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2024年新春のオススメ演劇作品:『インヘリタンス-継承-』『こころ、心、ココロ』など

2024年1月〜2月(一部3月)に上演される演劇作品をまとめてご紹介いたします。トニー賞受賞の話題作の日本公演が実現した『インヘリタンス-継承-』や、日本のゲイシーンの100年を振り返る『こころ、心、ココロ』などの大作に要注目!です。

2024年新春のオススメ演劇作品:『インヘリタンス-継承-』『こころ、心、ココロ』など

(『インヘリタンス-継承-』より)


『ガラスの仮面』の北島マヤに限らず、演劇は、古代から多くの人々をとりこにしてきました。舞台でスポットライトを浴びながら生身の役者さんが笑ったり悲しんだりする「生の芸術」の臨場感や緊張感は格別です。昨今はLGBTQ(クィア、性的マイノリティ)やHIV/エイズに関する作品が本当にたくさん上演されていて素晴らしい限りです。この1月から2月(一部3月)にかけても、トニー賞受賞の話題作の日本公演が実現した『インヘリタンス-継承-』や、日本のゲイシーンの100年を振り返る『こころ、心、ココロ』などの大作をはじめ、様々な作品が上演されます。寒い季節ではありますが、劇場にぜひ足を運んで熱い舞台を体験してみてください。
(最終更新日:2023年1月9日)


1月14日 松本
劇団うりんこ「わたしとわたし、ぼくとぼく」

 ゲイの劇団フライングステージの関根信一さんが作・演出をつとめ、すでに何度か上演されている劇団うりんこ『わたしとわたし、ぼくとぼく』(レビューはこちら)。この1月に長野県松本市で上演されることになりました。長野県のみなさん、ぜひご覧ください。

<あらすじ>
保育園に勤める30歳の健人は、男性保育士に対する保護者の偏見に落ち込み、ゲイであることを打ち明けられずに引きこもってしまった。ある日、鏡を見ていると、1人の少女が現れて、言った。『世界を救って欲しい』少女き導かれて1997年の教室へ。そこで10歳の自分と出会い…
 
劇団うりんこ「わたしとわたし、ぼくとぼく」
日時:2024年1月14日(日)14:00-
会場:まつもと市民芸術館 小ホール(松本市深志3-10-1)
料金:一般 2000円、U-18 1500円(4歳以上有料) ※U-18=18歳以下、未就学児入場不可
チケットはこちらから
作・演出:関根信一
出演:児玉しし丸、小原ひろみ、まきのかずひこ、藤本伸江、杉浦耶麻人、むらつばきはるな、平野萩(客演)、もげ(客演)



1月28日 津
『アイタクテとナリタクテ』上映&トークセッション

 ゲイの劇団フライングステージが2021年に「座・高円寺」で上演した舞台『アイタクテとナリタクテ』の記録映像の上映と、作・演出の関根信一さんをゲストに迎えたトークセッションが「令和5年度 性の多様について知り、考えるイベント」として三重県津市で開催されます(『アイタクテとナリタクテ』のレビューはこちら
 『アイタクテとナリタクテ』は、学芸会で人魚姫の役をやりたいと手を挙げたショウ、男の子を好きになるユウセイ、パパが二人いるタイガという3人が、周囲の偏見に直面しながらも、その純粋な思いが大人たちの心も動かしていく――という感動的な作品です。その記録映像はYouTubeでも観られるのですが、トークセッションは(演劇のように)このイベントでしか体験できない企画です。関根信一さんに、この物語に込めた思いなどをお聞きしながら、思春期の子どもたちの多様な性や、周りの親や先生の対応、ジェンダーや恋愛に関する世間の規範や思い込みなどについて、自身の体験談なども交えながらお話していく予定です。
 
