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レポート:高雄同志大遊行(KHPride)
11月29日、台湾第二の都市・高雄(Kaohsiung)で高雄同志大遊行(KHPride)が開催されました。本当はワールドプライドになるはずだった高雄のプライドパレードをレポートします

本当はワールドプライドになるはずだった高雄のプライドパレード
台湾南西部の高雄は台湾第二の都市として知られ(正確に言うと人口では台中都市圏に追い越されて第三なのですが、長い間第二の都市と呼ばれてきた歴史があるので、ここでも第二の都市とさせていただきます)、熱帯モンスーン気候(またはサバンナ気候)に属する温暖な地域です。
2015年、台湾で初めて(渋谷区などより早く)同性パートナーシップ登録制度を開始したのは高雄市でした。2020年には台北に続く「彩虹地景」(レインボーカラーの路上アート)が高雄港に隣接した駁二芸術特区(The Pier-2 Art Center)に登場しました。そんなLGBTQフレンドリーな街であることも手伝って、高雄は『ニューヨーク・タイムズ』紙の「2021年、愛すべき場所52選」に選ばれています。
そしてちょうど4年前、高雄で2025年のワールドプライドが開催されることが決まりました。東アジア初の快挙でした。「LGBTQの人権について、近隣の国々や地域に重大な影響をもたらすことになる」とInterPride(ワールドプライドのライセンス組織)の代表は語っています。台湾でワールドプライドが開催されることによって、日本や韓国、中国、東南アジア諸国など、近隣の国々にLGBTQの権利意識の向上が見られたり、LGBT差別禁止法や同性婚法の実現が早まったりするといいね、という気持ちで世界のLGBTQ団体が高雄を選んだのです。しかし、2022年、合意していたはずのInterPrideが突然「ワールドプライド台湾2025」という名称の使用を拒み、「ワールドプライド高雄2025」に変更せよと迫ってくるなど態度が硬化したことを受けて、ワールドプライド2025台湾準備委員会は開催を諦めました(台湾外務省も「政治的な思惑」であるとして遺憾の意を表明。詳細はこちら)
こうして、2025年のワールドプライド台湾は幻となってしまいました。
高雄でのワールドプライド開催決定のニュースには本当に胸が躍り、絶対に行こうと決めていたのですが、まさかの中止という事態にがっかりして…でも、アジアで初めてワールドプライド誘致を決めたほどの高雄のLGBTQコミュニティってスゴいんじゃないかと思い、敬意を表するとともに、台北しか知らなかったけれども高雄のパレードも一度は行くべきじゃないかと、いや絶対に見てみたいという気持ちがつのり、「本当だったら東アジア初のワールドプライドが開催されるはずだった2025年の高雄同志遊行」に行こう、という思いが芽生え、1年前、ANAマイルを特典航空券に換えることに成功し、高雄行きを決めました。(余談ですが、こちらの記事にも書いたように、ANAマイルで海外の特典航空券を取るのは至難の業で、取れたらラッキーです。ANAじゃなくてエバー航空になりましたし、高雄からの帰りの直行便は取れず、福岡空港経由になりましたけれども)
そうして1年前から準備をしてきた高雄行きですが、この11月は、1日〜3日が岡山と高松、8日が仙台、15日・16日が那智勝浦、そして22日が東京トランスマーチと、毎週どこかのパレードを取材することになり(正直、大変でした)、図らずも高雄同志大遊行(KHPride)がその「毎週パレード取材」という自分史上最大の作戦のトリを飾るかたちとなりました(北谷で初開催となったピンクドット沖縄に行けなかったのは残念でした)
高雄同志大遊行(KHPride)レポート
11月29日(土)、東京高裁でひどい判決が出た翌日、晴れない気持ちのまま、会場に向かいました。
台北と違って空港や街の商店がレインボーフラッグを掲げているわけではなく、本当に今日プライドパレードがあるの?と思うような、ふだん通りの景色でした(台南と同様です)。しかし、プライドの会場の最寄駅であるMRTの鳳山西(高雄市議会前)駅に向かうために美麗島駅で乗り換えたところ、車内はプライドに参加する若いゲイの方たちでいっぱいになっていて、ようやく実感が湧きました。
休日の高雄市議会前駅にいたのはほぼ全員、プライド参加者でした。外に出ると、すぐ目の前に「豪彩投(VOTING WITH PRIDE)」というテーマが大きく描かれたパネルとゲートが見えました。ゲートを潜ると、ブースが左右に並び、奥のほうにステージが見えました。
ブースは東京とは異なり、ほとんどが地元のLGBTQ団体やHIVの団体、ゲイバー、クィアのアートやゲーム、レインボーグッズなどのブース。一般企業の出展はほとんどありませんでした。ちんこを愛でるアート作品のブースや、「ミキサー」というBDSMのバーの出店もありました。
広場の一角で日本語が聞こえてきたので、お声かけしてみたら、日本から何度も高雄に来ている旅行者の方たちでした。高雄のプライドはいつもこんな感じですよ、と教えていただきました。台北だけじゃなくこっちももっと知られてほしいですね、とも。
















