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【追悼】ミュージシャンとしてもゲイとしても破格の素晴らしさだったジョージ・マイケル

2016/12/26

NHKほか

 希代のメロディーメーカーとしてポップ界のレジェンドとなり、ゲイであることもオープンにしていたジョージ・マイケルが、12月25日、自宅で息を引き取りました。53歳でした(全世界に「ラスト・クリスマス」が流れている日に召されるなんて…)
 
 1963年にロンドンでギリシャ系移民の両親の下に生まれたヨルゴス・キリアコス・パナイオトゥーは、学友アンドリュー・リッジリーとともにポップデュオ「ワム!」を結成、1980年代に「ラスト・クリスマス」「ケアレス・ウィスパー」「フリーダム」「Wake Me Up Before You Go-Go」などの世界的ヒット曲を次々と世に送り出しました。1986年に「ワム!」を解散した後は、アレサ・フランクリンとのデュエット曲「I Knew You Were Waiting (For Me) 」でソロ活動をスタートし、1987年に発表したアルバム『FAITH/フェイス』は全世界で2500万枚を売り上げる大ヒットとなり(生涯で1億枚以上のアルバムを売り上げました)、アメリカ音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞の「最優秀アルバム賞」を受賞しました(生涯でグラミー賞を2回、ブリット・アワードは3回受賞しています)。1990年、ジョージはアレンジ、プロデュース、曲作りの全てを一人で行ったアーティスティックなソロ第2弾アルバム『LISTEN WITHOUT PREJUDICE Vol.1』を発表、イギリスでは『FAITH/フェイス』以上のヒットとなりました。「ワム!」時代の虚像と訣別するような(ある意味、カミングアウトかもしれない)「Freedom 90」や「Praying For Time」「Mother's Pride」といったプロテスト・ソングを含むメッセージ性の強いアルバムでした。その後もエルトン・ジョンとデュエットした「Don't Let The Sun Go Down On Me」(1991年)、クイーンのメンバーと共演した「Somebody To Love」(1993年)、「As」(1999年)などをヒットさせています。2012年にはロンドン五輪の閉会式で「Freedom 90」を歌いました。今月初めにはNAUGHTY BOY(サム・スミスに楽曲を提供しているミュージシャン)を迎えて新作を制作中だと伝えられていましたが、結局、2014年にライブ音源を含む『Symphonica』を発表したのが最後のアルバムとなりました(2011年にゲイまたはゲイフレンドリーなアーティスト、プロデューサーといった「ゲイ集団」を起用したアルバムの制作を考えていると発表しましたが、ついに日の目を見ることはありませんでした)
 
 ジョージ・マイケルがゲイであることをカムアウトしたのは、カムアウトせざるをえない状況に陥ったからでした。1998年、ジョージはロサンゼルスのハッテントイレで囮捜査に入っていた警察官によって公然わいせつ罪で逮捕されたのです(保釈金を払って釈放されました)。ジョージはCNNのインタビューで自身がゲイである事実を公表、「私が今現在、男性と交際中だと人に知られても何の問題もない。女性とはもう10年近く交際していない」と語りました。
 ジョージが素晴らしかったのは、ハッテントイレで逮捕されたことで活動を自粛したりせず、『OUTSIDE』のPVでこの事件のことを自らパロディにしてみせたことです。ビルの屋上や公園やトラックの荷台やエレベーターやトイレで愛し合う男女(または男性どうし)の姿が写し出され、トイレの便器がくるっと回ってミラーボールが出てきてクラブに変身したかと思うと、警官の制服を着たジョージがディスコ調の曲に合わせて歌い、踊るという痛快なPVでした(警官どうしがキスするというオチも傑作!でした)。OUTSIDEには単純に「外で」という意味だけでなく、カムアウトしよう的な意味も込められていたと思います。
 