<あらすじ>
タイガは小学6年生。今年の学芸会で『人魚姫』をやることになった。先生が希望の役はあるかと聞いたら、友達のショウが人魚姫をやりたいと手を挙げた。ざわつくクラス。自分が人魚姫にふさわしい、誰か推薦してくれないかなと内心思っていたハルナは、焦って立候補する。「男が人魚姫とか、ないでしょ? 私で決まりよね」。タイガやショウの親友、ユウセイは、「そんなことないよ。面白いかもよ」とショウをかばい、人魚姫の役はオーディションで選ぶことに。3人での帰り道、「ショウは女の子になりたいの?」「わからない。ただ、このまま中学に行って学生服着るのはいやなんだ」「うーん…わかったようなわからないような…」。一方、王子様役がやりたいんじゃないの?と聞かれたユウセイは、「僕は王子様になりたいっていうより、王子様に会いたいんだ」とカミングアウトする。実は、このお話の主役であるタイガにも、秘密があった…。

三重県主催「令和5年度 性の多様性について知り、考えるイベント」
『アイタクテとナリタクテ』上映&トークセッション 
日時:2024年1月28日(日)14:00-15:45
会場:三重県総合文化センター 文化会館1階「レセプションルーム」 またはオンライン
参加無料(要申込み)
詳細・お申込みはこちら



2月11日〜24日 東京(池袋)
インヘリタンス-継承-

 2019年ローレンス・オリヴィエ賞4部門、2020年トニー賞4部門を受賞し、ブロードウェイやウエストエンドを感動で包んだ話題作『インヘリタンス-継承-』が日本で上演されます。
 『インヘリタンス-継承-』は、エイズ禍が過去のものとなった現代に生きるゲイのカップルを中心とした舞台で、主人公のエリックが、亡くなった友人・ウォルターに遺言で託された「田舎の家」がかつてエイズで死期の近いゲイたちの看取りの家だったことを知り、そこでたくさんの人を看取ってきたマーガレットに、その家で起こった出来事を教えられる…という物語です。三世代にわたる、愛と自由を求めるゲイたちのラブストーリーであり、上演時間が前後編合わせて6時間半に及ぶ大作です。HIV/エイズをめぐる演劇の大作といえば『エンジェルス・イン・アメリカ』ですが、1994年の『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部「至福千年紀が近づく」日本初演時のラストシーンで大天使として登場し、観客の度肝を抜いた麻実れいさんが『インヘリタンスー継承ー』でマーガレット役を演じているところにも粋な「継承」を感じさせます。
 世界エイズデーの前日に行なわれた公開セミナー「40年のパンデミック:エイズの教訓を受け継ぐ」でも紹介されていたように、このトニー賞受賞の話題作が日本で上演可能になったのは、上演権獲得をめぐるコンセプト・プレゼンで演出家の熊林弘高さんという方が勝ち抜いたおかげだそうです。熊林さんは作者マシュー・ロペスから日本初演の演出を託されました。
 マシュー・ロペスは『インヘリタンス-継承-』でラテン系の人として初めてトニー賞ベストプレイ賞を受賞した気鋭の劇作家で、オープンリー・ゲイの方です。『赤と白とロイヤルブルー』をご覧いただけると、その才能や魅力を体感していただけると思います。
 
<あらすじ>
30代の青年エリックと劇作家のトビー、60代の不動産王ヘンリーとそのパートナーのウォルター、この2組のゲイカップルを中心に物語は展開する。ウォルターは「田舎の家をエリックに託す」との遺言を残して病気で亡くなる。トビーの自伝的小説がヒットしてブロードウェイで上演されることになるが、その主役に抜擢された青年アダムの出現により、エリックとトビーの仲は破綻する。リベラルと保守の両極のようなエリックとヘンリーが、ふとしたことから心通わせて結婚することになるが、そのことにより、エリックとジャスパーら古い友人たちとの間に溝ができる。ウォルターの遺言の「田舎の家」が、エイズで死期の近い男たちの看取りの家となっていることがわかる。トビーはやがてアダムにふられ、彼にそっくりの男娼レオを恋人にするが、レオはヘンリーとも関わりがあった…。トビーに捨てられHIVに感染し行き場をなくしていた レオをアダムとエリックが救う。彼を「田舎の家」に連れて行くと、そこには男たちに寄り添い続けたマーガレットがいて、この家で起こったことを語り始める…

