REVIEW
レビュー:tpt『プライド』
1950年代と現代、2つの時代を生きるゲイたちと女性、それぞれの時代の苦悩、どちらの時代にも共通する思い——新時代のゲイ演劇がtptという実力派劇団によって見事に日本初演されました。レビューをお届けします。

こちらのニュースでもお伝えしたように、『エンジェルス・イン・アメリカ』や『蜘蛛女のキス』、『BENT』といったゲイ演劇を上演してきたtptが、15日から『プライド』という作品を上演しています。さっそくこの舞台を観てきましたので、レビューをお届けしたいと思います。
観終わっての率直な感想は、「こんなにゲイゲイしい芝居が上演されるなんて…しかも現代を生きるゲイの姿がリアルに描かれていてスゴイ」「途中、本当に痛々しいシーンもあったけど、ラストシーンは希望を感じさせてよかった」「何とも濃密にして複雑で…深い芝居だった」という感じでした。役者さんの演技が素晴らしく、本当に丁寧に作られた一流の舞台で、2時間45分があっという間に感じました。
『プライド』は、1950年代と現代という2つの時代を生きるオリヴァー、フィリップ、シルヴィアの3人の姿を交互に描きだしています。
1950年代、シルヴィアの仕事の上司であるオリヴァーが家を訪問しますが、フィリップとオリヴァーの間の「何か」をシルヴィアは感じ取ります。その予感は的中で、二人はお互いに惹かれ合い、シルヴィアのいない間に逢瀬を重ねます。しかし、フィリップは男性を愛してしまった自分を受け容れることができず…。
そして2008年(現代)、オリヴァーとフィリップは1年半のつきあいに終止符を打ち、別れたばかりです。オリヴァーが誰彼かまわずハッテンし過ぎるため、フィリップがついていけなくなったのです。オリヴァーの親友であるシルヴィアは、ゲイプライドの日に二人を誘います…
大まかに言うとこういうストーリーで、両方の時代が交互に展開されていきます。セリフの言い回しもかなり現代的ですし、コミカルなシーンもあれば、「一般の観客には刺激が強すぎるんじゃ…」と思うようなゲイセックスについての赤裸々なセリフもあります。

しかし、この作品は、単純に50年代と現代の対比によって「今はなんと恵まれた時代なんだろう」と思わせておしまい、では全くありません。今は今で、やはりいろんな壁が、問題があり…僕らが生きている今この時代のゲイのリアリティを浮かび上がらせています。そこが新しいところです。原作のアレクシ・ケイ・キャンベルは、この現代に生きる障壁を「市場原理が支配する社会、その一員になるために自身のコアな欲求に誠実でいることをやめなければならない社会、あらゆるものが交換可能だと、そしてあらゆることが商取引だと唱えられている社会」と語っています。「もしかしすると後者(現代)は、前者(1950年代)に対するレスポンスなのかもしれません——暗黙のものは露骨になり、隠れていたものがあからさまになり、秘められていたものがけたたたましいものになるのです」
どちらの時代のオリヴァー、どちらの時代のフィリップも、それぞれにいらだちや苦悩を抱えています。しかし、「どうすれば幸せになれるのか(愛は可能か)」という問いと格闘し、自分に正直に生きようとする姿は共通です。「ゲイにとって幸せとは何か」をめぐる葛藤は、2つの時代に限らず、永遠のテーマなのかもしれない、と思いました。それは、生きる国が異なる僕らにとっても同じことなのです。
それから、オリヴァーとフィリップという「運命の恋人」の間には常にシルヴィアという女性がいるのですが、彼女の存在が実はものすごく象徴的な意味を持ち、重要な役割を担っている気がしました。シルヴィアは、単に夫を寝取られた妻というだけでなく、ゲイ好きな女性(Fag Hag/おこげ)というわけでもなく、もっと…女神のような存在かもしれない(50年代、オリヴァーがギリシャで「デルポイの神託」を聞いたというエピソードを披露する場面があります)、僕らゲイは二人だけでうまくやってくことは難しく、彼女のような存在を必要としているのかもしれない…と感じました。
ともかく、濃密で、複雑で、深い…たぶん上演がとても難しい芝居だったと思うのですが、さすがはtpt、見事に舞台化していました。興味がある方はぜひ、ご覧になってみてください。
tpt『プライド』
日程:12月15日〜25日
会場;d-倉庫(東京都荒川区東日暮里6-19-7-2F 日暮里駅南口より徒歩7分)
料金:全席指定4,500円、25歳以下&65歳以上(tpt電話予約&当日券のみ)3,000円
作:アレクシ・ケイ・キャンベル
訳:広田敦郎
演出:小川絵梨子
出演:馬渕英俚可、須賀貴匡、山口馬木也、谷田歩
INDEX
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- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
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- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
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- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
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- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
SCHEDULE
- 09.27さっぽろレインボープライド
- 09.27ポケソンナイト5
- 09.27M☆night2026 〜Warm Wake〜 中島の上みゆきの下