右がアンセルモ・フェレッパ

左がケニー・ゴス

左がファディ・ファワズ

 2005年に日本でも公開されたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル~素顔の告白』には、ジョージのセクシュアリティのことも語られていました。
 ジョージは1992年、リオデジャネイロでライブをしていた時に、ステージ前にいたブラジル人ドレスデザイナーのアンセルモ・フェレッパに一目惚れし、恋に落ちました。しかし、その5ヶ月後、アンセルモがエイズを発症。ジョージは1993年に彼が亡くなるまで生活を共にしていました。しばらくは恋人を失った悲しみから立ち直れずにいましたが、1995年にアンセルモに捧げた「Jesus To A Child」を発表(公式には、亡くなった「親友のためのレクイエムということになっていました)、これをきっかけに、制作活動に戻っていくことができました。
 そして1996年、ジョージは、ロサンゼルスのレストランで、テキサス生まれの美術品ディーラー、ケニー・ゴスに出会います。ケニーはジョージが誰であるかを知らなかったそうで、ジョージはそこに惹かれたようです。ケニーの存在はジョージにとってかけがえのないものとなっていきました。2004年のシングル「アメイジング」はケニーに捧げられた歌でした(同年のアルバム『PATIENCE』には、やはりケニーに捧げた「アメリカン・エンジェル」という曲も収録されています)。2005年、イギリスでシビルユニオンが認められ、ジョージは2006年に交際10年を記念してケニーと結婚したいという意向を発表します(が、多忙だったり、ケニーが渋ったりしたため、実現しませんでした)。同年、ジョージは『ジョージ・マイケル~素顔の告白』のキャンペーンのためにケニー・ゴスを同伴して来日し、取材に来たメディア関係者の前でケニーを「カッコいいだろ?」と紹介しています。
 しかし、運命の恋人・ケニーとの関係に終止符が打たれる時がやってきます。2008年、ジョージがロンドンのトイレで逮捕され、薬物も所持していたことで起訴されるという事件を起こし、ケニーは激怒、三行半を突きつけます。懇願するジョージの願いを聞いて、しばらく猶予が与えられますが、2009年、とうとうケニーが別れを告げることになりました。
 2010年頃から、ジョージはオーストラリアのヘアスタイリスト、ファディ・ファワズと交際を始めました(2010年にジョージはシドニーのマルディグラのパーティでライブしていますが、関係あるかもしれません)。2011年末に急性肺炎で生死の境をさまよった際も、ファディがツアー先のオーストリアに駆けつけ、親身に付き添っていました。2012年、シドニーのマルディグラのアフターパーティに出演しています。2013年、ジョージは薬物からのリハビリのためにスイスの施設に入院しており、この際もファディが付き添っていたと報じられています。が、その後も二人の関係が続いていたのかどうかは…不明です(最近になってケニーと再び会うようになったという報道もありました)
 
 2009年には『ガーディアン』紙に対し、「世間の人は僕のことを、ゲイの相手を求めて公衆トイレに行き、薬物も摂取する悲惨なやつと思いたいのだろう。でも僕はこうしたことを弱みとすら思わない。それが僕という人間なんだ」と語っています。
 ジョージ・マイケルがゲイとして偉大なのは、ハッテントイレで逮捕されるという、セレブとしてはあまりにもセンセーショナルな仕方でカミングアウトを余儀なくされたにもかかわらず、そうしたセクシャルな部分を恥じたり卑下したりせず、堂々と開き直っていたところです。
 女性も憧れるようなイケメンのポップスター(アイドル)として一世を風靡し、ソロデビュー後はヒゲをたくわえ、ワイルドな風貌でイメチェンにも成功していたジョージは、別にトイレなんかに行かなくてもいくらでも恋の相手を見つけることができたと思いますが、二度もトイレで逮捕されているところから察するに、野外ハッテンのドキドキ感がたまらない…というタイプだったのでしょう。『OUTSIDE』のPVは、ほら、ノンケだって外でヤリまくってるじゃん?と言わんばかりでした。
 一方で、3人の本気で好きになった恋人がいて、アンセルモの悲劇的な死や、ケニー・ゴスとの別れの後は、しばらく立ち直れないくらいショックを受けて、仕事も手につかず、家に引きこもっていました(ハッテントイレでの逮捕については少しもめげなかったのとは対照的です。それだけ本気で愛していたということです)
 ある意味、ゲイとしてとても純粋だった、自分がこうしたいと思う通りに生きたし、それを決して恥じたりしなかった、とても素敵な人生だったと言えるのではないでしょうか。
 世界には、セクシャルな部分(部屋にゲイ雑誌があったり、PCにアダルトサイトの検索履歴があったり、スマホにセクシー画像が保存されていたり、ハッテン場に行っていたり)が周囲の人たちにバレて、咎められたり、いじめられたり、暴力を受けたりなど、悲しい経験をしたゲイの方がたくさんいると思いますが、ジョージの真っ直ぐさ(失敗しても悪びれない強さ)は、きっと彼らに勇気を与えたことと思います。
 
 オックスフォード周辺を管轄するテムズ・バリー警察は、通報を受けて、地元救急当局が12月25日午後1時42分、ロンドン郊外のゴリンのジョージ・マイケルの邸宅を訪問し、その死亡を確認したと発表しました。死因は今のところ不明ですが(一部では心不全と報じられています)事件性はないといいます。
 ジョージのパブリッシャーは、「私たちの息子で兄弟で友人のジョージが、クリスマスにかけて自宅で安らかに息を引き取ったと、とても大きい悲しみと共に発表します」とのコメントを発表しました。「親族一同、悲しみに満ちたこのつらい時にプライバシーを尊重してくださるようお願いします。現時点ではほかにコメントはありません」

