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『BANDAI LAKESIDE GUESTHOUSE』を経営するGENTAさんへのインタビュー

2018年、福島の裏磐梯にゲイカップルが経営するゲストハウスがオープンしました。オーナーのGENTAさんに、お話を聞いてみました。

『BANDAI LAKESIDE GUESTHOUSE』を経営するGENTAさんへのインタビュー

2018年、福島の裏磐梯にゲイカップルが経営するゲストハウス『BANDAI LAKESIDE GUESTHOUSE』がオープンしました。オーナーのGENTAさんに、どのようにしてこのゲストハウスを開くことになったのか、その想いについて、お話を聞いてみました。

――もともとグランデコスノーリゾートで働いていて、LGBTのイベントを開催していたGENTAさんですが、このたび、パートナーの方と一緒にゲストハウスを経営することになった、その経緯を教えてください。

昔から、小さくてもいいから宿をやりたい、という夢がありました。20代の頃、バックパッカーで、1年間ヨーロッパを旅していたんです。ユースホステルを泊まり歩きながら、ヨーロッパの街々を訪れ、その歴史や文化に触れて。

――それは素敵ですね!

とても素晴らしい経験でした。それで、13年前、当時、横浜で土木関係の仕事をしていたんですが、ユースホステルをやりたいという夢をあきらめられなくて、ユースホステル協会ペアレント研修というのを受けたんです。

――僕は中学の時に一人旅をして、岩手県のユースホステルに泊まったことがあります。大人の人たちがよくしてくれて、朝も「少年バンザーイ!」とか言って見送ってくれて、とてもあたたかい気持ちになりました。

名前にユースとついてるだけあって、若者には親切ですよね。ペアレント研修は、青少年の健全育成という観点からも学んだりします。研修を受けて、緑豊かなところで開業したいと思って、実は最初に、那須の物件を見たんですが、ちょっとうまくいかなくて。そんなときに、仕事で乗っていた車(パトロールカー)の運転手さんと話をしていたら、彼が福島出身の人で、福島でおすすめの場所はありますか?と聞いたら、湖や森がある裏磐梯がいいよ、とすすめられたんです。そこで、裏磐梯に来てみたら…もう、一目惚れでしたね。それで、12年前に仕事をやめてこっちで下宿を見つけて。しばらくキャンプ場のバイトをしてたんですが、下宿のご主人が、ここの村の村長さんに会わせてくれて、その場で村長さんがグランデコに電話をかけてくれて、グランデコへの就職が決まったんです。

――へええ。てっきり、ホテルマンをやっててこっちに転勤してきたんだと思ってました。裏磐梯ありきだったんですね。

そうなんです。人の縁で、いい仕事に恵まれて。裏磐梯にもゲストハウスやペンションはたくさんあって、いろいろ見聞きしていましたが、やはり、なかなか続けて行くのは大変そうだなぁと思いながら、見ていました。なので、まずはお金を貯めようと思いました。

――そうして、販促セクションで働くようになって、震災後、お客さんに戻って来てもらうために、LGBT向けのイベントも企画するようになったんですね(詳しくはこちら

はい。震災の後は、道が通れなくなったりしたこともあって、この辺りのスキー場は全部閉鎖になって…。僕らもどうしたらいいんだろうってすごく悩んでいたんですが、4月にグランデコを再開したんですね。そうしたら、待ってましたとばかりに来てくれた方たちがいて。日本中がふさぎ込んで、自粛ムードになっている中で、すごくストレスが溜まっていた、スキー場を開けてくれて本当にうれしいって、心から感謝されて。ああ、って。エンターテイメントの役割っていうものがあるんだな、って思いました。

――素敵なお話ですね。

同時に、人はいつ亡くなるかわからないんだな…っていうことも身に沁みて感じて。自分がやれること、やりたいことをやろうと思った。そういうこともあって、2015年に初めてゲイスキーイベントをやって、その時に社内でカミングアウトしたんです。

――東北の山奥でのカミングアウトは、とても勇気の要ることだったと思います。もし職場にいづらくなったら、あるいは、この村で悪い噂が立ったら、大好きな裏磐梯を去らなくてはいけなくなったかもしれない。

そうですね。でも、結果としては、職場のみんなが快く受け入れてくれました。本当によかった。ただ、フライヤーを見て、本社の幹部からクレームが入ったんです。フライヤーに載ってる男の裸に文句を言う頭の固い人がいて…。イベント直前で、社長のGOサインの一声に助けられました。

――そうでしたか…大変でしたね…

イベントは、本当に楽しく、ハッピーなものになって、スタッフも喜んでくれて。2回目、3回目と、だんだんお客さんも増えて。

――レポートにも書きましたけど、グランデコのスタッフのノンケさんたちが、本当にあたたかくしてくれて、東北出身者としては、涙が出るほどうれしかったですね。

毎年ずっとやっていきたかったんです。でも、私が販促ではなくフロントのほうに異動になり、イベントができなくなってしまって…

――それで2017年は行われなかったんですね。

そんな時に、今のゲストハウスのオーナーさんから、遊んでる(空き家状態の)建物が1棟あるから、やってみない?と声をかけていただいて。またしても、人の縁なんですが、今かな、と思ったんです。そこで、今年の春にグランデコを辞めて、ゲストハウス経営を始めました。食事を作れるパートナーがいたからこそ、決断できました。一人ではとてもできなかった。感謝してます。でも正直言って、ケンカすることも増えたし、いろいろ苦労もありますが、とてもやりがいを感じています。

――なるほど。そういうことだったんですね。今年のGWの東京レイボープライドで、パートナーさんと一緒に、宣伝をされてたと思います。

そうなんです。最初の営業は東京レイボープライドでした。ゲイフレンドリーと位置づけたかったから。やはりLGBTの方が気軽に泊まれるゲストハウスってまだまだ少ないと思いますので、みなさんに安心して利用していただきたいという気持ちです。先日、レズビアンカップルとそのお母さんが泊まりに来てくださって、それは本当にうれしかったですね。

――それはいい話ですね。よく考えるとゲイカップルでゲストハウスをやっていくって幸せを絵に描いたようなストーリーだと思いますが、これからもぜひ、幸せのおすそわけをしつつ、LGBTが安心して楽しめる宿を、みなさんに素敵な旅の思い出を提供していってください。最後に何か、今後の目標などあれば、教えてください。

東北は実は海外からの旅行者(インバウンド)が少ないんですね。なので、このゲストハウスが外国人の方たちに来ていただくきっかけになればいいなぁと思っています。もちろん、日本のゲイのみなさんにもぜひ、たくさん来ていただきたいです。

――どうもありがとうございました。

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