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特集:2024年秋のクィア・アート展

2024年9月〜11月に開催されるLGBTQ(クィア)関連のアート展の情報をまとめてご紹介します。「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」、台湾のウォーターメロン・シスターズ(西瓜姉妹)が登場する六本木アートナイト2024、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYOの「その「男らしさ」はどこからきたの?」、米国在住のクィア・パフォーマンス・アーティスト、荒川ナッシュ医さんの個展などです

特集:2024年秋のクィア・アート展

まだまだ暑い日が続きますが(大雨や地震も心配ですが)、きっと9月からは暑さも徐々に落ち着くはず。「ゲイ術の秋」到来ということで、美術館やギャラリー、劇場映画館にお出かけしましょう。というわけで、2024年9月〜11月に開催されるLGBTQ(クィア)関連のアート展の情報をまとめてご紹介。「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」、台湾のウォーターメロン・シスターズ(西瓜姉妹)が登場する六本木アートナイト2024、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYOの「その「男らしさ」はどこからきたの?」、米国在住のクィア・パフォーマンス・アーティスト、荒川ナッシュ医さんの個展などが開催されます。
(最終更新日 2024年9月15日)

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トピック
伊勢丹にゲイアートが!

8月7日〜20日の期間、新宿3丁目の伊勢丹のショーウィンドウで8月30日から始まる「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」のPRの一環として、亀井徹さん、SIN5さん、shinji horimuraさん、TORAJIROさん、NARUSE Nonnow(成瀬ノンノウ)さん、六原龍さんの作品が展示されています。(以前新宿にあったバーニーズのショーウィンドウでゲイテイストなディスプレイを見たことはあったものの)百貨店のショーウィンドウでこのようなゲイゲイしいアート作品(男絵)が展示されるのはおそらく初めてで、画期的だと思います。週末、二丁目に行かれる際はぜひ、伊勢丹のショーウィンドウもご覧ください。


 
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7月20日〜9月29日 福岡
性の多様性 セクシュアリティについてきいてみた

 福岡県と福岡県人権啓発情報センターによる特別展「性の多様性 セクシュアリティについてきいてみた」は、6人の当事者とその家族や友人へのインタビューを通し、性の多様性について理解を深めることを目的とする展示です。性的マイノリティとひとくちに言っても実に多様で、それぞれの方にとってのジェンダーやセクシュアリティをめぐる問題が存在しているということで、6人の歩みと思いに向き合い、多様な性の在り方について考えるきっかけを作れるように会場でパネルなどを展示しています。

第57回特別展 性の多様性 セクシュアリティについてきいてみた
会期:2024年7月20日(土)〜9月29日(日)
会場:福岡県人権啓発情報センター(福岡県春日市原町3丁目1-7 クローバープラザ7階)
開催時間:9:00-17:00
料金:大人200円、高大生100円、中学生以下と65歳以上は無料 
主催者:福岡県、福岡県人権啓発情報センター




8月30日~9月11日 東京(新宿)
MASURAO GIGA -益荒男戯画展-

 男性を描くアーティスト6人の展示です。
「益荒男」は、「勇気のある強い男」のような意味ですが、展示参加のアーティストたちは、強い男性を描くだけではなく、それぞれのもつイメージで、様々な表現方法で描いています。
「戯画」は、戯れ(遊び)で描かれた絵のような意味があります。今回の展示では遊びを「楽しんで」と解釈しました。
 日本を意識した美しい和の響きを残しつつも、メインタイトルを漢字ではなく、アルファベット表記「MASURAO GIGA」としたのは、今回の展示を見ていただき、男性モチーフの絵に対して、イメージが少しでも変わったり、新しい気付きになれるように、という意図があります。
 アーティスト6人が描いた男性の絵を、ジェンダーやLGBTQ+における差別も偏見もなく、純粋に楽しんでいただけたらと思います

MASURAO GIGA -益荒男戯画展-
会期:2024年8月30日(金)~9月11日(水)
会場:新宿眼科画廊
開館時間:12:00-20:00(水曜日17:00まで)
木曜休廊
入場無料
※全作品撮影OK、SNS公開OKです
参加アーティスト:亀井徹、SIN5、shinji horimura、TORAJIRO、NARUSE Nonnow(成瀬ノンノウ)、六原龍



