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ベルリン国際映画祭が開幕し、ティルダ・スウィントンに名誉金熊賞が贈られました

2025年02月18日

 第75回ベルリン国際映画祭が2月13日に開幕し、オープニングセレモニーで、クィアの俳優ティルダ・スウィントンに金熊名誉賞※が贈られました。

※金熊名誉賞:映画芸術に大きな貢献をした映画人(監督、俳優、プロデューサーなど)を表彰する賞。これまでにダスティン・ホフマン、グレゴリー・ペック、ビリー・ワイルダー、ソフィア・ローレン、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、シャーリー・マクレーン、イアン・マッケラン、メリル・ストリープ、ケン・ローチ、ヴィム・ヴェンダース、スティーヴン・スピルバーグなどに贈られてきました

 プレゼンターとしてティルダ・スウィントンに賞を授与したエドワード・ベルガー監督(『西部戦線異状なし』『教皇選挙』)は、彼女は「さまざまな世界へと導いてくれるポータルである」「並外れて美しい魂を持っている」と賞賛しました。
 受賞スピーチでティルダは、「今、世界のいたるところで、国家による支配や大規模な暴力が人々を恐怖に陥れています。こうした行為は、人間の社会で決して許されるものではなく、監視され、非難されるべきものです。私たちはその紛れもない事実から目をそらさず向き合う必要がある。今まさに、目の前で非人道的なことが起こっています。だからこそ、ためらうことなく、迷うことなく、ここで声を上げます」と語り、映画がいかに「本質的に包括的であり、占領、植民地化、支配、所有権、(トランプ米大統領による「ガザを中東のリビエラに」に発言を受け)リビエラの不動産開発といった試みとは無縁な偉大な独立国家のような領域」であるか、映画の持つパワーについて語りました。
 
 また、今回のベルリン国際映画祭では、オープンリー・ゲイのトッド・ヘインズ監督(『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』『キャロル』)が審査員長を務めています。審査員会見では、開始からわずか数分でトランプ政権に関する質問が出て、ヘインズは「現在、アメリカだけでなく世界的にも特別な危機的状況にあります。こうした状況を作り出すことが戦略の一部なのだと思います。人々に不安定さと衝撃を与え、民主党がどのように異なる形の抵抗を結集していくかを模索する時間を与えないようにしているのです」と語りました。「この大統領に実際に投票した人々の中にも、彼がアメリカの経済安定について約束したことに対し、すぐに幻滅する人が多く出ることは間違いないと思います」「トランプ政権の復活が映画制作にどのような影響を与えるかは、すべてのアメリカの映画監督にとって大きな問題です。そして、これは映画の世界にとどまらない問題でもあります。自分自身の誠実さや視点をどう保ち、周囲の問題に対して声を上げ続けるのか… それはまだわかりません」
 
 

 ティルダ・スウィントンといえば、1986年、デレク・ジャーマンの『カラヴァッジオ』で映画デビューし、『ラスト・オブ・イングランド』『エドワードⅡ』などその後のデレク・ジャーマン監督作すべてに出演し、デレク・ジャーマンが1994年にエイズで亡くなるまで、そのミューズであり続けました。現在公開中のペドロ・アルモドバルの『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』にも出演しており、ほかにもアピチャッポンやグァダニーノ、フリオ・トレス(日本では未公開のA24の『Problemista』という映画)など、さまざまなゲイの監督の作品に出演してきました。おそらく世界で最もゲイの監督に愛されてきた俳優の一人と言えます(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』のジュリアン・ムーアもそうですよね)。そんなゲイの監督との縁について、Yahoo!の「アルモドバル、D・ジャーマン…ゲイの監督との深い縁を語るティルダ・スウィントン「メイク濃いと女装に」」という記事で、ティルダはこのように語っています。「私は過去30年間に多くのクィアの映画監督と仕事をしてきました。しかしそのクィアネスは特に重要ではないとも感じます。デレクと私たちの友人が80年代にロンドンで感性を共有していた頃、スペインで自分の感性を生かして映画を撮っているペドロに、いとこのような親近感を抱いていました。ロンドンのアンダーグラウンド的な世界にいた私たちは、スペイン文化の中核をなすペドロをうらやましいとも思ったのです」「『MEMORIA メモリア』のアピチャッポン・ウィーラセタクン、『サスペリア』のルカ・グァダニーノといったゲイの監督との仕事では、確かに兄弟愛のようなものを感じます。大きな世界の中で、自分が作りたいものを作っている。それが偉大な監督の原動力なのだと、彼らとの作品は教えてくれますね」
 スラリと背が高く、髪が短めで、中性的な魅力を湛えるティルダは、自身の俳優としての個性についても「私の外見が個性的あることは理解しています。映画の世界に入った頃、私のようなルックスの俳優は他にいませんでした。俳優というより、16世紀の絵画で描かれた人物というイメージでしょう。さらにメイクを濃くすると、まるで女装した男性のように見えてしまうんです」と語っていて、興味深かったです。
 これからもゲイの監督と組んで素敵な演技を見せてくれることを期待します。まずは『Problemista』、とても面白そうなので日本で観られるようになってほしいです。
 
 
 

参考記事:
ベルリン国際映画祭2025】ティルダ・スウィントンが白熱スピーチ。開幕の様子をお届け(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/a63803203/berlin-film-festival-250215/
ティルダ・スウィントン、ベルリン国際映画祭金熊名誉賞を受賞(The Hollywood Reporter Japan)
https://hollywoodreporter.jp/news/83390/
ベルリン国際映画祭、審査委員長がトランプ米大統領に言及「世界的に危機的状況」(The Hollywood Reporter Japan)
https://hollywoodreporter.jp/news/93798/
第75回ベルリン国際映画祭開幕 ティルダ・スウィントンに栄誉金獅子賞、審査員長トッド・ヘインズがトランプ政権にコメントも(映画.com)
https://eiga.com/news/20250217/11/

アルモドバル、D・ジャーマン…ゲイの監督との深い縁を語るティルダ・スウィントン「メイク濃いと女装に」(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/46dd83a4b1bfdeefb5869c7dce435bb78e1acdae

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