REVIEW
ドラマ『きのう何食べた?』
期待を裏切ることなく、とてもいいドラマに仕上がっています。たくさん笑えたし、料理も美味しそうだったし、いろんな喜びがあって、幸せな気持ちになれるドラマです。ネットでも視聴できます。

昨年11月、ゲイカップルの日常をリアルに描く傑作として名高いよしながふみ先生の『きのう何食べた?』が実写ドラマ化、主演は西島秀俊さんと内野聖陽さんと報じられた瞬間、ネットで話題になり、今年1月にはイメージビジュアルが公開され、「再現度高すぎ」とファンが沸き、期待が高まっていましたが、この4月5日、ついに、待ちに待った『きのう何食べた?』第1回が放送されました。レビューをお届けします。(後藤純一)
よしながふみ先生の原作漫画が本当に素晴らしいので、内容については何の心配もありませんでしたが、実写化にあたり、脚本や、演出の仕方によっては、原作の良さを台無しにしてしまう場合もなきにしもあらずですので、そこはちょっと緊張感を持って観ていました。
でも、観終わって、不安は吹き飛びました。オープニングの、シロさんが料理しているところをケンちゃんがスマホで撮ってるシーンの幸せ感は素晴らしかったし、たくさん笑えたし、料理も美味しそうだったし、いろんな喜びがあって、本当にいいドラマに仕上がっていたと思いました。
原作のファンのみなさんは、その再現度の高さに満足したことでしょう。
そうじゃない方も、ケンちゃん(内野さん)が「みんな奥さんや子どものことを幸せそうに話してるのに、なんで俺だけ、一緒に住んでる人の話を誰にもしちゃいけないの…?」とさめざめと泣くシーンには、思わずもらい泣きしてしまったのではないでしょうか。
西島秀俊さんは1993年の『あすなろ白書』ですでにゲイ役を演じていましたが(レジェンドですね)、今回は1円でも安く食材を買おうとスーパーを何軒もハシゴし(わかりみ深い)、手際よく家庭的な料理を作るイケメン弁護士の役を(怒鳴るシーンで男っぽさが強く出過ぎてる感もありましたが)自然に演じていましたし、はにかむシーンもカワイくてキュートで、こんな彼氏ほしい〜と思った方も多かったハズ。一方、内野聖陽さんは、見た目も演技も男っぽくてガタイもいい方なので、果たして能天気でキャピキャピした美容師のケンちゃんを演じられるのだろうか…という一抹の不安もあったのですが、さすがは演技派のベテラン、見事な演技で魅了してくれましたし、役作りに懸ける情熱が伝わってきました(ネット上でも「カワイイ」「素晴らしい」「漫画のイメージ通り」という絶賛の声がたくさん上がっています。一部、「オネエじゃなくて無邪気な少年っぽくしてほしい」といった声もあり、なるほどな…と思いました)
役者さんで言うと、梶芽衣子さんの登場に狂喜乱舞した方も多かったことでしょう。映画『女囚701号/さそり』では佇まいと目ヂカラの迫力の凄まじさで稀有なキャラクターを作り上げ(セリフは『私を売ったね』『死んでるよ』のたった二言のみ)、主演作『修羅雪姫』はタランティーノをして映画『キル・ビル』でオマージュを捧げさせた(劇中で「修羅の花」と「怨み節」が流れた)という伝説の女優が、「同性愛は少しも恥ずかしいことじゃないのよ!」というセリフを地上波で言ってくれる日が来るなんて! ほかの女優さんが「どうして職場でカミングアウトしないの!」とシリアスに言ってしまうと、笑えなくなってしまうのですが、梶芽衣子さんだと、それすらもどこかギャグとして楽しめてしまうというマジック。二丁目でマーケティングリサーチしたのではないかと思われる、絶妙なキャスティングだと思いました。
ほかにも、チャンカワイさん、MEGUMIさん、マキタスポーツさんなど、個性的な方々が出演しています。