9月27日〜29日 東京(六本木)
六本木アートナイト2024

 六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウンなど六本木の街のあちこちで開催される無料イベント「六本木アートナイト2024」。13回目の開催となる今年は新たな試みとして「RAN Picks」「RAN Focus」という2つのプログラムが新設されます。「RAN Picks」は六本木アートナイトが注目するアーティストを複数選出して展示するプログラムで、「RAN Focus」は特定の国や地域にフォーカスし、そこで活躍するアーティストによるプログラムを披露するものですが、後者の「RAN Focus」でフィーチャーされるのが、台湾のウォーターメロン・シスターズ(西瓜姉妹)です。
 ウォーターメロン・シスターズは、台北の余政達(ユ・チェンタ)と、シンガポール生まれでベルリンを拠点に活動する黄漢明(ミン・ウォン)によるパフォーマンス・デュオです。2017年にサンプライド財団と台北現代美術館が共同で開催したアジアの国立美術館における初のLGBTQをテーマとしたサーベイショーを記念するために結成されました。1960年代の京劇映画やツァイ・ミンリャンの映画作品からインスピレーションを受け、自らの性自認を流動させつつ、ブッチ/フェム集団出身のクィア姉妹として、人間の性的解放への道を「トワーク」で応援します。その作品はラップミュージック・ビデオ、写真シリーズ、ライブパフォーマンスで構成されています。

六本木アートナイト2024
会期:2024年9月27日(金)〜29日(日)(コアタイム:9月27日 17:30~23:00 / 9月28日 16:00~23:00 / 9月29日 16:00~20:00)
会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
無料(ただし、一部のプログラムおよび美術館企画展は有料)
※ウォーターメロン・シスターズの展示場所はイグノポール1階、パフォーマンスは六本木ヒルズアリーナで見られます


9月28日~11月16日 名古屋
キース・へリング展 アートをストリートへ
 
 80年代ニューヨークのレジェンドであり、ポップカルチャーとファインアートの世界に革命をもたらしながら、1990年にエイズによって早逝したキース・ヘリング。明るく、ポップなイメージで世界中から愛され、今なおその人気は衰えを知りません。そんなキース・ヘリングの大規模な展覧会「キース・へリング展 アートをストリートへ」が巡回中。東京、神戸、福岡を終えて、9/28から名古屋で開催されます。東海地方のみなさん、ぜひご覧ください(レポートはこちら
 「アートはみんなのために」という信念のもと、1980年代のニューヨークを中心に地下鉄駅構内やストリートにアートを拡散させることで、混沌とする社会への強いメッセージを発信し、人類の未来と希望を後世に託したキース。彼が駆け抜けた31年間の生涯のうちアーティストとしての活動期間は10年程ですが、残された作品に込められたメッセージは、今なお人々の心に響き続けています。今回の展覧会では6メートルに及ぶ大型作品を含む約150点の作品が展示され、キース・ヘリングのアートを体感していただける貴重な機会になりそうです。社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後までアートで闘い続けた彼のアートは、時空を超えて現代社会に生きる人々の心を揺さぶることでしょう。(公式サイトより)

キース・へリング展 アートをストリートへ
会期:2024年9月28日(土)~11月16日(土)
会場:松坂屋美術館(松坂屋名古屋店 南館7階)
開場時間:10:00~18:00
※会期中無休



10月5日〜27日 東京
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO

 アジアの写真文化を発展させるプラットフォーム「T3」が八重洲、日本橋、京橋エリアで「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」を開催します。今年のテーマは「New Japanese Photography: 50 years on」です。
「1974年春、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で15人の日本人写真家たちの作品が展示されました。「New Japanese Photography」と名づけられた写真展は、当時それぞれの国で絶大な影響力を誇っていた『カメラ毎日』編集長の山岸章二とMoMA写真部門ディレクターであったジョン・シャーカフスキーがキュレーションを手がけ、同展をきっかけに東松照明、森山大道、深瀬昌久などの作家が欧米に大々的に紹介され、今日の世界的な日本写真の評価に続いています」「本年開催される「New Japanese Photography: 50 years on」では、ニューヨークで開催された同展に対し3組のキュレーターが3つの企画展という形で返答します。キュレーターの選定には、1974年の展示に倣い、日本だけでなく海外からの視点も取りいれつつ、男性のみで構成された当時の展示に欠けていた多様なジェンダーの眼差しも考慮しました。50年前にニューヨークから送られたメッセージに対する、時間と空間を越えた東京からの返答をぜひご覧ください」(プレスリリースより)
 この3組のキュレーターのうちの1人が、国際写真センターとサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会や研究活動に従事したり、東京国立近代美術館客員研究員を務めたりしてきた小林美香さんです(今夏、マイア・コベイブの『ジェンダー・クィア』の日本語版出版を刊行予定です。自身もジェンダークィアの方です)
 小林美香さんが手がける「New Japanese Photography」展は、「その「男らしさ」はどこからきたの?」をテーマに、写真のコミュニティのみならず、メディアや日本社会全体に通底する男性中心主義的価値観・ホモソーシャル性に焦点を合わせ、写真作品や映像作品、広告や広報など公共のイメージに表象される男性のイメージを通して、ジェンダーにまつわる規範的な価値観の中でも、特に「男らしさ」とは何かを戦後社会の変遷に照らし、批評的な観点から検証します。個人所蔵のスクラップブックやポストカード、雑誌や書籍などを通覧する資料展示も行ないます。
 美術家・映像作家の高田冬彦さんによる作品「Cut Suits」は、サラリーマン風の男性6名が互いのスーツやシャツを鋏で切り合う様子を捉えた映像と衣服の端切れによるインスタレーションで、男性たちは徐々に裸体に近づき、エロティックな様相を帯びながら、男性社会からの解放を示唆します。
 格闘的な祭事の只中に身を投じながら撮影し、人間の「生」についての本質的な問いに対して写真で肉薄する作品を発表してきた甲斐啓二郎さんの「綺羅の晴れ着 / Clothed in Sunny Finery」は、日本各地で数百年以上にわたって開催されてきた伝統的な裸祭りを5年間にわたって撮影したシリーズで、裸体に褌を締め、激しくぶつかり合う男性たちの肉体を間近に捉えた写真に短い動画を交え、映像作品として上映するそうです。

