REVIEW
笑えて泣ける名作ゲイ映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』爆誕!
フランスに実在するゲイの水球チームを描き、本国で大ヒットを記録した映画『シャイニー・シュリンプス!』の続編で、東京で開催されるゲイゲームズを目指すチームが手違いでおそロシい同性愛嫌悪国に降り立ち、大変な目に…果たして無事に東京に辿り着けるのか…というストーリー。ただのおばかドタバタ映画じゃなかった…まさかの号泣映画でした。

1作目『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』は、ゲイ差別発言をした罰としてチームの面倒を見るハメになるノンケコーチが、クロアチアで開催されるゲイゲームズを目指してシャイニー・シュリンプスのキャピキャピなゲイたちをビシバシ鍛えるというお話で(ちょっと『アタック・ナンバーハーフ』に通じるものがあるかも)、セクシーなパーティ、愛と友情、そして陰で苦悩している姿などもリアルに描かれ、ノンケコーチもチームの仲間になっていく様が感動を呼ぶ作品でした。
続編となる今回の『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』は、冒頭こそブリアナ・ギガンテさんのポールダンスやシャイニー・シュリンプス・オールスターによるブリトニーショーで華やかに幕を開けるものの、ゲイのメンバーたちの(ちょっと大げさなのでは…という気もする)キャピキャピ感は控えめで、結構なシリアス展開でした。予告編でもある程度描かれているので、ネタバレにならない範囲でストーリーをお伝えすると、こんな感じです。
<あらすじ>
シャイニー・シュリンプスのメンバーは、LGBTQ+の祭典「ゲイゲームズ」出場のため東京に向かう。リーダーのジャンが亡くなってすっかり弱っていたチームのために、コーチのマチアスは、娘が「きっとゲイに違いない」と言っていたマッチョな有力選手・セリームを(ゲイゲームズだとは言わず)引き入れるが、セリームはゲイだらけのメンバーを見て激怒。先行きが思いやられる展開に…。さらに、彼らを乗せた飛行機の乗り継ぎは、ジョエルの手違いで1日以上あることがわかり、(名指しはされていないものの明らかにロシアである)極寒の国で一夜を過ごすことに。ホテルでじっとしていられないメンバーは忠告を無視して外に遊びに出かけ、ゲイクラブを楽しんだり、アプリで出会った人とハッテンしようとしたり。しかし、フランスと違って同性愛嫌悪が激しく、彼らはヘイターに暴行されそうになったり、警察に逮捕されたり、同性愛矯正施設に入れられたり…果たして彼らは、無事に東京へとたどり着けるのか?









「チェチェンじゃないんだから」というセリフもありましたが、ロシアというゲイが迫害されている国で、あからさまにゲイゲイしいメンバーたちは大変な目に遭ってしまいます(外国人ゲイを逮捕して同性愛矯正施設に入れるだろうか…という疑問はありつつ)。そんな彼らの施設からの脱出劇のスリリングさと(『007』みたいでした)、こういう伏線だったのか!という面白さ。いくつものロマンス。そして、内なるホモフォビアに悩まされていたセリームが、メンバーのおかげで一歩前へと踏み出していく様の感動。ロシアだけじゃなく世界のいろんな国で迫害を受けているゲイたちや、先進国であっても地方で生きづらさを抱えているようなゲイたちにエールを贈るような、笑えて泣ける作品になっていました(ドタバタなおばか映画だと思って観たら、まさかの号泣…)。掛け値なしにいい映画です、これは。
出演者がほとんど全員、続投しているのも素晴らしいです。ずっとこのシャイニー・シュリンプスワールドにひたってたい…と思います。ぜひ3作目、4作目と続いてほしいです。
ちゃんとセクシーシーンもあります(マッチョなセリームの全裸シーンに注目しましょう)
これは「あるある」だと思いますが、ゲイをいじめる同性愛嫌悪なノンケほどガチムチでエロい(ゲイっぽくも見える)という描写もよかったです。映画館の大画面でぜひ、プロレスラーみたいなロシアン・ベアーが巨根をもっこりさせたレスリングウェアで仁王立ちするシーンを堪能してください。
二丁目プレミア試写会でちらっと聞きましたが、本当は東京でロケがしたかったんだけど、コロナ禍での入国制限が厳しく、叶わなかったようです(映画では東京に来てるんだけど、リアルには来れなかったという…)。でも、随所に日本のモチーフが描かれていて(主題歌も日本のアーティスト、ビッケブランカさんです)、日本への愛を感じました。
いろんな意味でぜひ観ていただきたいと思う映画でした。
二丁目プレミア試写会で監督さんも話していたように、実は1作目を観なくても、十分楽しめるようになっています。でも、もし1作目を予習してからこの映画を観たいという方は、10月21日から1週間限定で新宿武蔵野館で上映されますので、ぜひご覧ください。
シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ
原題:La Revanche des Crevettes Pailletées
2022年/フランス/113分/監督:マキシーム・ゴヴァール、セドリック・ル・ギャロ/出演:ニコラ・コブ、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、ロマン・ブロー、フェリックス・マルティネス、ビラル・エル・アトレビー、ピエール・サミュエル、ブリアナ・ギガンテほか
10月28日より全国でロードショー公開
★最新の情報は公式Twitterで!
INDEX
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
- それはいつかの僕らだったかもしれない――全力で応援し、抱きしめたくなる短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』
- 愛と知恵と勇気があればドラゴンとも共生できる――ゲイが作った名作映画『ヒックとドラゴン』
- アート展レポート:TORAJIRO 個展「NO DEAD END」
- ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル『ファッションフリークショー』プレミア公演レポート
- 転落死から10年、あの痛ましい事件を風化させず、悲劇を繰り返さないために――との願いで編まれた本『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 一〇年の軌跡」
- とんでもなくクィアで痛快でマッチョでハードなロマンス・スリラー映画『愛はステロイド』
- 日本で子育てをしていたり、子どもを授かりたいと望む4組の同性カップルのリアリティを映し出した感動のドキュメンタリー映画『ふたりのまま』
- 手に汗握る迫真のドキュメンタリー『ジャシー・スモレットの不可解な真実』
- 休日課長さんがゲイ役をつとめたドラマ『FOGDOG』第4話「泣きっ面に熊」
- 長年のパートナーががんを患っていることがわかり…涙なしに観ることができない、実話に基づくゲイのラブコメ映画『スポイラー・アラート 君と過ごした13年と最後の11か月』
SCHEDULE
記事はありません。








