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特集:2026年9月の映画・ドラマ

2026年9月に上映・放送されるLGBTQ関連の映画やドラマの情報をお伝えします。今月は『3670』がいよいよ劇場公開されるほか、『沼影市民プール』『半端者』『ナギダイアリー』なども注目を集めそうです

特集:2026年9月の映画・ドラマ

 (『3670』より)

 まだまだ暑い日が続きますね。台風や大雨、地震もあり(影響を受けたみなさんに心よりお見舞い申し上げます)、大変な8月でしたが、9月は穏やかに過ごせるといいですね。旅行に行かれる方も多そうですが、ぜひ劇場ギャラリーなどと合わせて、映画館にも足を運んでください。
 というわけで、この9月に上映・放送されるLGBTQ(クィア)関連の映画やドラマをご紹介いたします。今月は『3670』がいよいよ劇場公開されるほか、『沼影市民プール』『半端者』『ナギダイアリー』なども注目を集めそうです。 新たに情報がわかり次第、追加・更新していきます。
 ちなみに9月1日は「ファーストデー」。多くの映画館で1100円〜1300円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『君の見る世界をなぞる』なども上映中です。
(最終更新日:2025年8月26日)

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<トピック>

となりのとらんす少女ちゃんの予告編が公開!
 東海林毅さん監督の映画『となりのとらんす少女ちゃん』の予告編が公開されました。『ブルーボーイ事件』では清純派というか、ひたむきで真っ直ぐで可憐なイメージの主人公を演じた中川未悠さんが、ちょっとドスのきいた関西弁で「わしが体で教えたるわ」と過去の自分である男の子にプロレス技をかける姿は笑撃的です。はるな愛さんのお母さん役も新鮮。コテコテの関西のお笑いをベースにしたトランスコメディ映画だということがよくわかります(面白い!) 11月7日の公開が待ち遠しいです。


『マトリックス』監督によるキャスト全員トランスジェンダーの新作映画の企画が頓挫…ハリウッドの現状
 映画『マトリックス』シリーズを共同監督したリリー・ウォシャウスキーが米KCRWのポッドキャスト番組『The Business』に出演し、ハリウッドの厳しい現状について語りました。リリー・ウォシャウスキーはパートナーのミッキー・レイ・マホニーと共同で脚本を執筆した映画『The Hunted(原題)』の企画をハリウッド各社に持ち込みましたが、キャスト全員がトランスジェンダーという理由で却下され、企画は暗礁に乗り上げているそうです。この映画は「世界中でトランスジェンダーの人々が直面している現実への応答であり、自分の中に溜まっていた怒りや葛藤のすべてを叩きつけるカタルシスの場でもあった」そうですが、ハリウッドにおいて性的マイノリティ当事者の視点を描くような映画制作の機会は近年急速に減少しつつあるそうです。「こうした物語を世に送り出そうとするには、残念ながら今は業界全体で最悪の時期なんです」
 資金難を受け、ウォシャウスキー監督は従来の映画制作という枠組みにとらわれないアプローチへと舵を切り、今月上旬、LAの劇場で、キャスト陣によるライブ本読みイベントを開催し、作品を直接ファンへ届ける試みを実施しました。「とにかく外へ飛び出して、仲間たちと一緒にトランスジェンダーとしての喜びを分かち合おうと思ったんです。当初思い描いていた形とは違いますが、たどり着くゴールは同じですから」
(The Hollywood Reporter Japan「『マトリックス』監督が激白!キャストが「全員トランスジェンダー」の新作、ハリウッドに出資拒否される」より)

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上映中
君の見る世界をなぞる

 陽光降り注ぐ南フランスを舞台に、現代という複雑な時代に生きる思春期の少年の葛藤と恋をみずみずしくつづった青春ドラマ。内気な少年・エンゾがヴラドと過ごした時間に「人生で一番楽しい時間だった」と感じ、初めての恋のときめきを感じますが、不器用なエンゾは、その報われない恋の衝動をあらぬ方に発散させ、失敗してしまうようです…(婦人公論「みっともなくてつらい青春を肯定できる『君の見る世界をなぞる』16歳の頃に連れ戻され、本気の涙を流した」より)
 不朽の名作『BPM ビート・パー・ミニット』のロバン・カンピヨ監督が、盟友ローラン・カンテ監督が2024年にがんで亡くなったため、その遺志を継いで完成させた作品です。元競泳選手である新人俳優エロワ・ポユが主人公エンゾの心の揺らぎを繊細に演じ、エンゾが淡い恋心を抱く労働者ヴラド役には、実際に建築現場で働いていたアマチュア俳優のマクシム・スリビンスキーを起用しました。
 
