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同性愛を理由に家族に殺されかけた北アフリカ男性の難民認定の訴えが認められました

2024年07月04日

 同性愛者であるため家族に殺されかけたという北アフリカ出身の30代男性が日本での難民認定を求めて国を訴えた裁判の判決が4日、大阪地裁(徳地淳裁判長)で下され、地裁は「男性の母国では同性による性行為が法律で処罰対象となっていて、警察官などからも差別や暴力を受ける恐れがある」「男性が帰国した場合、家族から危害を受ける現実的な恐れがあり、国の保護を受けられないことが認められるため、難民に該当する」として国の不認定処分を取り消しました(本当によかったですね)

 男性の国は同性愛を禁じるイスラム教の国で、刑法でも同性間の性行為が処罰対象とされています。
 訴状によると、男性は2018年12月、家族に同性愛者であることを知られて父や弟から暴行を受け、10日間ほど自宅の物置部屋に監禁され、交際相手と逃げた先で家族の車にひかれそうになり、警察署で事情を話すと「刑務所に入れる」と脅されたといいます(本当に恐ろしい…言葉を失いますね…)「この国にはもういられない」と、男性は交際相手とともに日本に逃れ、2020年1月、大阪出入国在留管理局で難民申請したものの、2021年2月に「不認定」とされ、不服を申し立てても退けられました。2022年7月、不認定の決定の取消しを求めて提訴しました。
 裁判では、男性が家族から監禁、暴行されるなどし、警察に保護を求めても暴言を吐かれたと主張したのに対し、国側はこれを信用できないと反論し、「直ちに迫害を受ける恐れがあるとは認められない」として訴えを退けるよう求めました。男性は「人として生きるチャンスを与えてくれたらうれしいです」と訴えていました。
 判決はまず、欧米各国の報告書などから男性の母国を検討した結果、同性間の性行為を法律で禁じており、同性愛などの性的指向自体が処罰の可能性があると認定。「性的少数者が嫌悪の対象で危険にさらされている。警察など国家機関の保護を受けるのは困難だ」と指摘しました。そして男性の証言は「具体的。不自然や作り話と疑う部分は見当たらない」と判断しました。そのうえで「性的少数者であることは人間の尊厳にとって根源的で、変更や放棄を強要されるべきではない」との考えを提示。男性が帰国した場合、再び迫害される恐れがあるとし、「難民に該当する」と結論づけました。

 記者会見で原告の男性は「(難民認定を申請してからの)4年はめっちゃしんどい。Thank you so much the court(裁判所、ありがとう)」「うれしくて空を飛ぶような気持ち」と語りました。また、通訳を介して「日本に入国してからもつらい生活でしたが、きょうはとてもうれしいです。ありがとうございます。これからはほかの人と同じように仕事をして日本で生きていきたい」と語りました。
 代理人を務めた松本亜土弁護士は「裁判所が入管の難民認定の判断が間違っているとした」「国は難民認定のあり方などをもう一度振り返って、世界と同等の適切な判断をしていってほしい」と述べました。
 また、男性を支援してきた難民支援団体「RAFIQ」の田中恵子さんは、「イスラム教の国などで地域社会からの迫害に苦しむ性的少数者の救済につながる判決だ」と評価しました。
 判決を受けて入管は「判決の内容を精査して適切に対応したい」としています。

 日本では2005年、死刑を怖れてイランから日本に逃れ、難民申請し、裁判で闘ったゲイのシェイダさんに対し、「同性愛者であることを黙っていれば生きていけるだろう」として強制送還を言い渡すという残酷な判決が下りました(幸い、シェイダさんは、第三国に出国し、強制送還を逃れました)
 その後、2018年になってようやく、同性愛への迫害を理由にした初めての難民認定が出ました。
 2023年にはウガンダから日本に逃れてきたレズビアンの30代女性が難民認定されました。
 同年、難民認定のガイドラインが初めて策定され、性的マイノリティへの迫害も難民に該当しうると明記されました。日本の難民認定率は1%程度と低く、「審査が厳しすぎる」「手続きの公平性・透明性に問題があるのでは」と批判が強かったため、入管庁が国連難民高等弁務官事務所と意見交換するなどして、審査で考慮するポイントを整理した「難民該当性判断の手引」を策定したものです。難民条約は難民について「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団、政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあって他国に逃れた人」であると定義しています。策定されたガイドラインでは、迫害について「生命、身体、自由の侵害・抑圧、その他の人権の重大な侵害」を意味するとし、認定には「迫害を受ける現実的な危険が必要」だとされています。「特定の社会的集団」には性的マイノリティや、ジェンダーを理由として迫害を受けるおそれがある人も該当しうると記載されています。
 
 今回の男性も明らかに祖国で「生命、身体、自由の侵害・抑圧、その他の人権の重大な侵害」を受け、「迫害を受ける現実的な危険」にさらされていますが(今でも実の弟から「戻ったら、お前が死ぬまで叩きのめす。アラーに誓って殺す」などと電話で言われているそうです)、何度も不認定になり、裁判でようやく認められました。一般的に難民申請者の訴えが「不自然」「信用できない」とされたり、書類などの証拠を持たず、事情のわからない異国で立場をうまく説明するのが難しいことも不認定とされる一因だと言われていますが、ガイドラインに則って、適正な判断が下されることを願います。事は生死に関わる問題なのですから…
 


参考記事:
北アフリカ出身で同性愛者の男性 難民と認める判決 大阪地裁(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240704/2000085725.html
「裁判所ありがとう」北アフリカ出身で同性愛者の男性『母国で迫害』難民と認める判決 大阪地裁(MBS)
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20240704/GE00058650.shtml
『同性愛』で監禁されたアフリカ出身の男性「母国では同性による性行為が処罰対象」難民と認める判決(関テレ)
https://www.ktv.jp/news/articles/?id=13450
同性愛者の男性を難民認定】「入管の判断が間違っている」母国で迫害 大阪地裁判決(ABCテレビニュース)
https://www.youtube.com/watch?v=oogiIVCuMuQ
同性愛迫害で北アフリカ男性の難民認定判決(共同通信)
https://nordot.app/1181453784488378471?c=302675738515047521
北アフリカ出身で同性愛者の男性、難民として認める判決…母国で迫害受ける恐れ(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240704-OYT1T50099/
アフリカ出身の男性に難民認定判決 「同性愛で迫害」訴え 大阪地裁(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240704/k00/00m/040/122000c
同性愛理由に「家族に殺されかけた」 男性の難民不認定取り消す判決(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS722TBJS72PTIL00FM.html
同性愛で迫害恐れと判断 アフリカ出身男性の難民不認定取り消し(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240704/k00/00m/040/234000c
同性愛で家族に殺されかけた男性、難民と認める 「空を飛ぶ気持ち」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS743DTQS74PTIL009M.html

「生きるチャンスを」訴え 同性愛理由に、家族から殺されかけた 北アフリカ出身の男性、難民認定求める(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15970654.html

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