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レポート:LGBTQ Tourism Conference in Osaka
大阪観光局が観光関連企業に向けてLGBTQツーリズムをテーマとしたコンファレンス・イベントを日本初開催しました。コンラッド大阪ボールルームというラグジュアリーな会場で、ドラァグクイーンがおもてなしするたいへんゴージャスなイベントとなりました。
「日本初のLGBTQツーリズムコンファレンスが大阪で開催」のニュースでお伝えしていたように、2021年2月19日(金)、大阪観光局が観光関連企業に向けてLGBTQツーリズムをテーマとしたコンファレンス・イベントを日本初開催しました。こちらの模様をレポートいたします。(後藤純一)
(写真は一部OUT JAPANからも提供していただきました)
コンラッド大阪は中之島フェスティバルタワーウェストの最上階に位置するラグジュアリーホテルで、客室を含む全ての施設から地上200mのパノラマビューを楽しむことができます(人が少ないこの時期でも、平日で1泊4万円台、週末だと1泊6万円くらいだそうです)。庶民には縁のない、こんなことでもなければ一生足を踏み入れることもなかったであろう高級ホテルのボールルームを貸し切って、日本初のLGBTQツーリズムコンファレンスが開催されました。
大阪は万博の前年にあたる2024年、IGLTA(国際LGBTQ+旅行協会)の年次総会という国際会議を誘致することを目指しており(実現すればアジア初)、世界のLGBTQソサエティへのアピールとして今回、このようなグローバルスタンダードなスタイルでのコンファレンスを開催したのでした。
前日の夕方には雪がちらついていたくらい、寒さが厳しかった大阪。2月19日(金)12時過ぎ、コンラッド大阪38Fのボールルームに到着すると、そこは、大阪の街を眼下に一望できるガラス張りのホワイエ、そして、なかなかお目にかかれない大きな螺旋階段が上の階(ホテルの宿泊階)へと続く、たいへんラグジュアリーなスペースでした。しばらくすると、大阪の豪華クイーンの方たちがフロアに登場し、特設パネルの前でお客様と一緒に写真に写ってくれるというサービス(おもてなし)が始まりました。ドラァグクイーンほど、この最高級のゴージャスな空間を彩るのにふさわしい存在はないな、と感じました。
13時にボールルーム1でツーリズムコンファレンスが始まりました(なお、ボールルーム2では「LGBT-Allyサミット」という企業の方たちが社内LGBTQ施策に関する情報交換を行なうコンファレンスが開催されていました)
最初に司会のドリアン・ロロブリジーダさんが、JALのLGBT-Allyチャーターに搭乗した時のピンクの衣装で登場し、(ビジネスパーソン相手だからといって堅苦しくするのではなく)いつものように自己紹介しました。
それから、大阪観光局の溝畑宏理事長(元観光庁長官)からご挨拶がありました。独特のユニークなポーズで壇に上がったかと思うと、ドリアンさんにからんだり、ひとしきり面白い動きをしたあと、真面目に語りはじめました。東北の地震の被害にあわれた方へのお見舞いのメッセージから始まり、コロナ禍でいろんなことが制限されている時期ではあるものの、観光には未来があると、2025年の万博はSDGsがテーマだけれども大阪観光局はSDGsのなかでもLGBTQのことをメインにやりたい、と語りました。たいへん素晴らしいスピーチでした。
続いて、大阪観光局マーケティング室/広報の木村部長からLGBTQツーリズムへの取組みについてお話がありました。世界のプライドイベントや台湾での同性婚のこと、日本の同性パートナーシップ証明制度はすでに1500組が利用しているが、大阪が全国で最多であるといったお話から始まり、観光資源も豊富で、ラグジュアリーな体験も提供でき、魅力的なゲイシーンがあり、人を楽しませることができる大阪という街は、LGBTQツーリストにこそふさわしいと、そして、2018年にファムトリップ(海外のLGBTQのインフルエンサーをご招待)を実施したところ、すぐに効果が現れた(海外の富裕層LGBTQやHIV関係のお医者様などが来てくれた、みなさんインターコンチネンタルやリッツ・カールトンといったラグジュアリーホテルに泊まった)という興味深い事例も紹介してくれました。木村さんは「彼らに選ばれる大阪でありたい。LGBTQでアジア1を目指したい」と語り、IGLTA総会誘致への意気込みや、同性結婚式のプランニングなど今後の夢も語ってくれました。LGBTQツーリズムへの本気度がひしひしと伝わってくる、熱いお話でした。
