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レポート:TOKYO AIDS WEEKS 2022

「TOKYO AIDS WEEKS 2022」のイベントのなかから、ぷれいす東京・生島さんの講演会、映画『カミングアウト・ジャーニー』上映イベント、aktaのアート展や映画上映などのレポートをお届けします。

レポート:TOKYO AIDS WEEKS 2022

「TOKYO AIDS WEEKS 2022」に参加する一連のイベントのなかから、ぷれいす東京・生島さんの講演会「セクシュアル・ヘルスから捉えるジェンダー・セクシュアリティの多様性と不平等:30年の直接支援の現場から」と、映画『カミングアウト・ジャーニー』上映会+トークショー、aktaのアート展、Visual AIDS短編集『Being & Belonging』上映+ディスカッションのレポートをお届けします。



講演会「セクシュアル・ヘルスから捉えるジェンダー・セクシュアリティの多様性と不平等:30年の直接支援の現場から」

 12月1日(木)、明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント1階 グローバルホールで「セクシュアル・ヘルスから捉えるジェンダー・セクシュアリティの多様性と不平等:30年の直接支援の現場から」と題したぷれいす東京・生島さんの講演会が行なわれました。1年で最も忙しいであろう世界エイズデーの当日、生島さんがこのようなテーマで講演を行なうというのは、重要な意味があると考え、(また、ふだんはなかなか入れない大学のキャンパスに行ってみたいという興味もあり)聴講に行ってきました。
 この講演会は、情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター(女子大であった明大短期大学の活動を継いでジェンダーについての研究や差別、平等の歴史、さらに性の多様性も含めたセンターとして活動)が主催しています。同センターはこれまでもジェンダーや性の多様性に関する映画の上映会や講演会などを開催してきましたが、今回は、同大情報コミュニケーション学部で生活史について研究している大島助教の推薦もあり、このような講演会を開催することになったようです。
 
 生島さんは、「昔は隠れてました」と率直にご自身のゲイ・ヒストリーを語りながら、本日の本題であるHIVのことーーHIVの基本、米国のゲイの状況、ストーンウォール以降の歴史、レーガン政権下でのエイズ禍のこと、GMHCやACT UP、メモリアルキルトなどの活動のこと、そして日本でのエイズパニックや薬害エイズの話、Living Togetherなど現在のコミュニティの運動や最新情報などについてお話しました。そのなかで、なぜゲイ・バイセクシュアル男性の間で感染者が多いのか?について、アナルセックスはあらゆる性行為のなかでも突出して感染しやすく、膣性交の何十倍にもなるという研究データが示されていて、勉強になりました(セクシャル・ネットワークの狭さが大きな要因なのではないかと思っていました)。最後は「結婚の自由をすべての人に」訴訟のこと、佐藤郁夫さんのお話でした。
 休憩後、大島助教とのトークセッションが行なわれました。ぷれいす東京を立ち上げた池上千寿子さんのこと(1994年横浜のエイズ国際会議の開催にも尽力したそうです)、生島さんがぷれいす東京の活動に携わるようになったきっかけ(90年代の別冊宝島ゲイ三部作の関連で取材していたなかでHIV/エイズに取り組むNGOに出会い、自身のセクシュアリティを肯定し、社会運動に目覚めたということでした)、ぷれいす東京が大事にしていること(性を大切にする、SEXポジティブ、排除しないこと)、陽性者のリアリティを伝えるためにしてきたこと、陽性者のプライバシーを守ることに気を遣ってきたが、最近はテレビなどでもカミングアウトできる人が増えてきた、それは、団体に所属し、仲間がいると思えることが勇気につながった、といったお話でした。質疑応答では、さすがは大学、と思うような、今回のお話をしっかり受け止めたうえでの高度な質問や、できるだけ支援したい、どうしたらよいか、という立場での質問がたくさん出されていて、素晴らしいと感じました。
 たいへん充実した、有意義な講演+トークセッションでした。



映画『カミングアウト・ジャーニー』上映会+トークショー

 12月3日(土)、『カミングアウト・ジャーニー』という映画の世界初上映+トークイベントがオンライン開催されました。ハツラツとして明るく、キャピキャピした雰囲気のゲイの方が、パッと見の明るさからは想像もできないような、薬物やアルコール、セックスに依存してきたというヘビーな体験や、セクシュアリティのことなどを親や恩師など大切な人たちにカミングアウトしていく姿を追ったドキュメンタリー映画で、周囲の方のあたたかなリアクションに涙を誘われました(レビューはこちら

