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マドンナがトランスジェンダー従軍禁止令を批判し、「決して闘いをあきらめてはいけない!」とコメントしました

2025年01月30日

 長年LGBTQコミュニティを支援してきたマドンナが、トランプ政権によるトランスジェンダー従軍禁止政策を批判し、「決して闘いをあきらめてはいけない!」とコメントしました。


 マドンナは29日、自身のXで、「私たちが何年もかけて闘い、勝ち取ってきた自由が、新しい政府によってゆっくりと解体されていくのを見るのは本当に悲しい」と投稿しました。レインボーフラッグと壊れたハートの絵文字も添えました。トランスジェンダーが軍に入隊・勤務することを禁じた大統領令を受けたものです。マドンナは「決して闘いをあきらめてはいけない!」と締めました。

 LGBTQコミュニティやアライの人たちの長年の努力によって、同性愛者の従軍禁止(「Don't ask, Don't tell」政策)はオバマ政権下の2010年に撤廃され、トランスジェンダーの従軍禁止は2016年7月に撤廃されました。アシュトン・カーター国防長官(当時)はその際、「われわれの任務は国防であり、任務を達成する能力がある人たちを資質とは関係なしに兵士にさせないような障壁はいらない」「最も高い能力を持つ人々を採用し長く活躍してもらうことを確実にするための新たな一歩だ」と語っていました。
 2017年、第一次政権時にトランプ大統領はトランスジェンダーの従軍を禁止すると発言し、各方面から一斉に非難の声が上がりました(『トランスミリタリー』という映画で、その発言が当事者にどんな影響を与えたかが浮き彫りにされています)。2019年3月には国防総省が性別適合手術を受けた人やこれから受ける意向の人の新規入隊を禁止し、ほとんどの兵士に出生時に決められた性に基づいて勤務するよう求める新方針を打ち出しました。
 2021年、バイデン大統領がトランスジェンダーの従軍を再び認める大統領令に署名し、トランプ前大統領が指示した入隊を禁じる措置を撤回しました。
 マドンナが「私たちが何年もかけて闘い、勝ち取ってきた自由」と言うのは、このような流れです。
 しかし、27日、トランプ大統領は「軍の卓越性と即応性の優先」という大統領令に署名し、再びトランスジェンダーの従軍を禁止しました。今回の従軍禁止令の復活にはGLAADのサラ・ケイト・エリスCEOも「トランスジェンダーの人々はすでに名誉ある軍務に就いており、あからさまな差別である」と述べ、批判しています。
 
 
 20日付の大統領令についてはトランスジェンダー団体「Tネット」が抗議声明を発しています。
 東京新聞によると、LGBT法連合会の神谷悠一事務局長も「トランプ氏が(前政権と)真逆の方向性を打ち出すことは想定されていた。揺り戻しながら進む中での一つの局面だと思う」「今後、こうした対抗の動きが多く出てくるはず。当事者側も冷静に状況を踏まえながら、反動をはねのけるため声を上げていくことが大事」と述べています。
 また、台湾の同性婚に詳しい明治大の鈴木賢教授(比較法)は、「トランプ政権の姿勢が権威主義的な国での少数派排除の風潮に拍車をかける可能性はあるが、任期があるためあくまで期限付きの逆流」「日本でもLGBTQや移民への排外的主張を一時的に後押しするかもしれないが、そうならないよう対抗的な言説が必要だ」歴史の流れに抵抗するトランプ政権に従うか、『LGBTQフレンドリー』として世界に存在感を示すタイと同じ方向を向くのか。日本はどちらを選ぶのか問われている」と述べています。


【追記】2025.1.30
 トランプ大統領は29日、19歳未満の人々に性別適合治療(二次性徴抑制剤、ホルモン治療、手術など)を行なうことを制限する大統領令に署名しました。「ジェンダー(性自認)関連治療に対する連邦支援を終了する」「アメリカでは性別は変えることができるとの過激で誤った主張のもと、医療関係者が多感な子どもたちを傷つけている。危険な風潮を終わらせなければならない」としています。
 米小児科学会や米医師会を含む複数の医療団体は、性別適合治療が必要だとしています。LGBTQ団体はトランスジェンダーの若者はうつ病や自死のリスクが高く、自認する性に身体を適合させて性別違和を解消するための医療行為は「命を救うものだ」として、この大統領令に強く反対しています。GLBTQリーガル・アドボケイツ&ディフェンダーズのジェニファー・レヴィ氏は、こうした政策が「基本的なアメリカの価値観に背くものだ」と非難しています。また、米自由人権協会(ACLU)で「LGBTQおよびHIVプロジェクト」を率いるチェイス・ストランジオ氏は、「この命令は、全国のトランスジェンダーの若者に救命医療へのアクセスを閉ざす明確な計画を示している。家族の役割を無視し、患者と医師の間に政治を持ち込んでいる」と批判しました。すでに大統領令の差止めを求める訴訟なども始まり、権利を後退させる動きを食い止めようとしています。
 
 

参考記事:
マドンナ、“長年かけて勝ち取ってきた自由を”米政府が“解体”していると投稿(Billboard.com)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/145870
マドンナ、トランプ政権の反LGBTQ+大統領令を痛烈批判(The Hollywood Reporter Japan)
https://hollywoodreporter.jp/music/90502/
多様性を認めないトランプ大統領 慈悲を求めた主教の勇気 「逆戻り」するアメリカに日本は?アジアは?(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/382609
マドンナがトランプ大統領の政策を批判、長年LGBTQコミュニティーを支援(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202501300000198.html

トランプ大統領“19歳未満性別適合治療など制限”大統領令署名(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250129/k10014706751000.html
トランスジェンダーの子どもの医療を制限 トランプ氏が大統領令署名(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/AST1Y1HFVT1YSFVU1Q7M.html
19歳未満へのジェンダー関連治療を制限へ トランプ氏が大統領令に署名(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/articles/cm237mx3xdko
トランプ氏、未成年者の性別適合治療への補助を停止 大統領令に署名(CNN)
https://www.cnn.co.jp/usa/35228819.html
トランプが大統領令で「19歳未満の性適合治療」を制限、政府支援を禁止(Forbes)
https://forbesjapan.com/articles/detail/76832

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