それから、今回のイベントの企画やPRを請け負ったOUT JAPANの小泉伸太郎会長(IGLTAのアジア・アンバサダーでもあります)から、LGBTQツーリズムの基本についてお話がありました。最新事例として米国のトランスジェンダー・ツーリズムのことが紹介されていたのが印象的でした。途中で「NUDE」など大阪最大のゲイナイトを開催するKobaさんを招き入れ、ゲイナイトがどれだけスゴいか(ハコのお酒の売上げ記録を作ったとか)ということや、海外ではこういうクラブイベントと旅行のパッケージがポピュラーになっているという話をしていました。個人的には、会場のストレートの中高年男性の方たちに向けて、ドラァグクイーンやGOGO BOYの写真をスクリーンに映しつつ、セクシャルな面もあるゲイナイトのことがきちんとプライドをもって語られていたことに、感銘を受けました。一般の企業向けLGBTQ研修では決して二丁目やクラブイベントの話は出てきませんが、ツーリズムという文脈では、僕らの大切なクラブカルチャーのことが誇るべきものとして語られるというのが素晴らしいです。大阪観光局の木村さんが「観光はハッピー産業」とおっしゃっていましたが、考えてみれば、ハッピーを追求するゲイカルチャーと観光産業がシンクロするのは当然のことかもしれないですね。
前半の最後に、JALのLGBT-Allyチャーター便を成功させた東原さんと、パームロイヤルNAHAの総支配人でありピンクドット沖縄の主催者でもある高倉さんが登場し、それぞれの取組みを説明したあと、ドリアンさんも交えたトークショーが行なわれました(だからあのチャーター便の時のピンクの衣装を着てたんですね)。高倉さんが、LGBT支援を始めてから、何かアンチの人からいやがらせをされたとかそういうことが一つもない、リピーターのお客さんが実は自分もゲイで、と話してくれたとか、この人手不足の時代に、LGBTフレンドリーだからという理由でうちのホテルを志望してくれたとか、いいことしかない、と話していたのがとても印象的でした。また、小泉さんの、観光関連のいろんな会社から、今すぐLGBTにプロモーションしたいと言われることが結構多いが、研修を受けたり、きちんと基本的なことを学ばないとダメですと伝えています、というお話も非常に大事なことだと感じました。
休憩時間には、クイーンさんたちが螺旋階段のところでポーズを決め、写真撮影大会が始まったりしました。
後半の最初のプログラムはIGLTAとのトークセッションでした。壇上にはOUT JAPAN小泉さん、大阪観光局木村さん。そしてIGLTA副代表のClark Massadさん、同じく副代表のLoAnn Haldenさんがオンラインでつながり、スタートしました。
初めに、「コロナ後のLGBTQ旅行者の意識調査結果ならびにLGBTQツーリズムのトレンド」というあらかじめクラークさんとロアンさんが解説したビデオが上映されました。911やリーマンショック後に最も早く旅行を再開したのがLGBTQであった(回復力の高さ)、2020年5月にアフターコロナのLGBTQ旅行意識調査を行なったところ(回答者は世界15000人のLGBTQ)2/3が年末までに旅行を再開したいと望んでおり、行き先はこれまでと変更しない(ロイヤルティが高い)ことが明らかになった、したがって、LGBTQを歓迎しながら安全性を確保できる旅行先は強いということ。そして、企業がLGBTQ旅行者とつながるためのポイント、必ずしもLGBTQフレンドリーじゃない街でできること、最新の世界のLGBTQ旅行のトレンドなども教えていただき、たいへん学びの多いものでした。
上映後、より多くのLGBTQ旅行者が大阪を訪れるようになるためにはどうしたらよいか? LGBTQに喜ばれる旅行商品づくりとは?という質問について、お二人にお答えいただきました。
続いて、LGBTQフレンドリー企業によるトークショー(ツーリズム以外の企業編)が行なわれ、大関とP&Gの方が登壇しました。
