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Logic “1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid”
黒人のゲイの少年をフィーチャーしたミュージックビデオ、そしてMTV Video and Music Awardsでのパフォーマンスが素晴らしく感動的だったロジックの「1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid」をご紹介します。
日本でも最近放送されたMTV VMA(Video and Music Awards)をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。今年ゲイ的に最も胸を打たれる名場面だったのは、なんといってもロジックの「1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid」のパフォーマンスでした。ケシャの「誰にでも苦しみはある。そして、あなたがあなた自身をあきらめないかぎり、光がその闇を打ち砕くことでしょう」というスピーチとともに始まったステージでは、自殺未遂を図ったことがある方や、自殺で家族や友人を失った方たちが、1-800-273-8255という自殺防止ホットラインの番号が書かれたTシャツを着て登場。カメラが背後に回ると、背中には「あなたはひとりじゃない」というメッセージが…。なかには、感極まって泣きじゃくる方などもいて…。そして、このステージでロジックは、思いのたけをぶつけるようなスペシャルなラップを披露します。「メンタルヘルス、不安、自殺、鬱とか、このアルバムで俺が語ったこと。それはレイシズム(人種差別)、排除、セクシズム(性差別)、DV、性的暴行なんかによるもの」「君が黒人でも白人でも何人でも、俺は構わない、クリスチャンでもムスリムでも、ゲイでもストレートでも。俺は君の平等のために闘う、だって生まれた時はみんな同じなのに扱われ方が違うから。俺たちは闘わなきゃならない、人種や宗教や肌の色や信条や性的指向にかかわらず、すべての人の平等のために」
「1-800-273-8255」というアメリカの自殺防止ホットラインの電話番号をそのままタイトルにした曲(日本だとさしずめ0120-279-338(よりそいホットライン)でしょう)は、5月発売のアルバム『Everybody』からのシングルカットですが、8月中旬に公開された黒人のゲイの少年をフィーチャーした短編映画のようなMVが話題を呼び(視聴数3800万超)、8月末のVMAでのパフォーマンスの反響で、全米シングル・チャートで5位を記録しました。フィーチャリングのAlessia Caraは「Stay」でその歌を聴いたことがある方も多いはず。同じくフィーチャリングのKhalidはVMAで最優秀新人賞を受賞しています。
「1-800-273-8255」のMVは、パパとママと小さな子どもというごくありふれた幸せな家庭を写したシーンから始まります。やがて、成長して高校生になった男の子は、陸上部で練習に励む日々を送っているのですが、(たぶん同じ陸上部の)男友達のことが好きになり、一方、家でゲイ雑誌が見つかり、親に問い詰められ…というストーリーです。主人公の黒人の少年はいやおうなしに『ムーンライト』のシャローンを彷彿させ、切なさ倍増です。パパ役でドン・チードルという有名な俳優が出演しています。Clean Banditの「Symphony feat. Zara Larsson」のMVが、あまりにも悲しくて泣けるMVだったのに対し、「1-800-273-8255」は違った意味で泣けます。ゲイだってストレートだって、黒人だって白人だって、人を愛する気持ちに変わりはないんだよ、というメッセージが伝わってきます。
ロジックがゲイをフィーチャーしたのはこの「1-800-273-8255」が最初ではなく、『Everybody』からの最初のシングルカット曲「Black SpiderMan ft. Damian Lemar Hudson」でも、「黒人にも、白人にもなりたくない。俺はただ“人間”になりたいんだ。クリスチャンにも、ムスリムにも、ゲイ、ストレート、もしくはバイにすらなりたくない。じゃあな」と、社会のレッテルをキッパリと拒否するリリックがありました。そのMVには、女装した大柄な男性(ウィッグを取ると男性だとわかる)も登場していました。インタビューでロジックは「スパイダーマンが黒人だっていい、ジェームズブラウンがゲイだっていい。なんでダメなの? よくない? 今は2017年だ。多様性を受け入れて!」とコメントしています。
ロジックはこれまでのラッパーのイメージを覆すような見た目(どちらかというとギークな感じ)ですが、両親がジャンキー、兄弟はコカインを精製・販売するという環境に育ち、RZAが音楽を手がけた映画『キル・ビル』の影響でヒップホップにハマり、ラップに開眼したという生い立ちです(プロフィールの詳細はこちら)。ミレニアル世代の気持ちや感覚を代弁するような新しいタイプのラッパーとして注目され、(かつてのガガのように)多様性を祝福するメッセージが現在の人気を決定づけたのではないでしょうか。
2008年〜2012年にはレディー・ガガが世界をトリコにし、2009年〜2015年にはTVドラマ『glee』が若者を中心に絶大な支持を得て社会現象ともなり、2012年〜2013年にはMACKLEMORE & RYAN LEWISの『SAME LOVE feat. MARY LAMBERT』が大ヒットを記録し、2014年〜2015年にはオープンリー・ゲイのサム・スミスがグラミー最多受賞などの活躍を見せました(最近、新曲「Too Good At Goodbyes」が発表されましたね)。そして、トランプが大統領になり、移民やムスリムや黒人やトランスジェンダーに対する排除や攻撃が顕著になり、社会的分断が進む今、ロジックがアメリカの希望の象徴として輝いているんだと思います。
INDEX
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