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【追悼】LGBTQコミュニティにも影響を与えたデザイナー&アクティヴィスト、ヴィヴィアン・ウェストウッド

2022年12月30日

 英国のファッションデザイナー&アクティヴィストであるデイム・ヴィヴィアン・ウェストウッドが29日、亡くなりました。81歳だった。ロンドン南部クラパムで家族に囲まれて安らかに亡くなったそうです。公私にわたるパートナーのアンドレアス・クロンターラーは、「ヴィヴィアンと心の中でずっと一緒だ。最後の最後まで一緒に作業していて、これからやるべきことをたくさん託してくれた」と語っています。
 
 ヴィヴィアン・ウェストウッドの訃報に接し、多くの著名人が追悼のコメントを上げています。ゲイのセレブからもヴィヴィアンにオマージュを捧げるコメントが寄せられています。
 80年代から彼女を知っていたボーイ・ジョージは、「インスピレーションを与えてくれる偉大な存在」「まぎれもなく彼女こそが、イギリス・ファッションの女王だった」と讃えました。
 英『Vogue』誌編集長のエドワード・エニンフルは、「英国ファッションの真のアイコンで、ファッション界に取り替え不可能な力を注いだ。彼女のレガシーは永遠に生き続ける」と語りました。
 米国のデザイナー、マーク・ジェイコブスは、「あなたが最初に成し遂げた」「常に。信じられないスタイル、ブリリアントで意味のある素材で。私はあなたの言葉から学び続け、あなたの尋常じゃないクリエイションから学び続けた」と語りました。
 ドラァグレースUKの勝者であるThe Vivienneは、その名をヴィヴィアン・ウェストウッドから取っていますが、「ヴィヴィアン・ウェストウッドは私に何だってできる、何を着てもいいということを教えてくれた女性だった。そして彼女は(大文字の)ICONであり、ある意味、私は彼女を通して私の人生を生きてきた。他にそんな人はいない。(彼女は亡くなったけど)私たちは闘い続ける」と語りました。
 
 BBCの追悼記事ではこう述べられています。
「ウェストウッドは世界的なファッション・ブランドを作り上げ、20世紀で最も影響力のあるデザイナーの一人と呼ばれた。
 パンクファッションを生み出し、ハイファッションを制覇し、ニュー・ロマンティックを作り出し、世界的なファッション帝国を築いた。無政府主義の理想主義者で、イギリスのそれまでの権力構図に真っ向から挑みかかり、イギリスを変身させました。腐敗と汚職と世界的な不公正を憎み、若い世代の事なかれ主義を嘆いた。
 ファッションは武器になると考えていた。着る者をセクシーにするだけでなく、世界を揺さぶり、みじめな既成概念を打破し、より良い世界を作るための武器だというのが、ウェストウッドのファッション哲学だった」

 『GQ』誌は、「もしヴィヴィアン・ウエストウッドがいなければ、私たちが今日知っているようなかたちで英国ファッションは存在しなかっただろう」と述べています。「ウェストウッドがいなければ、アレキサンダー・マックイーンもチャールズ・ジェフリーも存在しなかっただろうし、ロンドン・ファッション・ウィークは、国際的なシーンで、その“アンファン・テリブル”なステータスを享受することはなかっただろう」
 
 ヴィヴィアン・ウエストウッドは70年代にチェルシーのキングスロードにパートナーのマルコム・マクラレン(セックス・ピストルズのマネージャー)と共同経営で、その後パンクの聖地となる「SEX」というショップを立ち上げました。ボンデージやフェティッシュからインスパイアされたファッションを展開し、1975年には股間をあらわにした2人のカウボーイゲイをフィーチャーしたTシャツ(ゲイのフォトグラファー、ジム・フレンチのアートワークを起用)を発表しています。このシャツはのちにメトロポリタン美術館に収蔵されています。
 このショップは今では「ワールズ・エンド(世界の終わり)」という名前で、追従を嫌い抵抗を続けた彼女のデザイン作品を売り続けています。
 
 80年代にはキース・ヘリングとコラボし、「Witches」コレクションを発表しています。
 ヴィヴィアンはHIV陽性者の支援者でもありました。PinkNewsによると、LGBTQのジャーナリスト、ポール・バーストンが彼女を「ストーンウォール・イン」に連れて行った際(ポール・バーストンは出禁になっていたそうですが、ヴィヴィアンが「入る権利がある」と主張してくれたそうです)、そこに英国の厚生大臣としてHIV陽性者への恐ろしいコメントを発したエドウィナ・カリー議員がいて、公然と悪態をついたそうです。
 
 1992年、ヴィヴィアンは、バッキンガム宮殿に招かれ、OBE(大英帝国勲章)を授与されました。立ち去る前に、彼女は記者のカメラの前でスカートの裾をたくし上げ、下に何もはいていなかったことが明らかになりました。尤も、このことはそんなに王室を怒らせたわけではありませんでした。2006年には再びバッキンガム宮殿に招かれ、デイム(女性の最高位の大英勲章)を授与されたのですから。
 
 2016年春夏キャンペーンにはゲイのポルノスター、コルビー・ケラーを起用しています(詳細はこちら
 
 2017年11月には東京タワー下で開催した「祭り」をテーマにしたファッションショーイベントにドラァグクイーンのレイチェルさん&MONDOさん、NEW SAZAEの紫苑ママなどを起用しました。
 
 2018春夏キャンペーンではゲイやトランスジェンダーのモデルやアクターなどを多数、起用しています(詳細はこちら
 
 こちらの記事では、ヴィヴィアン・ウェストウッドが英国のクィアコミュニティにおいてセクシュアリティを表明するアイテムの一つと見なされていたと書かれています。日本でも、ドラァグクイーンの方など、リスペクトを込めてヴィヴィアン・ウェストウッドを身に着ける方もいました。
 
 英国のゲイ雑誌『ATTITUDE』誌は2017年、ヴィヴィアン・ウエストウッドに「Style Hero Award」を授与しました。
 
 
 
参考記事:
ヴィヴィアン・ウェストウッドさん死去 「イギリス・ファッションの女王」(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/64123063
【訃報】デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドが死去。享年81歳。(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/fashion/article/2022-12-30-vivienne-westwood-obit
ヴィヴィアン・ウエストウッドは英国ファッションを作っただけでなく、英国ファッションそのものだった(GQ)
https://www.gqjapan.jp/fashion/article/20221230-vivienne-westwood-death-news
How Vivienne Westwood’s legacy of activism inspired the LGBTQ+ community(PinkNews)
https://www.thepinknews.com/2022/12/30/vivienne-westwood-activism-lgbtq-climate/

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