REVIEW
劇団フライングステージ第45回公演『アイタクテとナリタクテ 子どもと大人のフライングステージ』
LGBTかもしれない小学生とその親や先生たちの物語で、いつもより短くまとまった作品ですが、十分楽しめました(というか、泣けました)。11月4日まで上演されますので、ぜひご覧ください。

劇団うりんこ『わたしとわたし、ぼくとぼく』で、児童向け作品を初めて書き下ろした関根さんですが、今回の『アイタクテとナリタクテ』は、この10月にエンパク=早稲田大学演劇博物館の「こども演劇教室」(有名な平田オリザさんが講師を務める小中学生向けワークショップ)の関連イベントとしてリーディング公演&トークセッション「こどものためのフライングステージ」の中で発表された作品です。
最近、児童青少年向けのお芝居を手がけることが多くなってきたのは、取りも直さず学校演劇や教育の世界でLGBTのことに取り組みたいというニーズが高まっているということなのでしょう。関根さんは間違いなく日本のLGBT演劇の第一人者でしょうから、今後もいろいろお声がかかりそうですね。
(ちなみに、早稲田大学演劇博物館といえば、11月2日から始まる 2019年度秋季企画展「コドモノミライ ― 現代演劇とこどもたち」の中で、『わたしとわたし、ぼくとぼく』に関する展示も行われるそうです)
そのようなわけで、『アイタクテとナリタクテ』は、いつものフライングステージの本公演作品とは少し趣が異なっていて、上演時間が1時間ちょっとと短めで、そして、お子さんにも観ていただけるということを意識した作品になっていました。と言っても、ふつうに大人でも楽しめますし、フライングステージ節は健在です。もしかしたらフライングステージの舞台を観たことがないという方や、長時間座ってるのが苦手という方などにもオススメできるかも?と思いました。
『アイタクテとナリタクテ』は、誰もが知っている童話や、最近とても目にする機会が増えているLGBTの絵本などを題材にして、小学校の学芸会で上演するお芝居をめぐってLGBTかもしれない小学生とその親や先生たちがドラマを繰り広げるという物語になっていました。
<あらすじ>
タイガは小学6年生。今年の学芸会で『人魚姫』をやることになった。先生が希望の役はあるかと聞いたら、友達のショウが人魚姫をやりたいと手を挙げた。ざわつくクラス。自分が人魚姫にふさわしい、誰か推薦してくれないかなと内心思っていたハルナは、焦って立候補する。「男が人魚姫とか、ないでしょ? 私で決まりよね」。タイガやショウの親友、ユウセイは、「そんなことないよ。面白いかもよ」とショウをかばい、人魚姫の役はオーディションで選ぶことに。3人での帰り道、「ショウは女の子になりたいの?」「わからない。ただ、このまま中学に行って学生服着るのはいやなんだ」「うーん…わかったようなわからないような…」。一方、王子様役がやりたいんじゃないの?と聞かれたユウセイは、「僕は王子様になりたいっていうより、王子様に会いたいんだ」とカミングアウトする。実は、このお話の主役であるタイガにも、秘密があった…。
タイガくんの秘密は、言ってしまうとアレなので、伏せますが、ハッとさせられましたし、未来を感じさせました。フライングステージは90年代からずーっと、一貫して、ゲイやゲイの周囲の人々を、世の中の移り変わりにしたがって、リアルタイムで描いてきましたが、そうだよね、次はそこだよね、と思わせました。そして、最後に泣かせてくれたのもタイガくんでした(たぶん、周りで観てた方も、そこで泣いてたと思います)。タイガくん役の木内コギトさんは、たぶんフライングステージに出演するのは初めてじゃないかと思いますが、うんうん、イマドキの小学生ってこういう感じだよね、と妙に納得させるような、独特の佇まいの方で、思わず引き込まれました。
それから、ショウくんやユウセイくんが、自分はトランスジェンダーです、ゲイです、みたいにはっきりと断言するのではなく、「わからないんだけど…」と言っているのが、小学生としてリアルだと感じました。そして、そんな彼らのはっきりわからない性を、ちゃんと尊重し、見守ってくれる大人たちの存在が本当に素晴らしく、僕の子ども時代にこんな大人たちがいたら、どんなによかっただろう…と思えました。ぜひ、小中学生や学校の先生や親御さんにも観ていただきたいですね。
で、漠然と思ったのは、これは小さなハコでやるお芝居で終わるのはもったいないな、ということです。全国の小学校とかで上演されたらいいなぁと思うものの、役者さんが全員移動しながらの地方巡業って、けっこう大変ですよね…。もし映画になったら、全国のたくさんの人に観てもらえるのではないか、『カランコエの花』とかよりももっと意味のある教材になるのではないかと思いました。
11月4日まで上演されますので、ぜひご覧ください。
なお、下北沢の駅も、駅周辺の光景も、ガラリと変わっています。東口を出て、右手にちょっと回り込むような感じで20mほど歩いていただくと、目の前に「OFFOFFシアター/駅前劇場」のビルがあります(このビルも前とはだいぶ変わっていますが、看板が出ていますので、注意深く見てみてください)

劇団フライングステージ第45回公演「アイタクテとナリタクテ 子どもと大人のフライングステージ」
日程:2019年10月30日(水)〜11月4日(月祝)
会場:下北沢 OFFOFFシアター
料金:前売3500円、ペア6500円、トリプル9000円、学生2500円、当日3800円、当日学生3000円ほか(チケットはこちら)
作・演出:関根信一
出演:石坂純、石関準(劇団フライングステージ)、木内コギト(\かむがふ/)、岸本啓孝(劇団フライングステージ)、木村佐都美(おちないリンゴ)、小林将司、清水泰子、関根信一(劇団フライングステージ)、芳賀隆宏
※それから、年末恒例のgaku-GAY-kaiですが、12月29日、30日に新宿シアター・ミラクルで開催されるそうです。29日14時は第一部「贋作・から騒ぎ」のみ上演です。
INDEX
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
- 『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
SCHEDULE
- 01.18がいずば14周年&がい還暦パーティー







