REVIEW
謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
アンディ・ウォーホルの名前や作品は知ってるけど、いったいどんな人だったのか、彼の作品にはどんな意味があったのか、といったことはあまりよく知られていないのではないでしょうか。このドキュメンタリーを観ることで、その片鱗が掴めるのではないかと思います。京都での大規模な回顧展と併せてぜひ、ご覧ください。
キース・ヘリングの前に、アンディ・ウォーホルがいました。
キース・ヘリングの生涯については、割とよく知られているのではないかと思いますが(その生涯がミュージカルとして上演されてもいますし、昨年ドキュメンタリー映画も配信されました)、アンディ・ウォーホルがポップ・アートの旗手としてどのように美術界や社会を変革したのか、ゲイのアーティストとしてどのような影響を与えたのか、素顔はいったいどんな人だったのか、といったことは漠然としていて、あまり詳しく知られていないのではないでしょうか。映画『メン・イン・ブラック3』でもフィーチャーされていた「ファクトリー」、そこに集っていたイーディ・セジウィックやルー・リードなどのイメージはあるかもしれませんが、もう少し、アンディ・ウォーホルのアーティストとしての功績や人物像をよく知りたいという方は、このドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』がちょうどいい入り口になると思います。
スロヴァキア系の移民の子で、父親はピッツバーグの炭鉱で働いていた、ひ弱で色白な少年が、画材と洋服だけ持ってニューヨークに行き、あれよあれよという間に時代の寵児として注目を集め…というシンデレラ・ストーリー(アンディがあまりにも典型的なゲイなので、その姿に「自分とそっくりだ」と感じる人も多いはずです)。ストーンウォール以前の時代にあって、ゲイであることを特に隠さず、ポルノ的な作品も製作し、しかし自身はそんなにセックスには興味がなく(最後の方にパートナーの方がちらっと出てきますが)、お金持ちや上流階級の人たちで占められていた美術界を、ポップ・アートの力で変えていく、社会にセンセーションを巻き起こしていくのです。
このドキュメンタリーは「不敬の中に神聖なものを見出す驚くべき能力を持つ」「1960年代と70年代に「宮廷画家」になったシャイなゲイの男性」の生涯を描いています。この作品を観ることで、アンディ・ウォーホルという事件(社会現象)が何だったのかということの片鱗が掴めるんじゃないかと思います。ニューヨークの伝説のクラブ「スタジオ54」のシーンなども楽しいです。46分なので、ちょっとした隙間時間に観ていただけます。(ただ、日本語字幕がひどい…たぶん自動翻訳だと思います。そこだけが難点です)
いま京都で大規模な回顧展が開催されていますが(こちらの特集をご覧ください)、この映画と併せて観るとよいかもしれません。
アンディ・ウォーホル:アートのある生活
原題:Andy Warhol: A Life in Art
2022年/米国/46分/監督:Finlay Bald
Amazonプライム・ビデオにて配信中
INDEX
- ハリー・スタイルズがゲイ役を演じているだけが見どころではない、心揺さぶられる恋愛映画『僕の巡査』
- 劇団フライングステージ 第48回公演『Four Seasons 四季 2022』
- 消防士として働く白人青年と黒人青年のラブ・ストーリーをミュージカル仕立てで描いたゲイ映画『鬼火』(TIFF2022)
- かつてステージで華やかに活躍したトランス女性たちの人生を描いた素敵な映画『ファビュラスな人たち』(TIFF2022)
- 笑えて泣ける名作ゲイ映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』爆誕!
- かぎりなく優しい、心温まる感動のゲイ映画『幸運の犬』
- キース・ヘリングの生涯を余すことなく描いたドキュメンタリー映画『キース・ヘリング~ストリート・アート・ボーイ~』
- ディズニー/ピクサー長編アニメとして初の同性カップルのキスシーンが描かれた記念碑的な映画『バズ・ライトイヤー』
- 実在のゲイの生き様・心意気へのオマージュであり、コミュニティへの愛と感謝が込められた感動作:映画『スワンソング』
- ゲイが女性の体を手に入れたら!? 性をめぐるドタバタを素敵に描いた台湾発のコメディドラマ『美男魚(マーメイド)サウナ』
- 家族のホモフォビアゆえに苦悩しながらも家族愛を捨てられないゲイの男の子の「旅」を描いた映画『C.R.A.Z.Y.』
- SATCのダーレン・スターが手がける40代ゲイのラブコメドラマ『シングル・アゲイン』
- 涙、涙の、あの名作ドラマがついにファイナルシーズンへ…『POSE』シーズン3
- 人間の「尊厳」と「愛」を問う濃密な舞台:PLAY/GROUND Creation『The Pride』
- 等身大のゲイのLove&Lifeをリアルに描いた笑いあり涙ありな映画『ボクらのホームパーティー』(レインボー・リール東京2022)
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
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