<あらすじ>
南フランスの裕福な家庭に育った16歳のエンゾ。学校になじめず建築現場で働く彼は、そこで出会ったウクライナ出身の青年ヴラドに心を寄せるが、彼は兵役のため戦争へ行かなければならない。順調な日々を過ごす家族に対する不信感、将来への不安、そして親しい人が奪われていく戦争の現実。自分の感情を制御できないまま、エンゾが過ごす夏は静かに流れていく。

君の見る世界をなぞる
原題または英題:Enzo
2025年/フランス・ベルギー・イタリア合作/102分/PG12/監督:ロバン・カンピヨ/出演:エロワ・ポユ、ピエルフランチェスコ・ファビーノ、エロディ・ブシェーズ、マクシム・スリビンスキーほか



9月1日〜6日 東京
『黒蜥蜴』『黒薔薇の館』

 池袋の新文芸坐が「追悼・美輪明宏 その美、永遠に狂おしく」と題して映画『黒蜥蜴』『黒薔薇の館』の追悼上映を行ないます。いずれも丸山明宏名義での主演で、絶世の美少年と言われながらカミングアウト後にバッシングを受けた丸山明宏が、1966年に「ヨイトマケの唄」で再び脚光を浴び、67年に寺山修司が宛て書きした『毛皮のマリー』が評判を呼び、そして68年に深作欣二監督が映画『黒蜥蜴』の妖艶な女怪盗・黒蜥蜴という主役に抜擢し、三島由紀夫も共演し、伝説となりました。『黒蜥蜴』の成功を受けて深作監督は翌年、多くの男たちを虜にし、その運命を狂わせる妖艶な館の女主人・藤尾竜子の生き様を描いた『黒薔薇の館』を制作します。この2本の映画が、美輪様の凄さを世間に知らしめ、その絶対的な存在感がスクリーンに焼き付けられた、昭和映画史にも残る金字塔的な作品です。美輪様が最もその妖艶な輝きを放っていた時代の代表作です。

『黒蜥蜴』(1968)
監督:深作欣二 共演:木村功、三島由紀夫

『黒薔薇の館』(1969)
監督:深作欣二 共演:田村正和、川津祐介

新文芸坐「追悼・美輪明宏 その美、永遠に狂おしく」
9月1日〜6日
詳しいスケジュールはこちら



9月5日公開
沼影市民プール 

 海のない街のプールとして50年超にわたって愛されてきたさいたま市の沼影市民プールが、ある日突然、取り壊しを宣言され、市民から反対運動が巻き起こり…という顛末を追ったドキュメンタリー映画『沼影市民プール』が9月に公開されます。沼影市民プールは「沼プー」の愛称で(神宮プールなきあと)芝プーやリバプー、元プーなどとともにゲイの間で人気を博したプールだったと思いますが、スゴいのは、この映画の中で、沼プーの常連だったおじさんがプールサイドで巨漢の男性(荒岡龍星さんが演じています)と出会い、カップルになり、それだけでなく、親御さんにも恋人を紹介し、というフィクションパートが盛り込まれているところです(予告編にもそのシーンが入っています)。監督の太田信吾さんは、「このプールが日本のゲイコミュニティにおいて非常に有名な交流の場(クルージングスポット)であったことを知り、その側面を作品に反映させるべきだと考えた」と語っています。出演者のToshi Douglasさんが実際のプール利用者で、家族にカミングアウトしていない状況だったことに触れて「『演技』という行為には、現実の自分と距離を置き、自身の人生の可能性を探索する力がある。プライバシーを保護しつつ、彼が自分自身を客観的に見つめるための手段として、ドラマの要素を取り入れた」とも(映画ナタリー「モナキのサカイJr.や荻野由佳ら推薦、太田信吾の監督作「沼影市民プール」に22名コメント」より)。6月の台北映画祭にも出品され、チケットが売り切れるほどの人気を博したという注目作です。ゲイのエピソードがどんなふうに描かれているか、とても観てみたいですよね。市民プールのシーズンが終了する時期、「取り壊された僕らの居場所」に思いを馳せるのも素敵かもしれません。 

沼影市民プール
2025年/日本/80分/監督:太田信吾
9月5日よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開



