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渋谷区条例案に対し、舛添都知事が「マイノリティに寛大であるべき。偏見や差別があってはいけない」とコメント

2015年02月18日

 東京都渋谷区が同性カップルに対して「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例案を3月議会に提出すると発表し、大ニュースとなりました(詳しくはこちら
 いったいなぜ渋谷区でこのような進展があったのでしょうか?
 2012年6月に開かれた区議会で、長谷部健区議が「僕の友人知人にもLGBTの人がいます。まあ全くもって普通だし、むしろいろいろな分野でその感性が生かされ活躍しています。昔に比べてだんだんと市民権を得てきていますが、国際都市の中では東京はこの分野ではまだまだ遅れをとっています。特に結婚ということではいまだに意見が割れているというのが現実です。日本の法律でも結婚は認めていません。そこで、渋谷区は、区在住のLGBTの方にパートナーとしての証明書を発行してあげてはいかがでしょうか」と質問したことがきっかけだったそうです。長谷部区議は、結婚式場で同性カップルの挙式が断られたりすることや、法律で病院のICUに家族しか入れないために自分のパートナーの付き添いができない場合があることを説明。区がパートナーとしての「証明書」を発行することで、同性のカップルも安心して暮らすことのできる環境を整備してみては、と続けました。
 この提案に対し、桑原敏武区長はこう答弁しました。「渋谷区では、平和国際都市として多様な方々を受け入れる中で、その中ではLGBTの方々も含めて、この方々を受け入れる共生社会でなくてはならない、このように思っている次第でございます」「今日では、国においても2004年には性同一性障害の性別取り扱いの特例に関する法律が施行され、家庭裁判所の審判により戸籍の性別変更が認められるようになってきた、それも一つのこのステップかなと、このように思いますけれども、議員提案のこのパートナー証明の発行でございます。これが一体どういうような意味を持つのか、あるいはこれを、難しいことを言うようでございますけども、自治事務の範囲内として考えることはできるのかどうか、その辺についても研究する必要があるだろうと、このように思っております」
 1年後、2013年6月の定例議会でも、別の区議、岡田麻里さんが証明書について質問。これに対し、桑原区長は「議員ご提案のパートナー証明の発行につきましては、国内法や国際法などの関係を考え合わせるとき、制約も大きく、検討すべき課題が多くあると思いますけれども、今後、専門家の御意見等も聞きながら前向きに検討してまいりたいと思います」
 こうした議会での質疑応答などを経て、2014年に渋谷区は有識者らによる検討委員会を立ち上げ、当事者である区民からのヒアリングなどを行い、条例案をまとめたということです。 
 ゴミ問題に関するNPO法人「green bird」を設立した長谷部区議は、「一緒に『green bird』の活動をしている杉山文野さんの話を聞いたり、その仲間とも知りあうようになって、実情を知るようになったのがきっかけでした。彼らは『結婚もできないし』と悩んでいたので、だったら『証明書』を出してみたらとジャストアイデアで思いつきました。これなら戸籍制度などをいじる必要もない。それが当事者の人たちの反応がとても良かったので、政策にしようと勉強を始めました」と語ります。
「渋谷区にもLGBTの方が多く住んでいますし、海外に行けば、彼らのあり方は普通のことです。『人権、人権』と強く主張するというよりも、それが『普通』のことだという空気にしたい。渋谷が国際都市であるというからには、まず渋谷からそれを実現したいと思い、提案しました。それを区長や行政の人たちが受け止めてくれたことがうれしいですね」
 
 にわかに世間でも同性パートナーのことについて議論が高まるなか、世田谷区の上川あや区議は、同様に同性カップルを夫婦と同等に認めるように求める要望書を、3月上旬に区長に提出することを明らかにしました。
 上川氏は、渋谷区のニュースを聞いて「条例はハードルが高い。他の自治体にはなかなかまねできない」と驚き、そして「世田谷区も―」との思いをあらためて強くしたといいます。上川氏は、これまで無所属の世田谷区議として「LGBTの相談窓口創設」などマイノリティのために尽力してきました。2012年に渋谷区議会で初めてLGBTの権利保護に関する質問があったことを知り、触発と刺激を受け、昨年9月に区議会で「同性パートナーシップを何らかの形で認めてほしい」という趣旨の質問をすると、保坂展人区長は前向きな回答をしたそうです。
 今回の渋谷区のように一定の強制力を伴う条例制定を目指すには、議会の多数会派を取り込む必要があり、政局事情の違う世田谷区では難しいとのこと。そこで上川氏は「同性カップルの証明書」など、区が独自に発行するものを作ることは実現の可能性があると考え、3月第1週に同性カップル約10組とともに、区長に要望書を提出することを決めました。
「ただ公のお墨付きが欲しいだけなんです。国勢調査からも除外され、住居すらままならない人々の権利を取り戻したい」と上川氏は、涙を浮かべながら訴えたそうです。

 それから、オープンリーゲイとして豊島区議に当選、また昨年の衆院選で社民党から比例区東京ブロックに出馬した石川大我氏は、豊島区の担当者と面会し、渋谷区と同様の取り組みを検討するよう要望したそうです。担当者は、具体的な動きについては言及しなかったものの「いろいろな動きがあることは受け止めている。状況を見ながら、引き続き検討したい」と語ったそうです。
 石川氏は「渋谷区の発表後、署名は飛躍的に増えたようだ。以前から、渋谷と同じような証明書を発行してほしいと要望してきた。さらに検討を進めていただきたい」と述べました。4月の同区議選に再び立候補する考えも示し、政治家としての活動にあらためて意欲を示しました。

