REVIEW
イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
元NFL選手で、恋愛リアリティ番組『バチェラー』に主演したあと、ゲイであることをカムアウトしたコルトン・アンダーウッドのその後を追ったドキュメンタリー番組です。ガス・ケンワージーらのサポートが素晴らしいです。
恋愛リアリティ番組『バチェラー(The Bachelor)』シーズン23で主役を務めた元NFL選手のコルトン・アンダーウッドが2021年4月14日、『グッド・モーニング・アメリカ』でゲイであることをカムアウトしました。
『バチェラー』は主役であるセレブな独身男性「バチェラー」の交際相手の座をめぐって数十人の女性たちが自分の魅力をアピールし、愛を勝ち取るまでを追う恋愛リアリティ番組で、4大ネットワークの1つABCのゴールデンタイムに放送され、同時間帯の視聴率トップを誇るほどの人気番組です。
高身長のイケメンマッチョで、NFLで10年間ランニングバックとして活躍したコルトン・アンダーウッドは、2019年放送の『バチェラー』シーズン23で主役に選ばれ、女性参加者のキャシー・ランドルフとハッピーエンドを迎えていました。結局彼女とは婚約はせず、2020年の3月に破局。2人の別れは決して友好的なものだったとは言えず、キャシーがコルトンをストーキングやハラスメントで訴え、接近禁止令を取得するという泥沼の展開に…。
コルトンは、「『バチェラー』に出たことを後悔している」「自分のアイデンティティを模索するうえで引き起こしてしまった混乱に人々を巻き込むべきではなかった、心から反省している、傷つけてしまったすべての女性たちに謝罪したい」と番組で語りました。泥沼破局を迎えたキャシーに対しても、「あんな終わり方になってしまって申し訳なかったと伝えたい。僕は失敗をおかしてしまいました。誤った選択をしてしまいました」と謝罪しました。
そんなコルトン・アンダーウッドが、どうしてゲイであることを隠したまま『バチェラー』に出ることにしたのか、NFLのアメフト選手としてカミングアウトして生きていくことがどれだけ困難なことだったか…ということも明かしつつ、周囲の友人や家族にカミングアウトしながら、また、友人のガス・ケンワージーのサポートも得ながら、少しずつゲイとしての人生を歩もうとしていく真摯な姿を捉えたドキュメンタリーが、Netflixの『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』です。全部でエピソード6まであるのですが、エピソード1〜3を観た段階でのレビューをお伝えします。
ガス・ケンワージーは、「まるで昔の自分を見ているようだ」「クローゼットにいることは最悪の事態を招く」「『ルポールのドラァグレース』の最後に必ず言う言葉がある。自分を愛せない人は他人を愛せないということだ」「ゲイコミュニティで素晴らしい経験をした。君もそうなる」といったアドバイスを贈りながら、全面的にコルトンをサポートします。
高校時代の親友の女性、キャシディは、カミングアウトを受けて「何があっても味方よ」と泣きながらハグしてくれます。お母さんも同様でした。しかし、厳格なお父さんにカミングアウトするのは「怖い」と恐れます…。お父さんへのカミングアウトがどんなだったか、結果はぜひ、番組で観てください。
それから、ガスが、コルトンのために、過去にカミングアウトした3人の元NFL選手、デヴィッド・コペイ、エセラ・トゥアオロ、マイケル・サムを呼んで、みんなで話をするというシーンがとても感動的でした。デヴィッド・コペイは1975年、NFLを引退して3年後に初めてカミングアウトしたレジェンドですが、最初の彼氏がベトナム戦争で戦死し、葬式に行きたいとコーチに言って、反対されたのですが、反対を押し切って参列したと語りました。ゲイであることを著書に書き、母親からは「家族に恥をかかせる気か」と言われたと。エセラ・トゥアオロは「彼の本に救われた。命の恩人だ」と語りました。胸を打つような言葉の連続でした。カミングアウトした後輩のためにこうして集まり、サポートの言葉をかけてくれる優しさ、あたたかさ。尊く、美しいシーンでした。
ほかにも、友人のゲイのホームパーティに参加したり(カムアウトしたカントリー・シンガーが弾き語りを披露してくれたり)、子育てをするカップルのお宅に訪問したり、アダルトショップへ行ってみたり、コルトンはいろんな初めてを経験していきながら、少しずつ、ゆっくりと、ゲイとしての人生を模索していきます。
29歳で全くの未経験だというコルトンは、純粋無垢な子どものようで、ちょっと性的な話をすると顔を赤らめたりするのですが、そんな超モテ筋な見た目とのギャップに「萌え」る方もいらっしゃることでしょう。
コルトン・アンダーウッド自身のことだけでなく、ゲイコミュニティのいろいろや、ゲイカップルの子育て、宗教との関わり(日本との違い)など、実に多彩な事柄が見えてきて、興味深いです。
ガス・ケンワージーの至れり尽くせり感が本当にスゴいのですが、同時に、ゲイコミュニティのサポートのあたたかさ、素晴らしさも伝わってきます。もしかしたら、(ゲイ活動を始めた最初の頃って、どんなお店に行ったらいいかわからなかったり、ゲイバーやイベントの雰囲気に慣れなかったり、誰しも戸惑ったりすると思うのですが)自分にもこうして、二丁目デビューや出会いを応援してくれる友達がいたらどんなによかっただろう…と思う方もいらっしゃるかもしれません。
勇気を出して(非難も覚悟のうえで)カミングアウトし、全くと言っていいほど今までゲイ活動をしてこなかったピュアなコルトンが、幸せになれるよう、応援したい気持ちになると思います(ある意味、「推し」的な感覚で観れるかもしれません)
セクシーショットもちょっとだけあります。
ぜひご覧ください。
コルトン・アンダーウッドのカミングアウト(全6エピソード)
https://www.netflix.com/title/81405046
INDEX
- 『ボーイフレンド』のダイ(中井大)さんが出演した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第2話
- これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
- まるでゲイカップルのようだと評判と感動を呼んでいる映画『ロボット・ドリームズ』
- 多様な人たちが助け合って暮らす団地を描き、世の中捨てたもんじゃないと思えるほのぼのドラマ『団地のふたり』
- 夜の街に生きる女性たちへの讃歌であり、しっかりクィア映画でもある短編映画『Colors Under the Streetlights』
- シンディ・ローパーがなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』
- 映画上映会レポート:【赤色で思い出す…】Day With(out) Art 2024
- 心からの感謝を込めて――【スピンオフ】シンバシコイ物語 –少しだけその先へ−
- 劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜』@座・高円寺
- トランス男性を主演に迎え、当事者の日常や親子関係をリアルに描いた画期的な映画『息子と呼ぶ日まで』
- 最高!に素晴らしい多様性エンターテイメント映画「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」
- カンヌのクィア・パルムに輝いた名作映画『ジョイランド わたしの願い』
- 依存症の問題の深刻さをひしひしと感じさせる映画『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』
- アート展レポート:ジルとジョナ
- 一人のゲイの「虎語り」――性的マイノリティの視点から振り返る『虎に翼』
- アート展レポート:西瓜姉妹@六本木アートナイト
- ラベンダー狩りからエイズ禍まで…激動の時代の中で愛し合ったゲイたちを描いたドラマ『フェロー・トラベラーズ』
- 女性やクィアのために戦い、極悪人に正義の鉄槌を下すヒーローに快哉を叫びたくなる映画『モンキーマン』
- アート展レポート「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」
- アート展レポート:THE ART OF OSO ORO -A GALLERY SHOW CELEBRATING 15 YEARS OF GLOBAL BEAR ART
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