T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO「New Japanese Photography: Fifty years on」
会期:2024年10月5日(土)〜27日(日)
開催エリア:八重洲、日本橋、京橋エリアの屋内、屋外会場
入場:一般 前売¥1,500 当日¥2,000、学生 前売¥1,000 当日¥1,500
主催:一般社団法人TOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY
主管:株式会社シー・エム・エス
企画:T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO実行委員会




10月30日~12月16日 東京(六本木)
ペインティングス・アー・ポップスターズ

 米国在住のクィア・パフォーマンス・アーティスト、荒川ナッシュ医さんによる国内初の美術館個展です。
 荒川ナッシュ医さんは1977年福島県いわき市生まれで、1998年からニューヨークに、2019年からロサンゼルスに居住し、様々なアーティストと共同作業を続けながら「私」という主体を再定義し、アートの不確かさをグループ・パフォーマンスとして表現している方です。ロサンゼルスの「アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン」大学院アートプログラム教授です。
 今回の「ペインティングス・アー・ポップスターズ」展は2021年にロンドンのテート・モダンで発表された、美術館の床に来館者が自由に絵を描ける参加型の作品《メガどうぞご自由にお描きください》からスタートし、アート活動と子育ての両立にまつわる絵画の空間、絵具をトリートメントとして使うクィアな美容アクション映像、都市と色のスペクトラムに関する作品、絵画たちが交互に歌うかのような空間、20世紀の戦争や移民画家の歴史と国立新美術館の空間を結ぶ作品、福島やドイツの空を飛ぶ凧絵画、そして絵画が哲学を語りかけるクラブのような空間などが続きます。荒川さんに協力する20名超の画家による絵画が会場内に「登場」し、それぞれの絵画を存在感のあるポップスターとみなした荒川さんがその絵画のアティテュード(姿勢)から発案された協働パフォーマンスを発表したりもするそうです。
 以下は荒川ナッシュ医さんのコメントです。
「国立新美術館ではパフォーマンス・アーティストの大規模な個展が初めてだという。
 心のどこかにあったのは、2011年の高嶺格展、近年のdumb type展やChim↑Pom展の存在、今年の夏の内藤礼展や島袋道浩展。
 白川昌生さんの言う日本のパフォーマンスの「うねり」がZ世代も続きますように!
 そして国立の美術館では施工屋さんの入札のために、半年前には細部まで決定しないといけない難しさがある。
 ストレスフルな矛盾が生まれたらどうしよう。
 なぜならパフォーマンス・アートは実際に始まってみて、観客の前で生成中に成長するのです。
 わたしの人生で間違いなく一度きりのこの展覧会。ユーモラスにお届けしたい!」
 
荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ
会期:2024年10月30日(水)~12月16日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)
無料
開館時間:10:00-18:00 ※毎週金土は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜
主催:国立新美術館
協力:タカ・イシイギャラリー




~2025年5月18日 小淵沢
Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか

「1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)は、明るく軽快な作風で知られる一方、彼の作品の根底には社会を鋭く洞察する眼差しがありました。ヘリングは、時にユーモラスに、時に辛辣に社会を描写し、平和や自由へのメッセージを送り続けました。
 本展の副題は、ヘリングが広島平和記念資料館を訪れた際に日記に残した「誰が再び望むのだろうか? どこの誰に?(原文:Who could ever want this to happen again? To anyone?)」という言葉に着想を得ています。一瞬で街を焼け野原にした原子爆弾。今なお世界には1万2000にのぼる核弾頭が存在し、絶え間なく戦争が続くなか、来年には第二次世界大戦の終結から80年の節目を迎えようとしています。本展は、ヘリングの眼差しを通して世界が抱える課題に向き合い、現代における「平和」や「自由」の意味について考えることを目的としています」
(中村キース・へリング美術館プレスリリースより)

Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか
日程:~2025年5月18日(日)
会場:中村キース・へリング美術館(山梨県北杜市小淵沢町10249-7)
開館時間:9:00-17:00(最終入館16:30)
定期休館日なし  ※展示替え等のため臨時休館する場合があります
主催:中村キース・へリング美術館

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