大関は「ONE LOVE、ONE CUP」というコピーのレインボーワンカップを海外で発表したことがニュースになりました。江戸時代から続く会社で、コンサバな社風だそうですが、努力して経営陣を説得したそう。海外で即完売し、ステイクホルダーからも好評を得て、反響の大きさに驚いているそうです。レインボー商品なら、ということで新たに取り扱ってくれるようになった小売店もあったそうです。
パンテーンのトランスジェンダーの就活をテーマにした広告が話題になったP&Gは、意外にも社内でLGBTQの施策に取り組み始めたのは最近のことでした。「当事者の方を傷つけるような表現は絶対にしない」ということを誓い、広告の制作にあたっていたそうで、発表後の反響に胸をなでおろしたと、当事者だけでなく一般の方からの反応もよかったのがうれしかったと語っていました。
イベントのフィナーレは、関西が誇るドラァグクイーンのみなさんによるショータイム。
フェミニーナさんは美しい白のドレスで登場し、王道のリップシンク・ショーを披露(曲はグレイテスト・ショーマンの「Never Enough」)、OZさんはVIVIさん、AKIKO KARDASHIANさん、男の子のバックダンサーを従えたダンス・ショー(バーレスクの「Show Me How You Burlesque」)、ベビーヴァギーさんは衣装がだんだん変化していくポップなショー(ケイティ・ペリー「Firework」)、そして「クイン界の総合百貨店」ROBIN E.McQUEENさんのコミカルな「アナ雪」ショーというバラエティ感あふれる構成の、初心者の方にもとっつきやすい、お得感満載なショータイムでした。ショーの後、4人のクイーンさんが壇上でひとしきりトークを繰り広げ(ドラァグを始めたきっかけは?とか)、最後にドリアンさんの「お祭りマンボ」ライブでフィナーレを迎えました。
企業向けコンファレンスで、コンラッド大阪でドラァグ・ショーが繰り広げられるという前代未聞感もさることながら、全くストレートに媚びることなく(下ネタを避けるとかの気遣いはあったものの)ゲイカルチャーをそのまま発信したことが素晴らしく、いたく感動しました。
お客様はエンタメにやさしい旅行関連の会社の方たちでしたし、みなさん楽しんでくださったと思います。
イベントが終わると、再びパネルの前で写真撮影大会になり、お開きとなりました。
クイーンのみなさん、朝早くから(10時くらいからメイクを始めるという苦行)本当におつかれさまでした、という気持ちと、ある意味、大阪らしい、パワーがもらえるイベントに参加できて本当によかったという感謝の気持ちです。
☆フォトアルバムはこちら
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日本初の企業向けLGBTQツーリズムコンファレンスに参加して感じたことをお伝えします。
ここ数年、同性パートナーシップ証明制度や同性婚やLGBTQ差別禁止法の制定といった権利擁護運動が盛り上がりを見せ、そして各企業でのSOGIハラ・アウティングの禁止や研修などのLGBTQ社内施策の推進なども広がっていますが、それと並行して(コロナ禍の影響で本当に深刻な)二丁目的なものやクラブ的なもの、言い換えるとゲイコミュニティやゲイカルチャーが消えてしまわないようにすることも大事で、しかし当事者の努力だけでは限界があるので、世間(行政や企業)が関心を持ち、支援してくれるようになったらいいのだけれど…と常々思っていました。そういう意味で今回のイベントは、「世間」がゲイカルチャーとタッグを組むという奇跡をまざまざと見せつけられ、LGBTQツーリズムこそが希望なのだということをひしひしと感じる機会になりました。
いろんな意味で閉塞的な今ですが、2024年にはきっと世界中から大阪にLGBTQがやって来る一大イベントが開催されることを夢見ます(そうなると大阪のクイーンのみなさんがさらに活躍することでしょう。伝説の「DIVA JAPAN」@バナナホールのようなクイーン大集合なイベントもありえるのではないでしょうか)
その成功を糧に、ゲイゲームズやワールドプライドのようなさらに大型のイベントも誘致できるようになるといいな、と思います。それは決して不可能なことじゃないと、今回のイベントを経験して、ようやく実感できるようになりました。
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