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大阪地裁がウガンダから逃れてきた同性愛女性を難民と認定しました

2023年03月15日

 こちらの記事でもご紹介していた、ウガンダから日本に逃れてきたレズビアンの30代女性。ウガンダでは同性間の性行為に対して最高で終身刑が科され、同性愛の”普及”や同性愛行為の“扇動”“共謀”に関与しただけで最高10年の禁錮刑を科すような法案が議会に提出されてます。そのような状況で母国に送還されたら迫害は免れない(命にかかわる)として、彼女は国に難民認定を求める訴訟を起こしていましたが、3月15日、大阪地裁(森鍵一裁判長)は女性を難民と認めず国外への強制退去とした国の処分を取り消す判決を言い渡しました(よかったですね!)
 出入国在留管理庁(入管)が母国でのLGBTQへの迫害を理由に難民認定したのは(2018年に母国での同性愛への迫害を理由に初めて難民認定をして以来)過去に少なくとも3例ありますが、代理人弁護士によると、司法判断としては初めてだそうです。(なお、英国政府の統計によると、英国では2015~20年、同性愛を理由にした難民申請は全体の5%前後を占め、半分近くが認められているそうです)
 女性は2020年2月に来日し、関西国際空港の入国審査で渡航目的を疑われ、入管施設に収容されました。母国での迫害を訴えて難民申請したが認められず、国外退去処分も出ました。現在は収容が一時的に免除される仮放免中で、関西地方で暮らしています。
 訴状によると、ウガンダで生まれ育った女性は2014年頃からレズビアンと自認するようになり、パートナーらと共同生活を送っていたところ、2017年に逮捕されて約3ヵ月間拘束され、木の棒で何度も殴られたそうです。こうした迫害から逃れようと出国を決意しました。
 国側は「ウガンダで同性間の性行為を理由に有罪判決を受けた人はおらず、性的少数者を取り巻く状況も改善している」と反論していたそうです。

 判決の後、女性は日本でも在日ウガンダ人社会から差別を受けるおそれがあるとして、本人と特定されないことを条件に記者会見に応じました。
 「(日本に来てずっと)ただ震えていた。送還される不安はいつもあった」と話し、判決は「信じられない」と喜びました。

 難民政策に詳しい国士舘大学の鈴木江理子教授は、ウガンダの同性愛者の人権状況と、女性が警察から過去に受けた暴行から結論を導いた点に着目し、難民認定の国際標準では「送還した場合に生じる迫害の可能性」が考慮されるが、日本では、現地で指名手配されるなどの客観的証拠を求める傾向があるといい、「過去の暴行を丁寧に検討し、難民認定のハードルを一定程度下げた司法判断といえる。実務の変化につながることを期待したい」と語りました。

【追記】2023.3.20
 今回の判決に対して法務大臣及び大阪出入国在留管理局が控訴をしないこと、さらに当該ウガンダ人女性に対して迅速に難民の在留資格を認めることを求める署名が立ち上げられました。ご協力をお願いいたします。
 
 

 一方、難民支援協会(JAR)は、入管法改正に反対し、#難民の送還ではなく保護をというキャンペーンを立ち上げました(LUSH JAPANも賛同しています)。難民条約では、迫害の危険がある国への送還は禁止されていますが(ノン・ルフールマン原則)、政府が今国会に提出した出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案では、難民認定申請の回数が制限され、不認定が続くと強制送還の対象になる可能性があります。
 難民支援協会は「日本に逃れた難民の保護を揺るがす法案が再び国会に提出されました。ウクライナ難民の受け入れに光があたり、日本の難民保護の課題が見えにくくなっていますが、状況は廃案となった2021年から変わっていません。難民が公正に保護されるために、法案への世論の関心が必要です」としています。
(詳しくはこちらをご覧ください)

 ILGA(国際LGBTI協会)によると、同性間の性行為を犯罪とみなしている国は世界に70ヵ国あります(2020年12月現在)。イランやサウジアラビアなど死刑にされる可能性がある国や、ウガンダやブルネイのように終身刑を科される可能性がある国は30ヵ国以上に上ります。(LGBTQの海外安全情報(渡航情報)のページもご参照ください)
 
  
 
 現在入管施設に収容されているLGBTQの方の扱いも問題視されています。
 名古屋出入国在留管理局に収容中の20代のゲイであるブラジル人男性に、入管職員が「あなたには心に問題がある。他の人に何か起こるといけない」と発言したとして、石川大我参院議員が入管に抗議しました。
 石川氏によると、2月27日に収容男性に面会した「名古屋入管の人権侵害をなくす市民の会」代表の真野明美さんから相談があり、3月10日、この男性と面会しました。その後、名古屋入管の山崎浩一次長と会談し、発言の経緯や事実確認を求めるとともに職員の人権研修の必要性を訴え、「性的少数者であることを理由に不当な差別的扱いをしないように」と申し入れました。
 石川氏や真野さんによると、男性は2022年10月に収容され、職員の差別発言の後、「自分はケダモノではない。自分はパートナーや恋人を探しにここに来たわけではない」と訴え、職員は直後に謝罪したといいます。名古屋入管の山崎次長は石川氏の抗議に「(発言)内容については承知していない。確認したい」と答えたそうです。
 石川氏は今後、参院法務委員会でこの件について斎藤健法相に質問する意向を明らかにしています。

 


参考記事:
同性愛で迫害のウガンダ人、大阪地裁が難民と認定 国外退去取り消し(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230315/k00/00m/040/103000c
同性愛のウガンダ人「ずっと震えていた」 難民認定命じる判決に喜び(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR3H6V6RR3HPTIL00W.html

名古屋入管職員、性的少数者の収容者に差別発言 立憲議員が抗議(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230313/k00/00m/040/168000c

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