原作は漫画なので、ドラマもコメディである必要がありますが、でもそれは、ゲイを笑いものにするのでは決してなく、いろんな人が登場するその個性に由来するおかしみや、状況が生み出す面白さでなくてはなりません。なかなか難しいことかもしれませんが、そこは見事に成功していると思います。今後のゲイドラマの見本、基準点になるんじゃないでしょうか。
あとは、なんと言っても、料理のシーンが実写になった喜びですよね。できあがったご飯の美味しそうなこと…(ご家庭でもきっと「あのシャケは炊き上がったあとほぐしてるんだよね?」とか「かぶってあまり使わないけど、アリかも〜」とか話しながら観れると思います)。うちでも炊き込みご飯作ってみよっかな?と思った方も多かったはず。ハーゲンダッツもきっと(スーパーで)売れたことでしょう。
ドラマは、このあと、小悪魔的なキャラの「ジルベール」も登場するそうで、楽しみです(演じるのは磯村勇斗さん。ハマってる予感がします。ただし、ジルベールの彼氏の小日向さん(顔がベースボールみたいなゴツい感じの人)は山本耕史さんだそうで…ちょっとイメージと違うかな?と思ったり)
というわけで、上々のスタートを切ったドラマ『きのう何食べた?』ですが、テレビ大阪では翌週月曜深夜の放送ですし、地方によっては、放送開始が5月だったり、時間もぜんぜん違ったりします。見逃した!という方や、放送が待ちきれない!という方は、TVerというサイトで4/13までネット配信されていますので、ご覧ください。
TVer『きのう何食べた?』第1話
https://tver.jp/episode/56742759
ドラマ『きのう何食べた?』
原作:よしながふみ
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
出演:西島秀俊、内野聖陽
4月クール
毎週金曜深夜0時12分~(テレビ東京系)
翌週月曜深夜0時12分〜(テレビ大阪)
※奈良や滋賀、和歌山、東北地方は放送開始もまだ先ですし、時間も全然異なるようですので、各局でご確認ください
(c)「きのう何食べた?」製作委員会
INDEX
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
- Visual AIDS短編集『Being & Belonging』
- これ以上ないくらいヘビーな経験をしてきたゲイの方が身近な人たちにカミングアウトする姿を追ったドキュメンタリー映画『カミングアウト・ジャーニー』
- 料理を通じて惹かれ合っていく二人の女性を描いたドラマ『作りたい女と食べたい女』
- ハリー・スタイルズがゲイ役を演じているだけが見どころではない、心揺さぶられる恋愛映画『僕の巡査』
- 劇団フライングステージ 第48回公演『Four Seasons 四季 2022』
- 消防士として働く白人青年と黒人青年のラブ・ストーリーをミュージカル仕立てで描いたゲイ映画『鬼火』(TIFF2022)
- かつてステージで華やかに活躍したトランス女性たちの人生を描いた素敵な映画『ファビュラスな人たち』(TIFF2022)
- 笑えて泣ける名作ゲイ映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』爆誕!
- かぎりなく優しい、心温まる感動のゲイ映画『幸運の犬』
- キース・ヘリングの生涯を余すことなく描いたドキュメンタリー映画『キース・ヘリング~ストリート・アート・ボーイ~』
- ディズニー/ピクサー長編アニメとして初の同性カップルのキスシーンが描かれた記念碑的な映画『バズ・ライトイヤー』
- 実在のゲイの生き様・心意気へのオマージュであり、コミュニティへの愛と感謝が込められた感動作:映画『スワンソング』
- ゲイが女性の体を手に入れたら!? 性をめぐるドタバタを素敵に描いた台湾発のコメディドラマ『美男魚(マーメイド)サウナ』
- 家族のホモフォビアゆえに苦悩しながらも家族愛を捨てられないゲイの男の子の「旅」を描いた映画『C.R.A.Z.Y.』





