REVIEW
アート展レポート:THE ART OF JIRAIYA-ARTWORKS1998-2025 児雷也の世界展
銀座のヴァニラ画廊で15日まで「THE ART OF JIRAIYA-ARTWORKS1998-2025 児雷也の世界展」が開催されています。レポートをお届けします。

『G-men』誌の表紙やEAGLE TOKYO(EAGLE OSAKA)の壁画などでも有名な、内外で絶大な人気を誇るアーティスト・児雷也さんの待望の個展が、これまでたくさんのゲイアーティストの個展なども手がけてきたヴァニラ画廊で開催されています。
「確かな画力に裏打ちされた、艶やかで肉感溢れる男性イラストレーションをはじめ、時にユーモラスで爽やかに、時に切なく重厚にエロスを描く漫画作品で、国内外の多くのファンを魅了し続けています。また、フランスでは画集も出版されるなど、国際的にも高く評価されています。本展では、展覧会のために描き下ろした作品をはじめ、貴重な手描きの生原稿、近年のCG作品、漫画原稿まで、児雷也の創作の軌跡を俯瞰できる内容となっています。また、展示会場では複製原画やオリジナルグッズの販売も行います」(公式サイトより)
児雷也さんは20年近く前に一度だけお会いしたことがあるのですが(自慢)、ご自身でお描きになる絵の世界の住人そのものなのではないかと思われるようなバルクマッチョ兄貴で、かつ、とても気さくで感じのよい方でした。
『G-men』誌へのセンセーショナルな登場のあと、いろんなところに作品を提供(活躍)し、TRPで外国人の方が児雷也さんの作品をプリントしたTシャツ(MASSIVEというアパレルでした)を着ているのを見てちょっと驚いて、海外でもすごい人気だなぁと感心したり、EAGLE TOKYOの壁画として世界中の観光客のフォトスポット(二丁目の名物のひとつ)にもなって、いろんな意味で日本のゲイシーンに欠かせない、シンボリックな存在になりました。ガチムチ界では「児雷也さんの絵のような」という表現が最高の褒め言葉になってますよね。
そんな児雷也さんの待望の個展が開催されるということで、ひさしぶりにヴァニラ画廊におじゃましてきました(「日本のゲイ・エロティック・アート展」以来だと思います)
ひさしぶりだったのでちょっと迷いつつ(新橋駅から5分くらい歩いて「銀座ナイン」のドンキの奥側の出口の目の前あたりでした)、地下への階段を降りて、ヴァニラ画廊にたどりつきました。平日の午後という時間帯にもかかわらず、何人ものお客さんがいらっしゃいました(初日はたいへんな混雑だったそうです)
AとB、2つのスペースの両方をめいいっぱい使って、すべて児雷也さんの作品で埋め尽くされているのは、本当に圧巻で、ウットリしてしまいました。「あ、この絵おぼえてる」と懐かしく感じられる『G-men』の表紙の絵や、数々のコミック作品の表紙や原画、それから、BIG GYMやGGやEAGLE TOKYOに提供してきた作品の数々。みなさんきっと、この人がイケる、この人もイケる、と思いながら、頬を紅潮させながら(あるいは鼻息を荒くしながら)ご覧になってるんじゃないかと思いますが(僕もそう。ていうか全員イケます)、現実にはなかなかいない理想的な男たちがこんなにもたくさん…シアワセしかないですよね。ガチムチパラダイス。野郎系ゲイの桃源郷です。
展示スペーの一角に『木村厳五郎一家』の1話〜5話も展示されていました。これ、すごくいい作品ですよね。大好きです。ある種のファンタジーというか「夢」が描かれていて。でもそれは、なかなか見ることができない、児雷也さんだからこその夢だと思います。








児雷也さんの絵や漫画は、単にセクシーなイイ男をハイパーリアルに描き、ガチムチ野郎系男子の理想像を作り上げたというだけでなく、世間で「むさ苦しい」とか「怖い」と見られがちな男性のありようをまるごと愛し、肯定し、魅力的に美しく描くことで、GMPD/BEARの「PRIDE」を醸成してきたと思います。そして、エッチなことやセックスをおおらかに、徹頭徹尾「いいもの」として描いているところも素晴らしいです。後ろめたさやコンプレックスや屈託がない、ちょっとノンケっぽさも感じさせるような、「ガハハ」って笑いそうなガチムチ男たちのカラッとした性の饗宴。そこにひと匙の人間味や面白味のスパイスも加えられています(匙加減も絶妙です)。「明日から頑張れる」「元気が出る」ということにとどまらず、読む人の人生観にも影響を与えてきたんじゃないかとさえ思ったりします。
