REVIEW
劇団フライングステージ第39回公演『PRESENT』
2003年、「誰も死なないエイズの話」として上演された『PRESENT』が、11年の時を経て改訂再演されました。もともとが名作だったのですが、さらに今の時代のリアリティが盛り込まれ、大傑作になった感があります。ぜひご覧ください。

2003年、「誰も死なないエイズの話」として上演された『PRESENT』が、11年の時を経て改訂再演されました。もともとが名作だったのですが、さらに今の時代のリアリティが盛り込まれ、大傑作になっていたと思います。恒例の初日レポートをお届けします。(後藤純一)
主役であるゲイカップル、太陽と真人は、のびのびと幸せにゲイライフを謳歌しています。特に太陽はお母さんにもカミングアウトしていて(高校時代にカミングアウトしたときのエピソードが面白かったです)、オープンな感じ。なのですが、ある告白によって、二人の関係にひびが入ることに…
誰かの胸を借りて泣きたくなったり、HIVに感染したこととゲイである自分の両方を受け容れなくてはならない重圧に負けそうになったり、周囲の人の反応に胸が痛くなる思いがしたり、HIV陽性であるということのリアリティがさまざまに描かれています。
一方で、治療が進んだ今では、HIVに感染したからといって亡くなるということはほとんどないし、みんな元気に暮らしてる、ゲイの間での偏見や恐怖心みたいなものも少なくなってきているということ、HIV感染がわかってはじめて生きていることの幸せを感じたりすることもある、といったこともちゃんと描かれていました。
20年くらい前は、ゲイであること自体が、なかなか家族に言えないことでした。10年前頃だと、ゲイであることを誇りに思い、カミングアウトする方もずいぶん多くなりましたが、HIV陽性であるということはなかなか家族には言えませんでした。そして今は、HIV陽性者としてカミングアウトする(TVにも出演する)方もいらっしゃいます。これでオールOK!ということでは決してありませんが、着実に前進していることがあるのは間違いないと思います。
『PRESENT』が初演された2003年は、新宿二丁目にコミュニティセンター「akta」がオープンした年でした。しかし、11年経った今回は、「akta」の存続を求める署名の用紙が配られていたのでした…(このお芝居をご覧になった方は、きっと「akta」に行ってみたくなったり、快く署名にご協力くださったと思います。(ご覧になれない方も、ぜひこちらの記事をご一読のうえ、「akta」まで足を運んでいただける方はぜひ、署名へのご協力をお願いいたします)
それから、今回の再演(と言っても、ところどころ改訂されています。『大奥』が『アナと雪の女王』になってたり。笑)では、HIV/エイズのことだけでなく、ロシアの反同性愛法への抗議行動やヘイトスピーチへのカウンターデモや集団的自衛権への抗議デモついても触れられていました(そうしたことへのゲイの間での温度差みたいなことも)。ファシズム復活の足音が聞こえる今のこのきな臭さは、ゲイのことやHIVのことと関係ないように見えるかもしれないけど、根っこのところでつながっているということを、問題提起しているように思えました(とても意欲的で素晴らしい切り口!と感動しました)
2003年の初演時同様、主人公の家にはお母さん(関根さん)や、なかよしのゲイ友(石関さん)がしょっちゅう遊びに来ておせっかいを焼くのですが(昭和の人情モノを彷彿させるものがあります。ジーンときます)、どんなにつらいことがあっても、どんなに厳しい時代になっても、生きていくうえでいちばん大切なのは、そういう「家族」と呼べる人たちなんだろうな…と思わせました。
それにしても、フライングステージのお家芸(あるいは二丁目の伝統芸能)とも言うべき関根さん(女装)と石関さん(オネエ)のトークには、大いに笑わせていただきました。実は今回、関根さんと石関さん以外、2003年の初演時とはキャストが総入れ替えになっていたのですが、主役のお二人がイマドキなあまりゲイっぽくない雰囲気になってたり(初演時の主役は亡くなった早瀬さんでした…そのことを思うと、涙がにじんできたり)、HIV陽性者を支援するボランティアをやっている方が「akta」のジャンジさんそっくりの女性だったりして、素敵でした。
そして、いつにも増して役者さんの演技が素晴らしく、この芝居に対する熱意が感じられました。
これまであまりフライングステージの舞台を観たことがないという方も、今回だけはぜひ、ご覧いただきたいと思います。
劇団フライングステージ第39回公演「PRESENT」


会場:下北沢 OFFOFFシアター
チケット:全指定席¥3500、ペアチケット¥6500、トリプルチケット¥9000、学生¥2500(入場時受付で要学生証提示)、当日券¥3800、当日学生券¥3000(入場時受付で要学生証提示)
作・演出:関根信一
出演:石関 準(フライングステージ)、岸本啓孝(フライングステージ)、木村佐都美(おちないリンゴ)、阪上善樹、澤口 渉(ロデオ★座★ヘヴン)、小浜 洋(ヨウ改め)、関根信一(フライングステージ)
照明:伊藤 馨
音響:樋口亜弓
衣裳:石関 準
舞台監督:水月アキラ
イラスト:ぢるぢる
フライヤーデザイン:石原 燃
制作:渡辺智也、三枝 黎
協力:おちないリンゴ、ロデオ★座★ヘヴン、M・M・P、CoRich舞台芸術!
企画製作:劇団フライングステージ
INDEX
- 性の多様性について子どもから大人まで理解し共感できる決定版的な良書『多様な性を生きる LGBTQ+として生きる先輩たちに人生のヒントを聞いてみた』
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
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