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10代を含む1万人超のLGBTQへの意識調査で「SNSでの差別的な発言」「いじめ」「異性愛前提の話」の問題が浮き彫りになりました

2023年11月21日

 日本で初めて同性のパートナーを生命保険の受取人に指定できるようにしたことで知られるライフネット生命が21日、日高庸晴宝塚看護大教授に委託して10~90代のLGBTQ1万人超を対象に実施した「第3回LGBTQ当事者の意識調査」の結果を公表しました。その結果、「SNSでの差別的な発言」「いじめ」「異性愛前提の話」が10代の当事者に悪影響を与えている問題が浮き彫りになりました。性暴力に遭った方が安心して相談できる体制が整っていないことも指摘されました。

 
 この調査はライフネット生命保険株式会社が(REACH Onlineなど)これまで多数のLGBTQ関連の調査を手がけてきた宝塚大学看護学部の日高庸晴教授に委託し、2022年12月1日~2023年4月21日にLGBTQ10,449名を対象に実施された意識調査です。同規模の調査は2016年、2019年にも行なわれていて、今回は第2回の後続調査となります。世の中の変化や学校・職場環境といった、これまで継続的に調査してきている内容だけではなく、全国で広がりつつある同性パートナーシップ宣誓制度や同性婚について当事者が抱く意識についても調査したそうです。
 以下、調査結果をダイジェストでお伝えします。

【学校生活】
・「学校生活で困ったこと」として、「異性愛前提の話が多かった」が78.3%、「LGBTQの存在が想定されていなかった」が45.9%と高い割合になりました。トイレや更衣室、男女別授業などで困った経験はトランスジェンダーの方が突出していました。
・小学生~高校生でいじめに遭ったとした人は57.8%。10代では38.8%で、前回の47.4%、前々回49.4%よりは少なくなりました。日高教授は「LGBTQの情報や多様性の大切さが認識された面もある。クラスに当事者がいるという認識を持てるよう、教職員らへの周知が必要」と話しています。
・いじめ被害経験者およびネガティヴライフイベント経験者※のうち、68.6%は「自身のいじめ被害を知っている人・目撃している人がいた」と答える一方、「助けてくれる人・かばってくれる人がいた」と答える割合は26.6%に留まりました。
・24.2%が「特に用事がないのに保健室へ行ったこと」があると回答。10代当事者では32.9%と若年層であるほど割合が高くなっています。

※ネガティヴライフイベント経験者は、学校生活(小・中・高)で「持ち物を隠されたり、壊されたりしたこと」「『女(男)らしくない』『おかま』『ホモ』『レズ』などといわれたこと」「無視や仲間はずしにされたこと」「なぐる、蹴る、大声でどなる、おどすなどの行為をされたこと」「無理やり服を脱がされたこと」「インターネットやSNSでいやがらせをされたこと」を経験したと回答した人を指します。

【職場環境】
・当事者の69.9%が「職場や学校で差別的な発言を見聞きした経験がある」と回答しています。前回は79.6%でしたので、10ポイントも下がっています。パワハラ防止法により、職場でのLGBTQ差別(SOGIハラ)を防止する施策が措置義務とされ、社内研修などの取組みが広がっていることが功を奏していると考えられます。しかし、まだまだ高い数字ですので、さらに取組みを継続していくことが求められると言えるでしょう。
・職場や学校で友人や同僚にカミングアウトしている人の割合は28.1%でした。

【性暴力】
・身体的暴力や性暴力、脅迫などの被害の経験について、全体の13.9%が身体的暴力を、11.5%が性暴力を経験していたと回答しました。
・被害に遭った時の相談先について複数回答で尋ねた質問では、「誰にも相談していない」が52.8%で、次いで「友人.家族など」が33.6%となり、警察は13%、弁護士は3.1%にとどまりました。警察や弁護士、民間団体に相談した人のうち、「親身になって話を聞いてもらった」方は弁護士と民間団体で6割を超え、警察では42.1%でした。一方、「被害そのものを疑われた」という人は警察と民間団体で約1割いて、「警察の態度が嫌だった」という答えは29.5%に上りました。「被害届を受理されなかった」という人も7.5%いました。日高教授は、性暴力などを受けた際の体制について「性的少数者が安心して相談できる環境が整っていないと考えられる。多様な性の当事者が相談に来ることを想定した体制を整えることが求められる」と指摘しています。
 
【同性パートナーシップ証明制度・同性婚】
・「同性婚を法律で認めてほしい」との回答は全体で68.6%、10代では85.1%、20代では77.8%となりました。自治体の同性パートナーシップ証明制度を利用した272人では91.5%に上っており、日高教授は「パートナーシップ制度では法的保障がなく、十分ではないといえる」と指摘しました。

【その他】
・「1年以内にSNSで差別的な発言を見聞きした」との回答が全体で71.5%、10代では85.5%に上りました。日高教授は「自分が当事者だと気付く小中学生らへのダメージが特に大きい。自尊感情を傷つけ、不安にさせる」との懸念を示しました。
・当事者の27.9%が親にカミングアウトしています。
・当事者の21.7%が「アウティングされた経験がある」と回答しています。特にトランスジェンダーでより顕著な結果になりました。

 今回の調査結果では、学校や職場での取組みが広がってきているおかげで、学校でのいじめが少しずつ減ってきたり、カミングアウトできる方が少しずつ増えてきている様子もうかがえる一方、SNSでの差別的な発言が特に若い当事者にダメージを与えている可能性が問題視されました。東京新聞では、2月の首相秘書官(当時)の差別発言や、その後のLGBTQ理解増進法をめぐる議論に伴う差別的な発言が増えた可能性があると指摘されています。LGBTQ差別禁止法やヘイトスピーチ禁止法などの必要性がますます高まっているのではないでしょうか。

 
 

参考記事:
性暴力などの被害「誰にも相談せず」が半数 LGBTQ大規模調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20231121/k00/00m/040/291000c
1万人のLGBTQが明かした「学校生活で困ったこと」「いじめられた経験」 そして「認めてほしいこと」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/291435
第3回 LGBTQ当事者の意識調査 ~いじめ被害やカミングアウト、同性婚等に関する声~宝塚大学看護学部日高教授への委託調査(ライフネット生命保険株式会社)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000074.000069919.html

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