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【ご協力のお願い】私たちのコミュニティの歴史を記録するためのプロジェクト

2023年01月24日

 TRP以前、東京のパレードは8月に開催されていたと言うと、驚く方もいらっしゃるかもしれません。
 2000年〜2010年に断続的に開催された東京レズビアン&ゲイパレード〜東京プライドパレードと、後夜祭としてのレインボー祭りは、性の多様性を祝福するお祭りとして大きな盛り上がりを見せ、コミュニティの様相をガラリと変えました。特に第1回、2000年8月27日(日)は、LGBTQ史に残る1日となりました。代々木公園で第1回東京レズビアン&ゲイパレードが開催され、全国から集まった2000人を超える方たちが、東京で初めて出展されたドラァグクイーンなどが乗ったDJフロートでクラブミュージックと一緒に盛り上がり(沿道で応援していた方もたくさんいました)、帰着後はステージ上でレズビアンやゲイのミュージシャンのライブを楽しみ、最後に泣きながら挨拶した実行委員長の砂川秀樹さんに心からの拍手を贈り…性の多様性を祝福するコミュニティのお祭りとしてのパレードは、孤独を感じていたり、自暴自棄になっていたりしたような当事者の方たちにも勇気を与えました。本当にたくさんの方たちが「行ってよかった」「感動した」と口々に語っていました(ポット出版の『パレード』という本に詳しく記録されています)
 それだけでなく、パレード終了後の二丁目では、第1回東京レインボー祭りが初開催され、メインストリートである仲通りが歩行者天国となり、5000人とも6000人とも言われる人たちでごった返しました。ゲイバーのマスターたちがお酒や食べ物の屋台を出店し、路上ではドラァグクイーンのショーや当事者ミュージシャンのライブ、エイサー演舞、スクエアダンスなどたくさんのパフォーマンスが行なわれ、最後に、モーニング娘。の曲でイェイイェイ盛り上がり、ドラァグクイーンのHOSSYさんのカウントダウンでレインボーカラーの風船を一斉にリリース…すると、ビルの屋上からまさかの花火が二丁目の夜空に打ち上げられたのです。感動のあまり、友達と抱き合ったりしながら号泣する人たちが続出しました。
 いにしえの時代、二丁目に通う方たちは、人目を忍び、隠れるようにしてお店に入っていくのが常でしたが、まさか、二丁目のメインストリートでお祭りが開催され、サプライズの花火まで打ち上げられる日が来るなんて…「ゲイに生まれてよかった」と思えて、二丁目コミュニティの一員であることに誇りを感じることができた方も多かったはずです。パレードの後夜祭として開催されたレインボー祭りは、性の多様性を祝福するオープンなお祭りとして、二丁目という街の姿を(コミュニティの様相をも)ガラリと変える、LGBTQの歴史に残る大事件でした。2000年8月27日以前と以後とでは、何かが全く変わってしまったのです。奇跡的な1日でした。私はこの日のことを一生忘れません。
 以上は、2000年のパレード&レインボー祭り(やピンクドット沖縄)を成功させた砂川秀樹さんへのインタビュー記事の冒頭部分です。
 あの記事読みました、と15歳年下の人気ドラァグクイーンの方が声をかけてくれました。「体験したかったです…」と残念そうに語ってもいて、そっか〜もうあの素晴らしい日の出来事を体験してない世代の方たちがゲイの世界の中心になっているのだなぁ…とあらためて気づかされました。
 2001年には代々木公園のステージで1日中、ゲイインディーズのミュージシャンのライブやドラァグクイーンのショーを繰り広げるイベントが開催され、2003年には札幌のパレードに初めて市長さんが来場し、「札幌はみなさんを歓迎します」と熱いスピーチをしてスタンディングオベーションが起こり、NLGRでは同性結婚式が行なわれ、思わず涙する人もたくさんいて、ドラァグクイーン&GOGO BOYSがたくさん出演した扇町公園の「PLuS+」のフィナーレも本当に素晴らしく…といった、コミュニティイベントの輝かしい瞬間の数々を、体験していない方にも、こんなことがあったんだよと伝えたいです。ぜひ知ってほしいと思います。
 
 今あるパレードや二丁目や社会の姿は、先人たちの血のにじむような苦労の上に成り立っています。20〜30年前だったら職場でゲイだとバレたらクビになっていたかもしれませんし、本当に好きな人と一緒に暮らすこと自体も難しく、自治体にパートナーシップを証明してもらうとか生命保険の受取人になれるなんて夢のまた夢でしたが、LGBTQコミュニティの方たちの努力の積み重ねで、少しずつ「できない」が「できる」に変わってきたのです。そんな、今の幸せへとつながるコミュニティ運動の歴史を書き残そうということで、『LGBTヒストリーブック』の日本版にあたる本の出版のクラウドファンディングが立ち上げられました。
 『LGBTヒストリーブック』の出版元であるサウザンブックスは、野原くろさんの『キミのセナカ』や『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』、『ぼくらのサブウェイ・ベイビー』、『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』などLGBTQ関連の名著を多数手がけてきた出版社です。そのサウザンブックスが、元東京レインボープライド共同代表であるライターの山縣真矢さんに提案し、『LGBTヒストリーブック』日本版の出版に向けたプロジェクトが立ち上げられました(私も執筆のお手伝いをします)。クラファンは1月末までで、あと1週間なのですが、まだ54%しか達成されていません。このままだとプロジェクトが不成立になってしまいます…。

 ゲイ雑誌がなくなり、ゲイメディアも完全にインターネットに移行してからわかったのは、(運営する主体がコミュニティへの強い思いや覚悟を持っていないと)オンライン上の記事は、たとえどんなに素晴らしい内容であっても、あっさり消えてしまいかねない…ということです。しかし、本になれば永遠に残ります(ゲイ雑誌だって国会図書館に収蔵されています)。今回はLGBTコミュニティ運動の歴史がメインとなる本ですが、これがうまくいったら、例えば(『パラダイス・ガラージの時代』のような)ゲイクラブシーンの歴史や、映画・演劇などのカルチャーの歴史、ハッテン場の歴史…といった様々な本が作られるかもしれません。(私を含め)時代の生き証人として語れる人がまだ生きているうちに、これまでの数々の素敵な名場面や活躍したたくさんの人たちのことが書き記され、後世に語り継がれていってほしいと願うものです。
 
 90年代〜2000年代のコミュニティや社会がダイナミックに変化していく時代のリアリティや感動を、シーンの中心で体験してきた人間として、(砂川さんも応援コメントでおっしゃっているように)当時の社会状況や時代の感覚を踏まえながら、若い方やこれから生まれる方にもわかりやすく生き生きと伝え、記録を残していくことには、やはり意味があると思っています。私自身は子どもを残すことはできませんでしたが、LGBTQコミュニティの後輩のみなさんをきょうだいや子どものように思い、(特に地方の方や、困難や生きづらさに直面している方なども)自身のジェンダーやセクシュアリティを肯定的に受け容れ、すくすくと育ってほしいという気持ちで、メディア上でメッセージを発信し続けてきましたが、この本が、そうした若いみなさんへの未来へのバトンになると思っています。
 
 みなさまの温かいご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
(文:後藤純一) 



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