REVIEW
掛け値なしに素晴らしい、涙の乾く暇がない、絶対に観てほしい名作映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
プライドマンスに韓国から届いた映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は、本気でみなさんに観てほしいと思う、とんでもなく面白くて素晴らしい映画でした。ぜひハンカチとティッシュをたくさん用意して、劇場へ。

ブッカー賞やダブリン文学賞にノミネートされたパク・サンヨンのベストセラー小説『大都市の愛し方』に収められている「ジェヒ」を映画化し、韓国で数々の賞を受賞した作品が『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』です。他人の目を気にせず自由奔放に生きるジェヒと、ゲイであることを隠して生きるフンスがソウルで出会い、同居したことから始まる物語。弱さもみっともなさも「ありのままの君でいい」と認めてくれる相手が傍にいたら、人生は勇気百倍、どんな困難も輝きに変えることができる…そんな誰もが憧れる唯一無二の絆を描き、国内外で多くの共感を呼んだ話題作。主演は『破墓/パミョ』で百想芸術大賞映画部門・女性最優秀演技賞を受賞し、ドラマ『トッケビ〜君がくれた愛しい日々』などでも知られるキム・ゴウンと、『パチンコ』に出演したノ・サンヒョン。『パラサイト 半地下の家族』『愛の不時着』などに出演のチャン・へジンなども出演しています。(以上、映画宣伝会社による解説より)
<あらすじ>
周囲から非難されることも多いが、気高く自由奔放でエネルギッシュなジェヒと、ゲイであることを隠して生きる繊細で寡黙なフンス。ある時、クラスメイトによってフンスの秘密が暴かれそうになったとき、手を差し伸べたのがジェヒだった。全く正反対の2人は、互いの違いを認め合い、ルームシェアをしながらかけがえのない学生生活を送っていく。世間のルールに縛られず、恋愛や夜遊びなども全力で楽しみながら生きるジェヒに刺激され、閉じこもっていたフンスも徐々に外の世界へと踏み出していく。そんな2人の関係は、大学を卒業してそれぞれの道に進んでも変わらないはずだった。しかし、社会に出た2人に大きな転機が訪れ、思いがけないかたちで友情が試されることになる…。



予想の100倍くらいよかったです。
なぜこの小説が世界的なベストセラーになり、映画化されたのか、その理由がよくわかりました。何度となく笑ったし、後半は涙が乾く暇がありませんでした。掛け値なしに素晴らしい名作でした。
ゲイと女性の友情を描いた映画というだけなら、そういう作品は山ほどあるし、ああ、またその手の映画ね、と思われそうなものですが、この映画は違いました。後半、泣けて泣けて仕方なかったのは(『夜間飛行』でハン・ギウンが「お礼参り」的に殴り込みをかけるシーンのように)ジェヒには帰国子女で自由奔放な女性としての生きづらさがあり、フンスにはゲイであることを自分自身受け容れきれていないゲイという生きづらさがあり、そういう“はみだし者”な二人がお互い、かけがえのない親友として、困難に直面した時に全力で助け合う――仁義を立てるじゃないけど、親友のためなら体を張るし、親友を侮辱する奴は許さねえ!と啖呵も切る、そういう(古き良き日本にもあったかもしれないけど)韓国らしい熱さ・エモさが、フェミニズムやゲイプライドと見事に融合しているからです。
ヤバい人がいっぱい出てきます。マザコン野郎とか、DV野郎とか、女をモノとしか思ってない男とか、説教したり殴ったりする産婦人科医とか、ホモフォーブとか。ジェヒとフンスは、そういうクソ社会にあって、傷つき、打ちひしがれ、怯えたりもしますが、決してくさらず、自分らしさを貫こうともがき、家父長制や異性愛規範や純潔規範に中指を突き立てます。だからこそ女性とゲイの共闘には必然性があるし、応援したくなるし、感情移入しまくりなのです。
でも、ちゃんと救いもあって、韓国社会は着実に『後悔なんてしない』の時代よりも前進していると思わせます。
そういった話が、実に見事な(天才的、と言っても過言ではない)ストーリーテリングや、ゲイらしいひねりの効いたセリフ回しで生き生きと描かれています。現代にこんなに面白い話を書ける人がいたのかという新鮮な驚き。青春だし、トレンディドラマっぽい要素もあったりするし、トータルではバランス感覚に優れた同時代的な大人のエンタメ映画になっていると思います。