 ジョージとともに「ワム!」で活躍したアンドリュー・リッジリーは自身のツイッターで「最愛の友を失い、胸が張り裂けそうだ。彼の家族、友人、音楽界、そして世界も。彼への愛は永遠だ」とコメントしました。
 また、かつてジョージとデュエット曲を発表し、同じゲイでもあるエルトン・ジョンは、「深い衝撃を受けている。とても優しくて心が広く、才能あるアーティストでもある最愛の友を亡くした」とコメントしています。
 同じ英国出身で、オープンリー・ゲイのブルーアイドソウル・シンガーであるサム・スミスは、偉大な先輩へのリスペクトを込めて、「あなたとあなたの音楽がどれだけ僕にとって大きなものだったか、言い尽くすことができません。僕が知る限り、あなたほど才能があり、勇気を持ち、魔法のようだった人は他にいません。あなたがいなかったら、僕はこういうアーティストになっていなかったかもしれません。あなたの音楽はずっと生き続けることでしょう」とコメントしました。
 その他にも、マドンナ「さようなら、マイ・フレンド! またもや偉大なアーティストが私たちのもとを去った。2016、いい加減にしてくれる?」、デュラン・デュラン「2016‐また才能豊かなソウルを失った。ジョージの家族に愛とお悔やみを」、ブライアン・メイ「ジョージ? ジョージ・マイケル? No…そんなわけがない。悲しいなんてものじゃない。言葉にならない。R.I.P.ジョージ」、ナイル・ロジャース「R.I.P.ジョージ・マイケル 君は本物の天才だった。君の家族、デイヴィッド、マイケル、チーム全員にお悔やみ申し上げます」、スパンダー・バレエ「僕らの親愛なる友人ジョージ・マイケルが亡くなり、ものすごく悲しい。素晴らしいアーティスト&偉大なソングライター」、チャカ・カーン「また美しい才能が連れ去られた。Rest in power ジョージ・マイケル。2016年はなんて残酷なの」、マーク・ロンソン「ポップ界の天才というだけでなく、ジョージ・マイケルはブリティッシュ・ソウルの真の偉人の1人だった。僕らの多くは、返しきれない借りがある。さようなら、ジョージ」、ロビー・ウィリアムス「ああ、神様、やめてくれ…ジョージ、愛している。安らかに」、リアム・ギャラガー「ジョージ・マイケルのこと、本当じゃなければいいのに」など、多くのミュージシャンから追悼のコメントが寄せられました。

 相次ぐ訃報に、マドンナのように「なんて年だ」と思った方もいらっしゃることでしょう。2016年はあまりにもたくさんのミュージシャンが亡くなりました。デヴィッド・ボウイ、プリンス、ピート・バーンズ(デッド・オア・アライブ)、モーリス・ホワイト(アース・ウインド&ファイアー)、グレン・フライ(イーグルス)、キース・エマーソン&グレッグ・レイク(ELP)、レナード・コーエン、デヴィッド・マンキューソ
 天国で、どうぞ安らかに眠ってください。
 


「ワム!」のジョージ・マイケルさん死去(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161226/k10010819811000.html

ジョージ・マイケルさん自宅で死去 53歳(日テレ)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/26/10350008.html

「自宅で安らかに…」ジョージ・マイケルさん死去(テレ朝)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000090897.html

ジョージ・マイケルさんが死去 元「ワム!」の英人気歌手(日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG26H1F_W6A221C1CC0000/

ワム!ジョージ・マイケルさん死去=「ラスト・クリスマス」、53歳-英(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016122600041

「最愛の友を失った」 ジョージ・マイケルさん悼む(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJDV3PM5JDVUCVL008.html

元「ワム!」の英歌手ジョージ・マイケルさん死去、53歳(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/george-michael-idJPKBN14E0K9

元ワム!のジョージ・マイケルさん死去、53歳(CNN)
http://www.cnn.co.jp/showbiz/35094247.html

英歌手ジョージ・マイケルさん死去、53歳 「ワム!」で活躍(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3112421

ジョージ・マイケル が死去 元ワム!「ラスト・クリスマス」が世界的ヒット(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/25/george-michael_n_13854454.html

エルトン、デュラン・デュラン、マドンナ、ブライアン・メイら、ジョージ・マイケルを追悼(BARKS)
https://www.barks.jp/news/?id=1000136469