2018年に上映された『トム・オブ・フィンランド』という映画の中で「誰もが、トム・オブ・フィンランドの絵のような男には、なることができる」というフレーズがあって、とてもいいなと思っていたのですが、考えてみれば、児雷也さんって「日本のトム・オブ・フィンランド」のような存在なのではないかと。そう言っても過言ではないと思います。「児雷也さんの絵」に出てくるようなバルクマッチョになりたいと思って筋トレに励んでる方、たくさんいると思います。児雷也さんは、(もしかしたら世間で、あるいはゲイコミュニティの中でも肩身の狭い思いをしているかもしれない)ゴツムチ男子たちにとっての希望であり、アイコンなのです。
この週末、Tokyo Pride 2025やクラブイベントに参加する方も多いと思いますが、ぜひ児雷也さんの個展にも足を運んでみてください。なお、土日は17時までなのでご注意ください。
(取材・文:後藤純一)
THE ART OF JIRAIYA-ARTWORKS1998-2025 児雷也の世界展
会期:5月31日(土)〜6月15日(日)
会場:ヴァニラ画廊展示室AB(東京都中央区銀座八丁目10-7 東成ビル地下2F、東京メトロ新橋駅1番出口より徒歩5分)
開場時間:平日12:00-19:00、土日祝および最終日12:00-17:00
会期中無休
入場料:1,000円
※入場料は画廊の受付にてお支払いをお願いいたします
※入場料のお支払いは現金のみとなります
※18歳未満はご入場いただけません
INDEX
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
- HIV内定取消訴訟の原告の方をフィーチャーしたフライングステージの新作『Rights, Light ライツ ライト』
- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
- 「僕たちの社会的DNAに刻まれた歴史を知ることで、よりよい自分になれる」−−世界初のゲイの舞台/映画をゲイの俳優だけでリバイバルした『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
- 同性の親友に芽生えた恋心と葛藤を描いた傑作純愛映画『マティアス&マキシム』
- 田亀源五郎さんの『僕らの色彩』第3巻(完結巻)が本当に素晴らしいので、ぜひ読んでください
- 『人生は小説よりも奇なり』の監督による、世界遺産の街で繰り広げられる世にも美しい1日…『ポルトガル、夏の終わり』
- 職場のLGBT差別で泣き寝入りしないために…わかりやすすぎるSOGIハラ解説新書『LGBTとハラスメント』
- GLAADメディア賞に輝いたコメディドラマ『シッツ・クリーク』の楽しみ方を解説します
- カトリックの神父による児童性的虐待を勇気をもって告発する男たちの連帯を描いた映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
- 秀才な女子がクラスの男子にラブレターの代筆を頼まれるも、その相手は実は自分が密かに想いを寄せていた女子だった…Netflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
- 映画やドラマでトランスジェンダーがどのように描かれてきたかが本当によくわかるドキュメンタリー『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』
- 人生のどん底から抜け出す再起の物語−-映画『ペイン・アンド・グローリー』
- マドンナ「ヴォーグ」の時代のボールルームの人々をシビアにあたたかく描く感動のドラマ、『POSE』シーズン2
- 「夢の国」の黄金時代をゲイや女性や有色人種の視点から暴いた傑作ドラマ『ハリウッド』
- ゲイタウンでポルノショップを40年近く経営していた夫婦の真実の物語『サーカス・オブ・ブックス』
- ルポールとSATCの監督が贈るヒューマンドラマ『AJ&クイーン』
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