9月6日 東京
koko no me クィア 映画祭 2026

 あらゆるつくり手の想いを中心にブランドや作品を届ける過程に伴走し、Concept / Action / Contentsをともに考え、形にする「Creative Studio koko」が主催するクィア映画祭です。“koko no me”とは、「つくる・届ける」に関わる人々と、個々に異なる考えや視点、感情を交わしながら、いまここの地点から私たちが生きたい世界への道筋を模索し、エンパワーしあうための場所だそうです。
 この映画祭では、『出櫃(カミングアウト)―中国 LGBTの叫び』『ふたりのまま』『セルロイド・クローゼット デジタルリマスター版』『ソン・ランの響き』という4作が上映されます。どれも良い作品です。オススメします。

koko no me クィア 映画祭 2026
日時:2026年9月6日(日)12:00-20:30
会場:HOME/WORK VILLAGE・ホール(209)(東京都世田谷区池尻2-4-5)
上映スケジュール
11:45 開場
12:00『出櫃(カミングアウト)―中国 LGBTの叫び』(54分)
13:45『ふたりのまま』(88分)
16:00『セルロイド・クローゼット デジタルリマスター版』(102分)
18:30『 ソン・ランの響き』(102分)
*各上映終了後に15分間の交流会を実施します



9月10日より放送
付き合ってあげてもいいかな

 国内で累計閲覧数1億view超えを突破し、アメリカ・タイ・ドイツ・韓国・台湾で翻訳版が発売、その後国内外で合計約100万部超えを記録し、8年連載のロングランヒットを経て、2025年に完結を迎えたGLコミックスの金字塔、たみふる氏の漫画「付き合ってあげてもいいかな」が、元モーニング娘。の鞘師里保さんと小西桜子さんのW主演でドラマ化されます。スゴいのは、山田佳奈さん(1〜3・6・8話)とともに監督をつとめるのが、自身もレズビアンである洪先恵(ホン・ソネ)さん(4・5・7話)だということです。洪先恵さんは韓国から日本に来て日本映画大学脚本コースを卒業後、テレビマンユニオンに入社し、ドキュメンタリーやスポーツ番組などのADとして働き、社内の企画に応募した脚本が見事に採用され、短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』を製作しました。茨城の⽥舎町に住む⼥⼦⾼⽣カップルの⽇常と別れを描いたこの短編は、海外の映画祭にも多数出品され、仁川のディアスポラ映画祭で観客賞を受賞し、ソウルのアーバン・フィルム・フェスティバルで作品賞を受賞するなどしました。これまでの日本のLGBTQ(クィア)を描くTVドラマは(LGBTQ監修などは入ったりするものの)スタッフにも役者にも当事者がほとんどいない状況で制作されてきており、リプレゼンテーションの点でダメダメでした。しかしここにきてようやく、当事者の方が監督することになりました。本当に画期的で素晴らしいことです。ぜひ4・5・7話にご注目ください。

<あらすじ>
大学生の犬塚みわ(小西)は、恋愛に強い憧れを抱きながらも、これまで一度も「うまくいった恋」を経験したことがなかった。好きになっても踏み出せず、踏み出しても気持ちを伝えきれない。そんな自分にどこか諦めを感じながら、大学生活をスタートさせる。そんな中、明るく社交的で、人との距離を取るのがうまい猿渡冴子(鞘師)と軽音サークルで出会う。性格も考え方も正反対の2人だが、ある日、お互いに「女性が好き」という共通点を知る。その確率の貴重さから、冴子の「付き合ってみない?」というなにげない一言をきっかけに、交際を始めることとなる。勢いから始まった関係は、最初こそ楽しく、新鮮で、軽やかだった。しかし、少しずつ深まる関係が、互いの価値観や不安、欲望を浮き彫りにしていく。「恋人」とは何なのか。「好き」という気持ちは、どこからきて、どこまで求めていいのか。話し合えば解決すると思っていたことが、話し合うほど複雑になっていく現実に、二人は戸惑い、傷つきながらも、自分自身と向き合い始める。やがて二人は、別々の道を選ぶことになり――。

付き合ってあげてもいいかな
MBS 9月10日(木)より毎週木曜深夜0:59-1:29 ※初回放送のみ5分押し 
テレ玉 9月16日より毎週水曜深夜0:30-
ほか
(TVerの見逃し配信もあります)



9月22日上映 奈良
ファンタジー

 9月19日から23日まで奈良市で開催される「なら国際映画祭2026」。映画祭の核となる「インターナショナルコンペティション」で上映される一作品として『ファンタジー』という映画が上映されます。「スロベニアに暮らすミフリイェ、シナ、ヤスナは親友同士。保守的な社会に縛られることなく、自分らしく生きる彼女たちの日常は、トランスジェンダー女性・ファンタジーとの出会いをきっかけに変化する。4人が共に歩み出すその旅路は、ジェンダーの境界、溢れる欲望、そして自身を見つめ直す、濃密な探求へとつながっていく」という作品です。