インヘリタンス-継承-
日時:2024年2月11日(日・祝)〜24日(土)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
チケットはこちらから 
作:マシュー・ロペス
演出:熊林弘高
出演:福士誠治、田中俊介、新原泰佑、柾木玲弥、百瀬朔、野村祐希、佐藤峻輔、久具巨林、山本直寛、山森大輔、岩瀬亮、篠井英介、山路和弘、(後篇のみ)麻実れい
※なお、3月には大阪、北九州でも公演が予定されています。詳しくは公式サイトでご確認ください
 
 

2月17日 東京(西東京)
りつとにじのたね

 西東京市男女平等推進センターパリテのパリテまつりで演劇集団LGBTI東京が上演する『りつとにじのたね』は、多様性を目指す教員の会・ながみつまきさんの絵本『りつとにじのたね』を舞台化した作品です。LGBTQだけでなく、あらゆる多様性を否定しない教育を応援する演目で、「自分は人とは違う」と思い込んで悩んでいる子どもたちに、「そのままでいいよ」「ちがうことはすてきだよ」というメッセージが込められています。

<あらすじ>
くまの国に住む小学生のりつ。かわいい服やものが大好きな男の子です。同級生たちはそんなりつを笑います。「ぼくは、すきなものをすきっていいたいだけなのに…」 傷ついたりつは、くまの国から旅立ちます。

りつとにじのたね
日時:2024年2月17日(土)14:00-15:30
会場:コール田無 多目的ホール
無料
定員:150名(申込み多数の場合、抽選)
対象:未就学児と小・中学生と保護者、この演劇に関心のある方
申込フォームはこちら
原作:ながみつまき
脚本:差異等たかひ子
演出:木内希
出演:長月うさぎ、桜井まゆ、立花みず季、丹冴夏、後藤千裕、マリア・ボーゲン、CONANほか



3月6日〜10日 東京(高円寺)
こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-

 90年代からゲイにこだわった作品を上演し続けてきた(それ自体が歴史である)劇団フライングステージが今年、日本のゲイシーンの100年を振り返る壮大な作品を上演します。(まるで『エンジェルス・イン・アメリカ』などのように)第一部、第二部に分かれています。会場は以前『アイテクテとナリタクテ』などを上演した座・高円寺です。今回はフライングステージの公演でおなじみの俳優陣に加え、『カミングアウト・ジャーニー』の福正大輔さんも出演します。
 主宰の関根信一さんは、このようにコメントしています。
「フライングステージは、カミングアウトしているゲイの劇団として、LGBTQを題材にした作品を作り続けています。2021年には子ども向けの2作品を座・高円寺で上演しました。LGBTという言葉が公的に使われたのは2006年だそうです。それより前にはLGBTという人々はいなかったかというとそうではありません。ずっと前から存在していました。今回は、夏目漱石が「こころ」を新聞に連載していた1914年から現在までの日本のゲイシーンを描きます。第一部では大正から昭和、第二部では平成から現代まで、それぞれの時代を生きたゲイたち、ともすればいないことになってしまう人々の「こころ」をつむいでいこうと思います」 
 7日、8日、9日には、それぞれ平良愛香さん、松岡宗嗣さん、砂川秀樹さんをお招きしてアフタートークが開催されるそうです。

座・高円寺 春の劇場29 日本劇作家協会プログラム 
劇団フライングステージ第49回公演
「こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-」
日程:2024年3月6日(水)〜10日(日)
会場:座・高円寺1(杉並区高円寺北2-1-2)
料金:一般 3,500円、学生 2,500円、小中高生 1,500円、子ども1,000円、ペアチケット 6,500円
※税込、前売・当日同一価格
※チケットは1月27日(土)10:00から発売
作・演出:関根信一
出演:石関準、岸本啓孝、小林祐真、中嶌聡、野口聡人、福正大輔、モイラ、山西真帆、若林正、関根信一
<アフタートーク>
7日(木)14:00A:第一部 平良愛香(日本キリスト教団川和教会牧師/ゲイ男性)
8日(金)14:00B:第二部 松岡宗嗣(ライター/一般財団法人fair代表理事)
9日(土)14:00A:第一部 砂川秀樹(文化人類学者)

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