PEOPLE
プライベートケアクリニック東京の小堀先生へのインタビュー
TRPへのブース出展だけでなく、ゲイシーンでよく見かけていて以前から気になっていたプライベートケアクリニック東京。その東京院の院長である小堀善友先生にお話を伺いました

二丁目のBYGSビルに行く通路にGOGO BOYのSASUKEさんの広告を掲出したことで話題になったり、TRPにブースを出したり(公式サイトのトップにもそのことが掲げられています)、イベントでコンドーム&ローションのセットを配ったりしている(昨年の「OPULENCE」でも児雷也さんの絵が描かれたパッケージのセットを配っていた)プライベートケアクリニック東京。以前から気になっていたのですが、ゲイ向けに実に素敵なアピールされている理由や、そもそもどんなクリニックなのかということを院長の小堀善友先生に聞いてみました。
(聞き手:後藤純一)
――今日はよろしくお願いいたします。まず、プライベートケアクリニック東京がどんなクリニックなのか、簡単に教えてください。
40年近く川崎で性感染症の診療に取り組んできた尾上泰彦医師が2015年頃に体調を崩して閉院を余儀なくされ、2年の療養の後、2017年に縁あって新宿の街で性感染症専門のプライベートケアクリニック東京を開院しました。2019年には東京院も開院することとなりました。尾上は「性感染症は、人と人が出会って初めて生じる病気。これほど人間性豊かな病気はありません」と語るような人で、当院は「性感染症でお悩みの全ての人が何の気兼ねもなく受診できる」クリニックを目指しています。
――なんと素敵な…長年、性感染症予防のことに関わってきましたが、「人間性豊かな病気」という言葉には初めて出合いました。私も過去には泌尿器科や“性病科”の町医者を受診したことが何度かありますが、とてもじゃないけど自分がゲイだと言えないような、なんなら高齢男性のお医者さんに説教の一つもされかねない雰囲気だったのですが、こちらのクリニックは全く印象が違いますね。驚きました。ちなみに「性感染症でお悩みの全ての人」という、その「全ての人」にはもちろんゲイをはじめとする性的マイノリティの人たちも含まれていますよね。
もちろんです。当クリニックのこだわりとして「性感染症診療における専門性の大切さ」と「プライバシーの保護」があります。例えば、近年梅毒の患者数が急増していますが、梅毒を実際に診療した経験のある医師は少なく、見逃されてしまうケースもあると言われているように、多くの臨床経験を積みながら最新の情報も得ていくような専門性が大切です。また、「性の健康」の背景にはセクシュアリティやパートナーとの関係性など、様々な事柄も含まれていますので、偏見なく患者さんに接することも大切だと考えています。ですから、医師だけでなく全スタッフが性の健康カウンセラーの資格を持っていたりHIV/エイズ相談研修を修了したりしています。東京レインボープライドのブース出展に際しては、たくさんの当事者の方と直にお話できて、スタッフも喜んでいました。また、ゲイの患者さまも他の患者さまも何の気兼ねもなく受診できるよう、待合室が全席個別のスペースになっていたり、診察室の音漏れを抑えるサウンドマスキングシステムを導入するなどして、プライバシー保護に努めています。
――素晴らしいですね。小堀先生は泌尿器科の先生でありつつ、HIVなどの性感染症の認定医であり、性機能の専門医であり、セックスセラピストの肩書きも持っていらっしゃいます。男性の性全般に関する専門家なのかな、と思います。サイクリングがEDの発症を誘発するリスクとか、精子の「質」の低下、不適切なマスターベーションなど、様々な興味深い記事にも登場されていますね。
詳しく調べてくださってありがとうございます。そうなんです。実際に、性感染症だけでなく、男性の性に関する様々なお悩みに応えております。性に関するお悩みは、本当に個人個人で異なります。勃起や射精など、他の病院では相談しづらいお悩みに関しても、医学的に解決できるように、相談にのっています。
――私が今回いちばん聞いてみたかったのは、プライベートケアクリニック東京は、単にゲイに偏見がなくフラットに接してくれるというだけでなく、東京レインボープライドでGOGO BOYが大勢いるようなブースを出したり、二丁目に向かう地下通路に有名なGOGO BOYの写真が大きく載った広告を出したり、ゲイシーンで人気の絵師さんを起用したSAFER SEXグッズを配布したり、他に類を見ないような活動を見せていますが、それはなぜなのか、ということです。当事者の方が関わっているに違いないと思うのですが、差し支えない範囲で教えていただけますか?