 

 2月18日には、横浜市の林文子市長が渋谷区の条例案について「とてもいいこと。どういう形での支援が望ましいか、課題を整理するよう(担当に)指示した」と述べ、そうした環境づくりに向けて検討を始めたことを明らかにしました。「強い結びつきを持っている同性カップルは少なくない。日本経済の活性化のためにも、社会で受け入れていくことは大事」
 横浜市の人権施策基本指針は同性愛を「正しく理解し、偏見を解消していくことが必要」だとして、人権尊重の啓発を行っています(NPO法人 SHIPのこれまでの活動のおかげではないでしょうか)。今後は啓発にとどまらず、生活に不安や不自由を感じる同性カップルの課題をつかみ、具体的支援策を検討するそうです。

 また、2月17日、東京都の舛添要一知事による定例の記者会見が行われ、「先般、渋谷区が結婚に近い効力を持つという同性パートナー証明を実施すると発表した。世田谷区も同性に関する法整備を検討するという考えを区長が表明した。このような動きについてどのように考えるのか」という質問に対し、舛添知事は以下のように答えました。
「一般論的に言うと、やはりいろいろなマイノリティーがいますから、私はマイノリティーに対して非常に寛大であって、自由と平等と権利というのは同じく与えるべきだと思っています。それは日本国憲法の精神でもあると思っていますので、性的な指向が異なる方々はたくさんおられて、皆さんご承知のように、世田谷区でも、そういう方も区会議員になっておられます。いろいろな偏見や差別があってはいけない。憲法は両性の合意のみということになっているので、同性婚は認めておりません。しかし、現実の生活において病院にパートナーが入院しました。それで家族でないと面会できません。だけど、家族同然にしていれば面会というのは許されて良いのではないかと普通は思います、それから、アパートを借りる時も借りられませんという。これはもう、外国人はアパートが借りられませんというのと全く同じで、そういう差別や偏見は一つ一つなくしていった方が良いと思いますので、そういうことにつながるというのは、私は積極的な評価をして良いと思います。ただ、そこから先は両性の合意という、憲法の婚姻関係の条項があります。今からこの日本という社会がどういう風に動いていくのかということで、これはもう国民全体の合意を得ていかないといけないですけれども、世田谷でもそういう動きがあるということなので、こういうことをやってみて、しかし、ある制度を変えてやれば、全部プラスではなくてマイナスも出てくると思うのです。だから例えば今度、渋谷区で3月に条例案ができて、それが通過して、例えば1年を経過してみたときに、どういうプラスがあって、どういうマイナスがあって、ではどう改善しないといけないか。そのフォローアップをやっていく。大きな民法改正が最近ありましたけれども、民法改正ということにもつながる動きに持っていくとすれば、もう少しいろいろな事例をやって、今のような検証実験をやって、プラスマイナスを検証して、その上で国民的合意を得ていくということなので、ささやかかもしれないですけれど、そういう動きがあったということで、あとはもうとにかく、きちんとやった結果を皆で検証していくことが必要だと思います」 
 同性婚実現に向けての筋道にまで言及した、とても素晴らしいコメントではないでしょうか。前前都知事のかつての発言とは対照的です。
 
 一方、2月18日には、参院本会議でも同性婚についての質疑応答が行われました(史上初?)
「日本を元気にする会」の松田公太代表が、同性カップルの婚姻を容認する観点から、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と謳う憲法24条の改正を検討するよう提起しましたが、首相は「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家庭の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要する」と述べ、否定的な見解を示しました。 
 
 同性婚事情に詳しいとしてTVでもコメントを求められている早稲田大の棚村政行教授(家族法)は、「憲法24条の主眼は、婚姻をかつての『家制度』から解放することにある。当時、同性婚を念頭に置いた議論はされておらず、排除しているとまでは言えない。憲法14条の法の下の平等などに照らせば同性婚を認めないのは問題だ」と語っています。
 また、性的少数者の法律問題に取り組む「LGBT支援法律家ネットワーク」の有志も「憲法24条は同性婚を排除していない」などと指摘する文書を報道各社に出しています。


  
同性カップルでも「結婚に相当」の条例案、なぜ生まれた? きっかけつくった渋谷区議に聞く【LGBT】(Huffington Post) 
http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/16/shibuyaku-lgbt_n_6692022.html

同性カップル証明、世田谷でも要望書提出へ(スポーツ報知)
http://www.hochi.co.jp/topics/20150215-OHT1T50047.html

豊島区でも「同性カップル証明書」検討(日刊スポーツ)
http://www.nikkansports.com/general/news/1435497.html

 

同性カップル支援、横浜市も検討 市長が課題整理を指示(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH2L5339H2LULOB00W.html

舛添都知事「積極的に評価」 渋谷区の同性パートナー条例案(産経ニュース)
http://www.sankei.com/politics/news/150218/plt1502180007-n1.html

安倍首相、同性婚容認に否定的=憲法24条改正「慎重に」―参院代表質問(Yahoo!ニュース 時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150218-00000091-jij-pol

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