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パリ五輪開会式のトマ・ジョリー監督に殺害予告を送るなどした7人に有罪判決が下りました

2025年05月05日

 AFPによると、フランスの裁判所は5日、昨年のパリ五輪開会式で芸術監督を務めたトマ・ジョリーをインターネット上で中傷し、ヘイトや殺害の脅迫を含むメッセージを送信した7人に罰金や執行猶予付き禁錮刑の有罪判決を言い渡しました。罰金額は最大3000ユーロ(約48万8000円)、執行猶予付きの禁錮刑は最長4ヵ月だそうです。

 
 昨年8月、レディ・ガガやドラァグクイーンをはじめ多くのクィア・ピープルが出演する素敵なパリ五輪開会式を演出したオープンリー・ゲイの芸術監督トマ・ジョリーがインターネット上で殺害予告を受けたとして告訴し、検察が捜査を開始したというニュースをお伝えしていました。
 セーヌ川を使って行なわれ、パリの歴史や文化をフィーチャーした開会式は概ね好意的に受け止められていましたが、ドラァグクイーンらがドゥビリ橋でファッションショーを繰り広げたあと、ランウェイの縁のところで頭に後光のようなヘッドピースをつけてDJをしていたバーバラ・ブッチ(レズビアンの方です)の周りに集まり、中央に色鮮やかな花や果物に囲まれたシンガーソングライターのフィリップ・カテリーヌが全身青塗りで登場し、「みんなが裸だったら戦争は起こるかな?」という歌詞の「Nu(裸)」という歌を歌ったシーンを、一部のキリスト教徒や極右団体が「『最後の晩餐』を侮辱した」などとして非難していました。トマ・ジョリー監督は「『最後の晩餐』には着想していません。ギリシャ神話の神々による祭りを描いています」「あれは『祝祭』のシーンで、ディオニュソスはギリシャ神話のお祝いの神だからテーブルにやってきたのです。ディオニュソスはフランスの宝ともいえるワインの神様で、セーヌ川の女神であるセクアナの父でもあります。オリンパス山の神とつながる、多様な宗教を信仰する人々の大きなパーティを作り上げようというアイデアでした。私にも、私の仕事にも、誰かを馬鹿にしようなどという気持ちはありません」「何よりも愛のメッセージ、『包摂』のメッセージを送りたかったのであり、分断を和解させるセレモニーにしたかっただけです」と語っています。また、フィリップ・カテリーヌは、ガザやウクライナでの戦争を踏まえて、平和のメッセージである「Nu(裸)」を歌ったのだと述べています。(ちなみに、古代のオリンピックで競技者がみな裸だったというのは有名な話です)
 しかし、言いがかりや非難は止まず、ジョリーには殺害予告まで届く事態に。訴状の中で彼は「脅迫的かつ侮辱的なメッセージの標的となっている」と訴え、性的指向に関する中傷や、「自分がイスラエル系だとする根拠のない決めつけ」も含まれていたとしています。 
 また、トランプ現大統領は開会式を「恥さらし」と非難したそうです。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はネット上での中傷に「激怒している」と述べ、ジョリーへの全面的な支持を表明、「フランス国民はこの開会式を非常に誇りに思っている」と語っていました。
 
 あの演出が『神々の饗宴』のようなギリシャ神話の祭りからインスパイアされたものだと何度言ったら…それでも一部の狂信的な人たちは『最後の晩餐』だと言い張り、殺害予告まで送る始末…。フランスの司法が適正な判断を示してくれてよかったです。特に今回のケースは、ゲイであることへの中傷も含まれており、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の側面もありました。このような攻撃・暴力が野放しにされず、きちんと裁かれることは本当に大切です。
(同様に殺害予告や脅迫を受けたバーバラ・ブッチの被害届についても、おそらくきちんと対応がなされたことでしょう)
 ネット上には今もLGBTQに対する誹謗中傷や暴力的な投稿があふれていますが、今回の有罪判決が、こうした悪意に満ちた行為がなくなるきっかけになることを願います。
 


出典:
五輪開会式の芸術監督をネット中傷、7人に有罪判決 仏(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3576282

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