 上映後、主演の福正大輔さん、山後勝英監督、そして元HIV内定取消訴訟原告の佐々木慶太さんによるトークショーが行われました。
 この映画が作られることになったのは、大輔さんが『Weekends』やNetflixのトランスジェンダーの映画などを観て、「映画の力ってすごくある」と実感し、また、そろそろ親にカミングアウトしようと思っていたけど、一人ではできない、だったら映画の撮影にしてしまおうと思った、できた映画をTOKYO AIDS WEEKSで上映しようと考えた、ということでした。「『カミングアウトしてくださいね』ではなくて、つらい人が共鳴してくれたらうれしいし、周りはこんな反応なんだよ、ということを知ってほしい」「セクシュアリティ、病気、依存症…本音を語るロールモデルになれたら」
 カミングアウトの話として、慶太さんが「病気のことよりゲイである部分のほうが面倒くさい」と、職場で「おねえちゃんのいる所に行こうよ」と誘われるのがしんどい、職場の人たちは「いちばん理解してほしいけど、言いたくない」と語っていました。
 依存症について山後監督が大輔さんに「満たされないものがあるから?」と質問し、大輔さんは「本音を語ると嫌われるのではないかという恐れがあった。20代半ばまではカッコつけること、ちゃんとしてることを気にして、いろいろ着込んでいた」と、「寂しいって言えないから10年もクスリをやっていた。そこにこの病の難しいところと根っこがあると思う」と語っていました。慶太さんは、児童相談所でリストカットしたりオーバードーズする子に接してきたそうで、親との関係が悪い、自分の居場所がない子が多いと教えてくれました。「サバイバル。生き残るためにやっている。やりたくないけど、やらざるをえない苦しみ」「線引きが難しいけど、自分のメンタルが落ちたり、孤独になりやすいときはだれにでもあると思う。自分もお酒に逃げることがあるのでわかる。物理的に一人にならないほうがいい」と語っていました。
 それから、大輔さんが、「同性婚訴訟の佐藤郁夫さんの記事が新聞に載ったけど、みなさん同性婚についてどう思いますか?」と尋ねると、山後監督は「表立って活動はしないけど、支援してる」「今年『夫夫』というキャンペーン映画を作って、いろんな人たちに観てもらっている。今度U-NEXTにも入ります」と語り、大輔さんが「みなさん1日5回観てください」と返していました(笑)。慶太さんは、「あったらいい。だれといっしょになっても結婚できるよう、不平等を解消してほしい。頑張ってほしい。もし実現したら制度を使いたい」と語っていました。大輔さんは「訴訟を応援してる。原告になってもいいと思っている」そうです。
 とてもいいお話でした。



短編集『Being & Belonging』上映+ディスカッション

 12月3日(土)、二丁目のコミュニティセンターaktaで、「Visual AIDS」による短編映画集『Being & Belonging』の上映会+ディスカッションが開催されました。
 NYのアート団体「Visual AIDS」が1989年から世界エイズデーに合わせて映像作品を上映したりする「Day With(out) Art」というイベントを行なっていて、日本でもノーマルスクリーンがaktaなどで上映してくださっています(日本語字幕をつけてくださるので、とてもありがたいです)
 今年は3年ぶりのリアル上映会となり、大盛況でした。
 7本の多彩な短編が収められた『Being & Belonging』が上映され(レビューはこちら)、上映後にグループに分かれて感想を話し合ったりしました。映画を観て感想を話し合うのはとても楽しく、あっという間に時間が過ぎていきました。


 
RED awareness -アートで会話しよう- 展示「in Bloom」

 aktaでは、「RED awareness -アートで会話しよう- 展示「in Bloom」」という展覧会…というよりは、インタラクティブな企画が行なわれていました。どういうことかというと、壁に円を描くように貼られた花のポラロイド写真を1枚、持って帰ることができます、そして、その写真に自由にタイトルをつけていいです(花は、どんな人であっても、花のように咲くことができますよというメッセージなんだそう)、また、テーブルの上に花の形のように丸く並べられた封筒に入った手紙も1つ、持って帰ることができます、そこには世界の人たちからのメッセージが書かれています、というものでした。通常の展覧会は、額に入った作品をうやうやしく眺め、ありがたがる(高い値段がついていたりする)わけですが、この展示では、作品自体が来場者への贈り物になっているというところが素晴らしく、感動しました。ちなみに私が受け取った手紙には、「あなたが90歳になるとき、あなたは今よりもずっと美しいでしょう」というチェンさんからのメッセージが書かれていました(感動…)
 これを開催したフォスター・ミックリーさんは、NYのLGBTQセンターの活動に携わっていたそうで、HIV陽性者やいろんな人たちの支援をしていた経験から、このようなかたちのアートを企画したんだそうです。もしaktaでお会いしたら、ぜひお話してみてください。

RED awareness -アートで会話しよう- 展示「in Bloom」
会期:12月1日(木)〜12月11日(日)15:00-21:00
会場:コミュニティセンターakta(東京都新宿区新宿2-15-13 第2中江ビル301)
定休:月・火・水曜休館
主催:特定非営利活動法人akta|ICA京都 
協力:Coil.inc




ヤローページ2022

 こちらのニュースでもお伝えした「ヤローページ2022」がaktaや二丁目のゲイバーなどで配布されています。
 ヤローページは、新宿エリアのバーやショップ、ハッテン場などの情報と、HIVや性感染症なセクシュアルヘルスについての情報がセットになったゲイコミュニティ誌です。どこにどんなお店があるかということが一目でわかり、とても便利ですし(客層なども書かれています)、9モンスターモデルをつとめるShunさん、藤波淳士さん、PIKAさんの3人が二丁目について語るインタビュー記事も掲載されていたりして、読み物としても充実しています。もちろんPrEPなどHIV予防に関する最新情報も盛り込まれています。
 1月初旬まで二丁目仲通り交差点に看板広告も出ています。二丁目にお出かけの際はぜひ、クリスマスツリー型のイルミと看板広告の写真を撮って、#ヤローページのタグをつけてSNSでシェアしていただければ幸いです。そしてaktaでヤローページをもらうのもお忘れなく!



 なお、TOKYO AIDS WEEKSはまだ終わってなくて、8日(木)にはDRAGON MENで「RED awareness- Party」というクラブイベントがありますし、16日(金)にはPrEP利用者・支援のためのオンラインセミナーもあります。詳しくはコラム「2022年の世界エイズデーキャンペーン」をご覧ください。(このコラムでは、東京だけでなく、全国各地の情報も掲載しています。北陸や南九州にお住まいの方なども郵送検査を無料で受けられたりしますので、ぜひチェックしてみてください)
 

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