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【アカデミー賞】エブエブが最多7部門を受賞し、ブレンダン・フレイザーが主演男優賞を受賞してクィア映画が主要部門を席巻しました!

2023年03月13日

 2023年(第95回)アカデミー賞で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(エブエブ)が作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞の最多7部門を受賞しそして『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが主演男優賞に輝き、主要部門をクィア映画が席巻しました。 

 
 エブエブは1月のノミネーション発表時に最多10部門11ノミネートを果たしていて、ゴールデングローブ映画部門主演女優賞・助演男優賞をはじめ、アカデミー賞の前哨戦である「米映画俳優組合員賞(SAG賞)」最高賞など228ものアワードを受賞して賞レースを爆走しており、きっと作品賞をはじめたくさんの賞を獲るだろうと予想されていました。全く予想通りの結果となったわけですが(助演女優賞がレズビアンの娘を演じたステファニー・スーではなくジェイミー・リー・カーティスに贈られたことは意外でしたが)、それでも今、世界中が、エブエブという素晴らしく多様性あふれる(主要なキャストやスタッフがアジア系であり、物語の主軸となるのがクィアの子を持つ家族の受容のプロセスである)作品が最多受賞を果たしたことに喝采を贈っています。
 
 主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーは、「私と同じような容姿をした少年少女へ、これは希望と可能性の光です。大きな夢を描けば、叶うという証拠です」「レディース、『あなたが最も輝ける時期はもう過ぎた』なんて誰にも言わせないで。絶対にあきらめめないで」とスピーチしました。
 助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンは、「私の旅は船の上で始まったんです。難民キャンプで1年を過ごしました。そしてどういうわけかこのハリウッドの大舞台に立つことになりました。こういう話は映画の中だけのことだと言われています。自分の身に起こっているなんて信じられません。これこそアメリカンドリームです!」とスピーチしました。見事復活を遂げたクァンに会場のセレブも涙し、プレゼンターのアリアナ・デボーズも封筒を開けた瞬間に感動で声を詰まらせていました。そして、作品賞のプレゼンターをつとめたハリソン・フォードはキー・ホイ・クァンが子役時代に『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』で共演していて、二人が抱き合う姿の投稿には、4時間で17万もの「いいね」がつきました。
 監督のダニエルズ(ダニエル・シャイナート&ダニエル・クァン)のスピーチも素晴らしく、シャイナートは今回の授賞式で唯一、保守的な州で吹き荒れる「ドラァグ禁止法」への反対を表明した人となりました。彼は授賞スピーチで両親への感謝の言葉だけでなく、アンチドラァグ法に言及し、「僕が子どもの頃、ドラァグクイーンのような服を着ることを許してくれた両親に感謝する」とも述べました。そして「ドラァグは誰も脅かさない」と勇ましく宣言しました(拍手!)
 また、助演女優賞に輝いたジェイミー・リー・カーティスは授賞式後、記者に対し、「アカデミー賞がノンバイナリーの俳優をどう包摂していくかが重要な課題だ」「トランスジェンダーの娘を持つ母親として、完全にそれを理解している」と語りました。

 なお、授賞式では歌曲賞にノミネートされていたエブエブの挿入歌「This Is A Life」のライブ・パフォーマンスもあり、ステージにはデヴィッド・バーン、コンポーザートリオのSox Lux、そしてサウンドトラック版には参加していなかったステファニー・スーも登場しました(動画はこちら
 
 それから、『ザ・ホエール』で巨漢のゲイの英文学教授を演じたブレンダン・フレイザーが主演男優賞に輝きました。
 2003年にゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会の元会長から性的虐待を受けたことが原因で鬱になり、表舞台から姿を消していたフレイザーは、受賞スピーチで「30年前にこの仕事を始めたが簡単にはいかないこともあった」「こうやって認められたことにただ感謝している。この作品はキャストのみんながいなくてはできなかった。まるでダイビングで水中に体験に行くような経験だった。私の人生にいる人たち、たとえば息子たちが見守ってくれている。そのことが水面の空気になってくれた」と語りました。
 (『ザ・ホエール』は4月7日公開です。待ち遠しいですね!)

