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ペドロ・アルモドバル監督の最新作がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞に輝きました

2024年09月08日

 世界三大映画祭の一つであるヴェネツィア国際映画祭の授賞式が現地時間9月7日に行なわれ、ペドロ・アルモドバル監督作『The Room Next Door(原題)』が最高賞にあたる金獅子賞に輝きました(おめでとうございます)

 スペインが生んだ世界的巨匠であり、ゲイであることをカムアウトして『欲望の法則』『バッド・エデュケーション』『アイム・ソー・エキサイテッド!』『ペイン・アンド・グローリー』、そして『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』のようなゲイ映画を世に送り出してきたペドロ・アルモドバル監督。最新作の『The Room Next Door』は安楽死をテーマとした作品で、クィア映画ではないと思われるのですが、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアという大ベテラン女優が共演し、がんを患う女性がかつての友人と再会し、友情が再燃していく様が描かれています。深い感情描写の演技とエモーショナルなストーリーラインが観客の感動を喚び起こし、ヴェネツィアでの上映後は17分にも及ぶスタンディングオベーションを受けたそうです。
 ペドロ・アルモドバルは『神経衰弱ぎりぎりの女たち』でヴェネツィア国際映画祭の脚本賞を、『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー外国語映画賞やカンヌ国際映画祭監督賞ならびにエキュメニカル審査員賞を、『トーク・トゥ・ハー』でアカデミー脚本賞を、『ボルベール〈帰郷〉』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞するなど、数えきれないくらいたくさんの映画賞を受賞してきましたが、三大映画祭で最高賞を受賞するのは今回が初めてです。
 感激した様子のアルモドバルは、受賞スピーチで「この賞は、ここにいる家族に捧げたい。この映画『The Room Next Door』は私の初めての英語作品ですが、その魂はスペイン語です」と語りました。また、記者会見では「これは世界がいま危険な方向、死に向かいつつあるなかで、自身も死に向かっている女性の物語。だがこんな世紀末的な状況のなかでも、人を幸福にしたり、安心を与えたりすることはできる。本作はそんなポジティブさを讃えている」と語りました。

 
 今回のヴェネツィア国際映画祭は、SMテイストな不倫映画『Babygirl』に主演したニコール・キッドマンが女優賞を受賞したほか、マリア・カラスをアンジェリーナ・ジョリーが演じた『Maria』、ホアキン・フェニックスとレディー・ガガの『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』など、スター・バリューの高い映画が目立っていましたが、そのなかの一つが、007俳優ダニエル・クレイグがゲイの役を演じた『Queer(原題)』でした。
 『Queer』の原作は、1985年に出版されたウィリアム・S・バロウズの同名小説で、1950年代のメキシコシティを舞台に、若く美しい学生に溺れていくゲイで薬物依存症のアメリカ人駐在員・リーの葛藤を描いた作品です。監督は名作『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ(ゲイであることをカムアウトしている監督)です。ヴェネツィアでのプレミアでは9分間のスタンディングオベーションが巻き起こり、感極まったクレイグが目を潤ませてグァダニーノ監督と抱き合ったそうです。この会場にはアルモドバルも観客として来ていて、ルカ・グァダニーノ監督とハグを交わし、祝福したそうです。この様子を見ていたファンたちは「これは忘れられない瞬間」「天才監督2人がお互いを称え合っている!」と胸を熱くしたそうです。
 なお、今作の衣装は「LOEWE(ロエベ)」のクリエイティブディレクター、ジョナサン・アンダーソン(ゲイのファッションデザイナーです)が手がけており、映画祭の期間中、ダニエル・クレイグをはじめ『Queer』の関係者は全員、LOEWEを着ていたそうです。ワールドプレミアの前夜には『Queer』のお披露目を祝うキックオフパーティがホテル・チプリアーニで開かれましたが、このパーティもLOEWEがオーガナイズしていたんだそう。『君の名前で僕を呼んで』も相当に美意識の高い作品でしたが、今作も期待できるのではないでしょうか。


 『The Room Next Door』も『Queer』も日本での公開はまだ決まっていませんが、決まったらまた映画特集などでお伝えいたします。観るのが楽しみですね。

 

参考記事:
【ベネチア国際映画祭2024】 金獅子賞はアルモドバル監督作!受賞結果一覧。ニコール・キッドマンに女優賞!(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/g62062046/venice-film-festival-240907/
【第81回ベネチア国際映画祭】金獅子賞はペドロ・アルモドバル初の英語長編映画、尊厳死を描いた「The Room Next Door」(映画.com)
https://eiga.com/news/20240908/8/

ルカ・グァダニーノ監督作『クィア』、ヴェネチア国際映画祭で9分のスタオベ アルモドバル監督も称賛(cinemacafe)
https://www.asahi.com/and/entertainment/425019310/
ヴェネチアでダニエル・クレイグの脱ボンド作戦は成功したのか?(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/424d7d015b55d1696720daca38d7c11e580e5c83

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