やがてステージでは、高雄で活躍するDJ Finding Albertがプレイしはじめ、マドンナとかカイリーとかアリアナとか(Adoの「唱」とかもかかってました)アンセム的な曲がガンガン流れて、前で踊ってる方もいました。
MCのドラァグクイーン、Draggy Boo BooさんとHana Boo Booさんが登場。重要な部分は英語でも話していましたし(流暢に)、「みなさんようこそ。ありがとうございます」とちょっとだけ日本語でも話していました。
初めに主催者による挨拶がありました。
それからドラァグクイーンの優美 Yumi(佑仁)(たぶんテレビなどでも活躍している方)がショーを披露しました。着物をイメージした衣装で、生歌で日本語の「あなた」「わたし」という歌詞もあるような歌謡曲をはじめ、数曲を歌い、会場を盛り上げてくれました。
団体の方たちのアピールタイムが設けられ、アムネスティ・インターナショナルや、高雄市の観光局の方たちが登壇しました。ブース出展したりステージに登壇したりはしないものの、日本企業であるJINSがメインスポンサーとしてステージ横のデジタルビジョンでCMを流してたりもしました(ほかにもTENGAとかギリアドとかも協賛してました)









14時に、ステージ横の大きな通りからおもむろにパレードが出発しました。日本のように整列の時間が設けられていなくて、割とすぐに出発したと思われ、出発したのを知らずにいた人もきっといたはず(私もブースで飲み物を買っていたので、出発に少し遅れ、慌てて追いかけました)
先頭は大きなプログレスプライドフラッグを持った人たちで、その後にアムネスティや、HIV団体、ミキサー、台南でも活躍していたドラァグクイーン系のフロート2台が続き、いろんな人たちが自由に歩きました。日本だと三列とか四列できちんと並んで歩いて、となりますが、10人以上の幅で、沿道にも人がいて一緒に歩いてるので、道を埋め尽くしてる感がありました。
国泰路から市街地に出るところの角に巨大なお寺があったのですが、その仰々しいお寺の前で仙女?天女?のような女装をした2人組が写真を撮ってて爆笑しました(台湾らしいCAMP)。一緒に写真を撮る人もたくさんいました。
市街地(澄清路)に出ると、沿道にも人が結構いて、なかにはめっちゃ踊って応援してくれてる女性がいたりして、フレンドリーさを感じました。総統文化賞も受賞しているレジェンド、祁家威(チー・ジアウェイ)がレインボーフラッグを振っている姿も見えました。
信号の関係で途中で何回か停まりましたが、その間にフロートの前でball(vogue femmeのパフォーマンス)が繰り広げられたりもしました。気づけば「ミキサー」のフロートに六尺の男子たちが乗ってたり。
参加者は見たところ8割9割がゲイ・バイセクシュアル男性の方たちで、カップルでお揃いの服を着ていたり、ワンちゃんを連れてたり、コスプレをした人や(ハッピに褌とか、鬼滅とか、ポケモンとか、日本由来のコスプレもたくさん)、パピーマスクにハーネスやスポユニを合わせた人なども目立っていました。
途中でどんどん人が増えていったようで、フロートが全部帰着したあとも、ものすごくたくさんの人たちがあとからあとから歩いてきて、圧倒的でした。数えきれないですけど、数万人は参加してたんじゃないかと思います。台北や台南もそうですが、ステージやブースよりもとにかくパレードを歩くということ、自分らしい格好でパレードすることを第一に考えてる方が非常に多かった印象です。ゲイ的なSEXYさやkinkyであることへの屈託がなく、自由にのびのびとそれを表現できている(警察も含めて誰もそれを取り沙汰しない)のが本当にうらやましいです。

















































★高雄同志大遊行(KHPride)パレードのフォトアルバムはこちら
後半のステージは、女子馬戯という女性による曲芸団?のパフォーマンスから幕を開けました。ちょっとびっくりするようなアクロバティックで本格的な技に拍手喝采!でした。
団体の方たちのスピーチやパネルトークもありました。台湾中部で活動する台湾基地協会の方たちは(SNSへの投稿の翻訳で把握したのですが)、同性婚実現後、団体への援助が減っている、理解のない人たちによるいやがらせなども絶えない、そんななか、来年、台中のプライドを復活させます!と語っていました。






一方、「ミキサー」のブースの前では縛りが始まっていました。パピーたちが塊で縛られてて、その横で「世界唯一の同性の恋愛を応援する神」の「神輿入り」とかが始まって、なかなかのカオスでした。面白かったです。
たぶんパレードに遅刻したんじゃないかと思われるコスプレした集団が芝生エリアのほうで撮影会をしたり。みんな自由に楽しんでました。