ファンタジー
英題: Fantasy
2025年/スロベニア、北マケドニア/98分/監督:Kukla Kesherovic
なら国際映画祭2026」の一環として17:00-、ならまち市民ホールで上映。上映後に30分のQ&Aが設けられています



9月25日公開 
3670

 脱北者であり、ゲイであるという「二重のマイノリティ」性を抱える青年チョルジュンを主人公に、彼がおずおずと鍾路(チョンノ)のゲイコミュニティへ足を踏み入れていく様や、友情、純愛、「二丁目的なもの」のリアルを描いた映画『3670』(レビューはこちら)。今年2月のアジアンクィア映画祭(AQFF)で上映され、会場が満員になるほど熱い注目を集めた作品が、めでたくこの9月から劇場公開されることになりました。配給はAQFFを主催するレズビアンの方が立ち上げたショートレッグフィルム(『3670』が初の配給作品となります。このあと『宵闇の火花』の配給も決まっています)。そういう意味でも素晴らしい作品です。ぜひぜひ!ご覧ください。

<あらすじ>
北朝鮮から脱北したゲイの青年チョルジュンは、脱北者同士の強い絆に支えられながらも、自身がゲイであることを隠したまま深い孤独を抱えていた。韓国社会にも脱北者コミュニティにも完全には居場所を見出せずにいた彼は、やがてソウルの活気あるゲイコミュニティに足を踏み入れ、人懐っこい青年ヨンジュンと出会う。ヨンジュンとの関係をきっかけに、初めての仲間、初めてのつながりを得ながら、少しずつ世界を広げていくチョルジュンだったが……。

3670
2025年/韓国/124分/カラー/監督・脚本・編集:パク・ジュンホ/出演:チョ・ユヒョン、キム・ヒョンモクほか/配給:ショートレッグフィルム
2026年9月25日(金)渋谷ホワイトシネクイント、10月9日(金)アップリンク京都、ほか順次拡大公開



9月25日公開
ナギダイアリー

 今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されて話題になった作品です。深田晃司監督が岸田國士戯曲賞を受賞した平田オリザさんの代表作『東京ノート』に着想を得て脚本を執筆し、岡山県奈義町をモデルにした「ナギ」を舞台に新たな物語を描き、企画の立ち上げから9年の歳月をかけて完成させました。松たか子さんが、癒えない喪失を抱えながら彫刻制作に没頭する寄子という複雑なキャラクターを演じています(クィアの役です)。『Esquire』の「深田晃司監督作品『ナギダイアリー』量産型BLを吹き飛ばす衝撃作【カンヌ国際映画祭2026】」によると、今作は「“共感”とは何かを観客に問いかける、稀有なクィア映画」であり、量産されるBLを吹き飛ばすような「マイノリティ消費を徹底的に避け、社会と接続したクィア映画」です。松たか子さん演じつ寄子が、ストレートであろう義理の妹・友梨との対話の中で、過去に経験した残酷なことをぽつりぽつりと話し、それは真っ白なシャツでトマトソースのスパゲティを食べているときに点々とつくシミのような感じで、昨今目立つ量産型BLは、この「シミ」を漂白している、まるで社会的問題などないかのようにクィアの背景がきれいに「なかったこと」にされている、エンタメとして消費できるほど当事者が体感する恋愛の痛みはスイートではない、本作はそんな消費型クィア作品へ向けた、深田監督のアンチテーゼなのではないかと思うほど、ごまかさずに地方に生きるクィアのリアルを訴えてくる、と綴られています。「地方と都会。日本とアメリカ。女性と男性。大人と子ども。マイノリティとマジョリティ――。あらゆる非対称性に気づくのはいつも「ではない方」の側。自分のマイノリティ性に気づいたいっぽう、マジョリティ性には鈍感でいる都会人でストレートとして生きてきた友梨の視点を通じ、本当に“共感”するとはどういうことなのかを観る側は掘り下げざるを得なくなる」。この記事を読んだだけで、「絶対に観なくては」と思えます。 

<あらすじ>
自然豊かな町・ナギで、ひとり創作に打ち込む彫刻家の寄子。ある日、東京と台湾で建築家として活躍する友梨が数日間の休暇をとり、別れた夫の姉である寄子のもとを訪れる。若くして妻を亡くした寄子の幼なじみ・好浩、息子の春樹とその親友・圭太など、人々との出会いは穏やかな日常に小さな揺らぎをもたらしていく。友梨は寄子の彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで彼女の知られざる喪失に触れ、友梨自身にも変化が起こりはじめる。

ナギダイアリー 
2026年/日本・フランス・シンガポール・フィリピン合作/110分/G/監督:深田晃司/出演:松たか子、松山ケンイチ、石橋静河ほか


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