 もう1人、今年のアカデミー賞授賞式で活躍したクィアな人として、レディ・ガガがいます。
 映画『ジョーカー』の続編を撮影中のガガは、スケジュールの都合でパフォーマンスを辞退したとアナウンスされていましたが、サプライズでステージに登場し、『トップガン マーヴェリック』の主題歌「Hold My Hand」(歌曲賞ノミネート)を歌いました。ガガは黒のTシャツにダメージデニムというカジュアルな衣装にノーメークでステージに登場し、「私たちは人生を歩むためにたくさんの愛を必要とし、誰もがヒーローを必要としています。心が壊れたと感じていても、自分自身のヒーローになれることに気づくかもしれません」と語り、感動的なパフォーマンスでオーディエンスを魅了しました。
 ちなみにレディ・ガガはシャンパンカラーとなったレッドカーペットにシックな黒のドレス姿で登場し、たくさんの報道陣に囲まれ、さっそうと歩きましたが、横を通り過ぎたカメラマンが転倒したのを見てすぐに小走りで駆け寄り、手を差し出して立ち上がるのを手伝ったそうです。『ピープル』誌がその様子を収めた映像をInstagramで公開し、「親切な行為を自然にやっている。彼女はクイーンよ」「なんて美しい女性なの」「美しくて優しい魂」と賞賛のコメントが寄せられました。
(『Out』誌がレッドカーペットを歩いたLGBTQの姿を報じています。そちらもご覧ください)



 昨年のアリアナ・デボーズのようなクィア俳優の受賞はなかったのですが(『TAR/ター』のケイト・ブランシェットの評判も高かっただけに残念でしたが)、作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、脚本賞の主要5部門に加え、助演女優賞、助演男優賞、編集賞も同性愛者を描いたクィア映画が占めたことは本当に画期的で歴史的なことだと言えます。
 また、高齢女性のアジア系俳優、もともとベトナム難民であった俳優、ブレンダン・フレイザーのような辛酸を嘗めたものの見事に復活を果たした俳優がオスカーを受賞したこと、エブエブのプロデューサーである台湾系アメリカ人(移民2世)のジョナサン・ワン、同様に台湾系のルーツを持つダニエル・クワン(今作をきっかけにADHDとの診断を受けたそうです)のような方たちが受賞したことも、多様なマイノリティな人々に希望を与えたのではないでしょうか。
 なお、エブエブも『ザ・ホエール』もA24という映画製作会社の作品で、A24製作の映画が作品賞を獲るのは『ムーンライト』に次いで2回目、いずれもクィア映画というのもスゴいことです。
 
 

 

参考記事:
米アカデミー賞「エブエブ」7冠、M・ヨーがアジア人初の主演女優賞(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/oscars-best-picture-idJPKBN2VF08Q
2023年アカデミー賞授賞式の必見シーンを速報でお届け! 涙のスピーチから圧巻パフォーマンスまで(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/g43283831/whats-happening-on-the-stage-and-behind-oscar-230313/
「あなたが一番輝ける時期はもう過ぎた、なんて誰にも言わせないで」ミシェル・ヨーの力強いスピーチが胸を打つ【アカデミー賞2023】(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_640ea32ae4b01ea5cd89289d
Oscars 2023: Everything Everywhere All at Once director slams anti-drag bills in powerful speech(Pink News)
https://www.thepinknews.com/2023/03/13/oscars-2023-everything-everywhere-all-at-once-director-slams-anti-drag-bills/
ブレンダン・フレイザーがアカデミー主演男優賞を受賞、『ハムナプトラ2』で共演のドウェイン・ジョンソンも見守るなか感動スピーチ【全訳】(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17613786
レディー・ガガに称賛「優しい魂」アカデミー賞授賞式レッドカーペットで転倒のカメラマン助ける(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202303130000641.html
LGBTQ+ Celebs Who Walked the 2023 Oscars Red Carpet(Out)
https://www.out.com/film/2023-oscars-lgbtq-celebrities-red-carpet

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