パク・サンヨンの才能に脱帽。そして、監督のイ・オニにも拍手!です。キム・ゴウンとノ・サンヒョンもいい役者だと思いました(ノ・サンヒョンはパッと見、あまり二丁目系のゲイに受けなさそうなルックスですが、実に表情豊かで、すぐに魅了されると思います)
韓国のゲイ映画と言えば、以前は重くて暗い作品が多かったものの、『蛍の光』のような号泣必至の名作や、同性結婚式も挙げたキムジョ・グァンス監督によるゲイネスを肯定したポップな作品群や名作『二度の結婚式と一度の葬式』を経て、『チョンノの奇跡』や『Weekends』、『楽園』のようなゲイコミュニティのリアリティを伝える素晴らしいドキュメンタリーが製作され、『夜間飛行』のような切ない作品や、詩情豊かな純愛映画の傑作『詩人の恋』なども作られ、そうして今、『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』がプライド月間の日本に届けられました。
こうして見ると、韓国って本当にたくさん、忘れられない、心に残るゲイ映画を届けてくれてるなぁと思います。感謝です。
ともあれ、騙されたと思って、観に行ってみてください。ハンカチとティッシュをたくさん用意して。
ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
原題または英題:Love in the Big City
2024年/韓国/118分/G/原作:パク・サンヨン『大都市の愛し方』/監督:イ・オニ/出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン、チャン・へジン、クァク・ドンヨン、イ・ユジンほか
6月13日より全国拡大公開
INDEX
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- トランスジェンダーのリアルをコテコテの関西弁で描いた奇跡のコメディ映画『となりのとらんす少女ちゃん』
- フライングステージ「Closeted Life クローゼットライフ」
- アート展レポート:TORAJIRO個展「A Light That Never Goes Out」
- ゲイのリアルも描かれたドキュメンタリー映画『沼影市民プール』
- すべての裸は素晴らしい――ブロードウェイミュージカル『フルモンティ』
- セクシーさもありつつ胸が締め付けられるような映画『君の見る世界をなぞる』
- マーティン・シャーマンが『BENT』より前に書いたラブリーなゲイカップルの演劇作品『パッシング・バイ』
- 性的指向とは何か?という根源的な問いに迫る目からウロコな本:『パンセクシュアル宣言』
- CBC「ハートフルワールド」第22話「東京・新宿二丁目編」がなかなかよかったです
- アート展レポート:西村宏堂展「Cells - 細胞 -」
- かつてこんなにゲイゲイしいバレエがあったでしょうか…ベルリン国立バレエ『ヌレエフ』レビュー
- メキシコから届いたハッピーでキラキラなトランス・ドキュメンタリー映画『きっと青春大革命!カルラ8年の記録』
- 涙、涙の真実の物語:映画『シークレット・オブ・ミー』(レインボー・リール東京)
- バンパイアというマイノリティの悲哀と愛をクィアになぞらえて描いた異色作:映画『シレンシオ』(レインボー・リール東京)
- 奇想天外にしてノンジャンルな、まったく新しいクィア(ゲイ)映画『ユースフル・ゴースト』
- マレーシアで奮闘する人たちの姿を追った感動のドキュメンタリー映画『クィア・アズ・パンク』(レインボー・リール東京)
- 最高にパンクでエロティックなBruce LaBruce版『テオレマ』:映画『来訪者』(レインボー・リール東京)
- 恋する男子たちの姿に胸キュン…心に残る名作映画『せき止められた水』(レインボー・リール東京)
- ゲイの警官が主人公のセクシーなクライム・ラブストーリー『ボディ・ブロー』(レインボー・リール東京2026)
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