでしょうか。その理由としては様々な見方がなされるでしょうが、一つの要因として、PrEPの普及が功を奏しているということもあるのではないでしょうか。2018年から2021年にかけてPrEPユーザーは4倍に増えており(先日のPrEP利用者・支援のためのオンラインセミナーでコミュニティ向け調査の結果報告がありました)、SH外来やクリニックもある東京がダントツでPrEP利用が多いでしょうから、すでに数百名(もしかしたら1000名超)がPrEPを利用していると思われます。みなさん毎日きちんと薬を飲んでいらっしゃるでしょうから、PrEPがバッチリ予防効果を発揮していて、それが今回の数字に反映されていると見ることもできそうです。
 今後もし、そういう調査・研究が進み、PrEPの予防効果が公に認められる結果になれば、薬事承認だけでなく、PrEP利用をめぐる状況がさらに良くなる(使いやすくなる)ことが期待されます。
 

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