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2024年の新規感染報告件数:HIVは昨年より微増、梅毒は昨年より微減

2025年01月14日

 国立感染症研究所は毎週、(性感染症だけでなくすべての)感染症の発生動向について速報データとして週報を発表していますが(感染症発生動向調査週報=IDWR)、10日に2024年第52週のデータが発表され、2024年1月1日~12月29日の新規感染報告件数の累計が明らかになりました。
 これによると、梅毒の新規感染者報告件数の全国累計数は14,663件で、2023年の14,906件よりは少し減りましたが、東京都をはじめ23都府県では昨年を上回っていますし、依然として高い数字です。
 また、HIVの新規感染者報告件数(新規エイズ患者を含む)の全国累計数は991件で、昨年(960件)を少し上回りました(日刊ゲンダイでは昨年は943件と書かれていますが、速報値・確定値とも960件です)
 
【追記】2025.1.31
 1/31の東京都エイズ通信によると、東京都の昨年の新規感染者報告件数は、HIV感染者・エイズ患者が289件(昨年比13件減)、梅毒が3,748件(昨年比47件増)でした。全国のデータとは逆の傾向です。

 HIVについては例年3月頃に厚労省エイズ動向委員会が、新規HIV感染者、エイズ患者ごとに地域別・世代別・感染経路別での詳細な件数や検査・相談数のデータ、委員長コメントなどを発表していますが、現時点ではこうした詳細はわからないので、少し増えた理由については何とも言えません。3月の発表を待ちましょう。
 
 ちなみに、昨年12月末発行の東京都エイズ通信によると、東京都での2024年第1~50週(1月1日〜12月15日)の新規HIV感染者数は219件(昨年は235件)、新規エイズ患者は57件(52件)、合計は276件(287件)となっています。上記の国立感染症研究所の週報では12月29日までの累計は287件となっていましたので、東京都では昨年と同数ということになります。傾向としては、検査を受けてわかった方は少し減り、エイズを発症してわかった方は少し増えたということが言えそうです。
 
 昨年上半期は同性間性的接触による新規HIV感染数が以前よりもだいぶ減っていることが明らかになっていて、ゲイ・バイセクシュアル男性の間でのPrEPの浸透が効果を上げたと考えられます。おそらく下半期も同様の傾向が見られるのではないかと想像されます。
 PrEPがもっと気軽に利用できるようになり、もっと広く普及すれば、新規感染は海外のように劇的に減るだろうと予想されます。しかし、薬事承認されたツルバダは非常に高価となり、逆にこれまでのようなジェネリック薬を安価に利用することができなくなったという問題があって(もう1つのデシコビという薬はオンデマンド利用のための臨床試験のエビデンスがなく、公にはオンデマンド利用はできないという話もあり)、こうなると、これまでツルバダのジェネリック薬をオンデマンドで利用していた方がPrEP自体をやめてしまったり、その影響で、地方のクリニックなど、これまでギリギリでやってきたようなクリニックがPrEPの見守り医療から手を引いたりということが出てきます。ゲイコミュニティ内でPrEP利用者に対する偏見があることも指摘されています(昨年の日本エイズ学会より)。安心・安全な利用にはまだ課題があり、普及・浸透には程遠い状況です。
 
 ちなみに、この国立感染症研究所の週報の2024年第52週のデータからは、梅毒やHIVだけでなく、エムポックス(累計19件)、アメーバ赤痢(累計514件)など、様々な感染症のデータ(都道府県別の総数)もわかります。興味のある方はご覧になってみてください。

 

参考記事:
2024年の梅毒の新規感染者数は歴代ワースト2位…23都府県で過去最多の昨年を上回る(日刊ゲンダイDIGITAL)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/365943

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