実は、当クリニックの関係者の一人が、もともと大阪でHIV検査事業に関わる方で、MASH大阪さんのミーティングに参加したり、ゲイのクラブイベントでブースを出したりするなかで、たくさんのゲイの方とふれあったり共感を深めていったということがあり、もともとゲイフレンドリーな医院ではあったのですが、コロナ禍のなかで検査をめぐる環境も大きく変わり、また、PrEPの利用が現実味を帯びてくるなかで、専門性の高い性感染症の正しい情報を知ってもらいたいという想いから、当クリニックとしてもっとコミュニティを支援したり、接点を深めていきたいと思うようになりました。そこで、とあるゲイの方に協力を依頼し、このような展開を見せることができました。
――なるほど、やはりそうだったんですね。HIVのことに携わる方は遅かれ早かれ、濃淡あれど、みなさん何らかのかたちでゲイコミュニティにも関わるようになるし、ゲイのお知り合いも増えるし、アライとしていろいろ活動するようになりますよね。昨年のエイズ学会でもそのことを実感しました。
エイズ学会に参加されたんですね。私どもはほぼ同時期にあった性感染症学会のほうにも行かなくてはならず、初日しか参加できなかったんです。
――そうでしたか。またいろんな場所でお会いする機会もあると思います。今後ともよろしくお願いいたします。最後に、ゲイの読者のみなさんに、何かひとこと、メッセージをお願いします。
性の悩みは千差万別、いろんなことでお悩みの方も多いと思います。また、現在はHIV感染を予防できる薬や、他の性感染症を予防できるワクチンもあります。当院は、それぞれのお悩みに寄り添いつつ、最善の治療を提案させていただきます。ご興味がありましたら、ぜひご相談ください。
プライベートケアクリニック東京 東京院 小堀善友院長
2001年金沢大学医学部卒業、金沢大学医学部泌尿器科入局。2006年金沢大学医学部大学院を経て、2009年獨協医科大学越谷病院(現埼玉医療センター)泌尿器科に勤め、2018年同泌尿器科准教授に就任、2021年よりプライベートケアクリニック東京 東京院院長を務めている。2016年第104回日本泌尿器科学会総会賞、2016年第35回日本アンドロロジー学会学術大会学会賞を受賞。泌尿器科医というだけでなく、日本性感染症学会認定医、日本エイズ学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなどの肩書きも有する。著書『泌尿器科医が教える – オトコの「性」活習慣病』『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』『諦めてはいけない勃起、間違えてはいけない射精「なぜオナニーはうしろめたいのか」』『体のことを知ろう男の子編「ラジオ保健室」』など
INDEX
- プライベートケアクリニック東京の小堀先生へのインタビュー
- 来年ワシントンDCで開催されるワールドプライドについて、Destination DCのエリオット・L・ファーガソンCEOにインタビュー
- 『超多様性トークショー!なれそめ』に出演した西村宏堂さん&フアンさんへのインタビュー
- 多摩地域検査・相談室の方にお話を聞きました
- 『老ナルキソス』『変わるまで、生きる』を監督した東海林毅さんに、映画に込めた思いやセクシュアリティのことなどをお聞きしました
- HIV、梅毒、コロナ、サル痘…いま、僕らが検査を受けるべき理由:東京都新宿東口検査・相談室城所室長へのインタビュー
- NYでモデルとして活躍する柳喬之さんへのインタビュー
- 虹色のトラックに込めたゲイとしての思い――世界的な書道家、Maaya Wakasugiさんへのインタビュー
- ぷれいす東京・生島さんへのインタビュー:「COVID-19サバイバーズ・グループ東京」について
- 二丁目で香港ワッフルのお店を営むJeffさんへのインタビュー
- 東京都新宿東口検査・相談室の城所室長へのインタビュー
- 俳優の水越友紀さんへのインタビュー
- 数々のLGBTイベントに出演し、賞賛を集めてきた島谷ひとみさんが今、ゲイの皆さんに贈る愛のメッセージ
- 今こそ私たちの歴史を記録・保存する時−−「LGBTQコミュニティ・アーカイブ」プロジェクト
- LGBT高齢者が共同生活できるシニアハウスの設置を目指す久保わたるさん
- 岩崎宏美さん出演のクラブパーティを開催するkeiZiroさんへのインタビュー
- 英国の「飛び込み王子」トム・デイリーについて、裏磐梯のゲストハウスのオーナー・GENTAさんにお話をお聞きしました
- ニューヨーク在住のフォトグラファー、KAZ SENJUさん
- ジョニー・ウィアーが来日!(映画『氷上の王、ジョン・カリー』公開記念トークイベント)
- 畠山健介さんへのインタビュー