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グラミー賞で過去最多のクィア・アーティストがノミネート

2024年11月15日

 11月8日(現地時間)、第67回グラミー賞授賞式のノミネーションが発表され、チャペル・ローン、ビリー・アイリッシュ、レディ・ガガ、トロイ・シヴァンなど、本当にたくさん、今わかっているだけで実に17名ものLGBTQ(クィア)のアーティストがノミネートされました。おそらく過去最多です。『Out』誌は、「これまでになくLGBTQフレンドリーなグラミー賞になる」と期待しています。
 
 Z世代のクィア・アイコン、チャペル・ローンは9月のMTVアワードでも最優秀新人賞を受賞しましたが、グラミー初ノミネートにして主要4部門(最優秀新人賞、レコード・オブ・ザ・イヤー、アルバム・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤー)と最優秀ソロ・パフォーマンス、最優秀ポップ・ボーカル・アルバムの6部門にノミネートされました。『Out』誌は「今年は本当にチャペルの年だった」と評しています。
 今月Rolling Stone Japanに掲載された「チャペル・ローンが語る、ポップの超新星が歩んできた「茨の道」」は、これまであまり知られていなかったチャペル・ローンの素顔に迫る、実に読み応えのある素晴らしい記事でした。中西部の小さな町で生まれ育ち、「自身のセクシュアリティや人間性を深く恥じていた」という彼女は、両親のサポートもあり、同性愛者であることを受け容れ、一方で、地元の保守的な親類などとも相変わらず仲良くし、セクシュアリティをめぐる自身の旅を続けながら、今年、オハイオ州でのショーの最中にカムアウトしました。「多くのことを学び直す必要があったし、まだ混乱している部分もある。自分がゲイであることを誇れないのはそのせいだと思う」。彼女は10代にしてすでに「レノン=マッカートニー級の作曲スキルを持って」いたと語り伝えられる天才でありながら、今年大ブレイクを果たしたことでにわかに訪れた名声になじめずにいて、同時に、有名になったことでストーカーなどますます「攻撃的で暴力的」になってきている一部のファンの行動に苦しんでいるそうです(チャーリーXCXやビリー・アイリッシュ、エルトン・ジョンなど錚々たるアーティストが彼女をサポートしているそうです)。1万字を超えると思われる長い記事の最後は、こう結ばれています。「彼女は決して、名声を欲してはいなかった。彼女の願いは、友達を休暇に連れて行ったり、お気に入りの街シアトルにいつか家を買うことだった。「私が夢見ていたのは、自分の理想のショーを実現させることだけだった」と彼女は言う。ロラパルーザの舞台に立ち、ステージから見えるようにピンクのアイテムを身につけて欲しいという彼女のリクエストに応じたファンで埋め尽くされた客席を見たとき、ローンは涙を流した。その嬉し涙は、彼女が抱える不安を溶かしていくようだった。キャリア史上最大のステージで、ラテックスのレスリングウェアを着たバンドと一緒に自分の曲を演奏しながら、彼女はこれまでのすべてが何ひとつ無駄ではなかったことを悟った」
  
 昨年12月にカムアウトしたビリー・アイリッシュは、ビヨンセの11部門に次いで多い7部門にノミネートされました。レコード・オブ・ザ・イヤー、アルバム・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤーのほか、今年はチャーリーXCXとのコラボもあったので最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスにもノミネートされています。

 レディ・ガガはブルーノ・マーズのコラボ曲「Die With a Smile」でソング・オブ・ザ・イヤー、最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスの2部門にノミネートされました。
 
 クィアであることをカムアウトしているセイント・ヴィンセントはこれまでに何度もグラミーを受賞していますが、今回も最優秀ロックソング、最優秀ロックパフォーマンス、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンス、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムの4部門にノミネートされています。

 オープンリー・ゲイのトロイ・シヴァンは最優秀ダンス・ポップ・レコーディング部門にノミネートされました。

 オープンリー・レズビアンのケラーニは、最優秀R&Bソング、最優秀プログレッシブR&Bアルバム、最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス部門にノミネートされました。

 「自分はストレートではない」と語っているマディソン・ビアーは、最優秀ダンス・ポップ・レコーディング部門にノミネートされました。

 グリーン・デイは、最優秀ロックアルバム、最優秀ロックパフォーマンス、最優秀ロックソングの3部門にノミネートされました。グリーン・デイのフロントマン、ビリー・ジョー・アームストロングはバイセクシュアルであるとカムアウトしています。

 2019年に2部門でノミネートされたゲイのDJ、ケイトラナダは、今回は最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム、最優秀リミックス・レコーディング、最優秀ダンス/エレクトロニック・レコーディングの3部門にノミネートされました。

 ビヨンセの『Cowboy Carter』で何曲も共作しているゲイのシンガーソングライター、ライアン・ビーティは、『Cowboy Carter』でアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされました。

 Brothers Osborneは最優秀カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンスにノミネート。T.J.オズボーンは2021年にカムアウトしたカントリー界のスターです。です。

 AnittaとKali Uchisは、ともにバイセクシュアルであるとカムアウトしていて、二人とも今回、最優秀ラテン・ポップ・アルバム部門にノミネートされました。

 それから、以下のアーティストは今回、グラミー初ノミネートとなったクィア・アーティストです。

 先日の「OPULENCE」でジェイダ・エッセンス・ホールが「Alter Ego」でショーをしたDoechiiは、バイセクシュアルであることをカムアウトしていますが、新人賞、最優秀ラップパフォーマンス、最優秀ラップアルバム、最優秀リミックスレコーディングの4部門にノミネートされました。
 
 バイセクシュアルであることをカムアウトしているWillowhttps://www.universal-music.co.jp/willow/は、最優秀ヴォーカル入りインストゥルメンタル編曲賞、最優秀アルバム技術賞(クラシック以外)の2部門にノミネートされました。
 
 クィアのシンガーソングライター、ドゥランド・ベルナールは最優秀プログレッシブR&Bアルバムにノミネートされました。 

 Clairoは、自身の性的指向については「完全に異性愛者ではない」としている方ですが、今回、最優秀オルタナティブアルバムにノミネートされました。
 

 第67回グラミー賞授賞式は現地時間2025年2月2日に開催されます。たぶんチャペル・ローンやビリー・アイリッシュはステージパフォーマンスもあると思いますし、賞の行方だけでなく、レッドカーペットなども見どころになるかと思います。楽しみですね。
 

 
参考記事:
チャペル・ローンが語る、ポップの超新星が歩んできた「茨の道」(Rolling Stone Japan)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/41655/

【第67回グラミー賞授賞式(R)】レディー・ガガ&ブルーノ・マーズ、「Die With a Smile」のノミネーションで“素晴らしいファン”に感謝(billboard JAPAN)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/143465

The 2025 Grammy noms are here and they are FULL of queer talent!(Out)
https://www.out.com/gay-music/gay-queer-lgbtq-2025-grammy-nominees

The 2025 Grammys will have A LOT of 1st-time LGBTQ+ nominees(Out)
https://www.out.com/gay-music/grammy-awards-2025-first-time-lgbtq-nominees

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