熱中症になるんじゃないかと思うくらい暑くて(帰って見たら日焼けしてました。11月末なのに)、お腹も空いてたので(会場には食べ物の屋台はなかったです)、17時過ぎに離脱して、美麗島の六合夜市に行きました。そこかしこにゲイカップルがいて、幸せそうにごはんを食べてました。手をつないで歩いてるカップルもいました。
暑さのせいもあってなんだか疲れてしまって行かなかったのですが、オフィシャルアフターパーティや、湾Damn Nightというドラァグクイーンのパーティ、300人クラスのハコでの「ATTENTION」というゲイナイトなんかもあったそうです。それから、(R)eputationというパーティが「新宿二丁目」というタイトルのセクシーなパーティ(上裸だと入場料$100)をシリーズでやってて、この日は「新宿二丁目番外篇:虹の祭リ」というパーティを開催してました。フライヤーがちょっとスゴいので、リンク先から見てみてください。
高雄同志大遊行を振り返って
本当はワールドプライドとして開催されるはずだった高雄同志大遊行。もしワールドプライドが実現していたら、この場所(割と郊外のほうでした)じゃなくてもっと大きな会場だったはず、10万人とか20万人とかの規模でやるとしたら、例えば高雄中央公園に集合して中山一路を美麗島から高雄車站にかけて行進、みたいなパレードになってたのでは?と想像したりもしました。
今年のテーマである「豪彩投(Vote with Pride)」について調べてみたところ、こんな感じの趣旨でした。
「高雄同志大遊行は台湾南部の最大のLGBTQのプラットフォームであり、また、選挙と深く結びついている。同性婚が認められたあと「パレードをまだやる必要があるのか」という声も聞かれるが、闘いはまだまだ終われない。同性婚はステップの一つであって、地方と都市部の格差もあるし、ジェンダーフレンドリーなスペースの確保もできていないし、課題は山積みだ。国政選挙にせよ地方選挙にせよ、投票がいかに大事かということは韓国瑜(ハン・グォユィ)の例が物語っている(彼は市のジェンダー政策の担当者にアンチLGBTQの人物を据え、様々な手段によってあらゆる市政の部署を保守化させた)。来年はまた地方選挙がある、あのような市長が現れないよう、我々は連帯し、ジェンダー平等やLGBTQインクルーシブな人物を選ばなければ」
たいへん硬派な、プライドらしい、しっかりした主張です。ステージでは団体の人たちがスピーチしたり、パネルトークなどもありましたが、おそらくそういう趣旨に沿ってお話してたのではないかと思います。
一方で、パレードもブースが並ぶ広場も極めて自由で、日本では叩かれそうな露出度の高い格好やセクシャルなパフォーマンスもOKで(さすが、同性婚が認められるような国は進んでます)、そこが台湾の魅力でもあり、グローバルスタンダードでもあると思いました(欧米ではヌーディストとかもパレードを歩いてます)。「性解放なくしてゲイ解放なし」を再確認させられました。
台北に比べると確かにイベントの規模は小さくて(TPより小さいです。でもパレードを歩くゲイの数は10倍以上だと思います)、小型の台湾同志遊行と言えなくもないですが、高雄や台南辺りの若いゲイの方たちがこぞって参加していた印象で、高雄の街らしい、のんびりしたアットホームな感じも心地よく、また行きたいと思いました。
ひとつ印象的だったのは、会場に中高年の方たちがあまりいなくて圧倒的に若い世代が多かったことです(わたし、浮いてたかも…)
台湾では2003年のジェンダー平等法制定のタイミングで行政が先に音頭をとってパレードを開催するようになり、それからクラブイベントとかのゲイシーンが発展し(よく憶えているのですが、2008年に台湾同志遊行に初めて参加したとき、ドラァグクイーンの姿は皆無でした)、やがて台北だけでなく地方にも広がり、という歴史的経過をたどってきたので、高雄の中高年世代はゲイプライドとかクラブカルチャーになじみがないのかもしれません。高雄同志大遊行は今年で16回目(2010年から開催)ですが、ミレニアル世代・Z世代が中心となって開催されてきたんだろうなと思いました。
それと、思った以上にBear系の方が少なかったです。これは持論ですが、Bearコミュニティってゲイシーンがある程度成熟しないと生まれないものです(古代ギリシアにしても近世までの日本にしても「おじさんが若い子を寵愛する」のが基本スキームで、ゲイコミュニティも始まりはだいたいそんな感じで、層が厚くなってタイプの細分化が進んでようやくBearの居場所ができるのです)。なので、高雄のゲイシーンはまだまだ若いのかもしれない…と思いました。
ともあれ、高雄はいい街ですし(大都会で交通の便がよく、ちょっと行くといろんな素敵なスポットがあります)、南方の温暖な街らしく、人々はゆったり、おだかやで、あたたかくて、いい人たちでした。
日本語をいろんなところで見かけましたし、ごはんやさんで「ちょっと待って」とか「ありがとう」とか、日本語で話してくれたりもするので、うれしいです。
みなさんあまり行ったことがないと思うのですが、台北だけでなく、台南や高雄のパレードにもぜひ行ってみてください。
(後藤純一)
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